一線越えても変わらなかったよ
鳥の声が聞こえる。朝、かな?まぶしい気がする。
「うあああああ…なんと…なんと可愛らしいのだ…」
ん?
「ああ…雪花…」
優しく触れる固いなにか。頬を撫でられている。気持ちいい。もっと撫でて…
「ん…」
すりすりと固いなにかにすり寄った。固いなにかはとってもぬくい。
「か、可愛い…ぐうう…こ、これは本当に現実なのか?」
固いなにか、止まってしまった。もっと撫でてほしいのに…
「んー」
「ぬあ!?」
大きくてぬくいなにかをひっぱって抱きしめた。すべすべ、ごつごつ…たくさんの感触。
「雪花!?お、起きているのか!?」
「んー」
半分寝てる。まどろんでるよ。抱きしめたぬくいなにかに包まれてる。気持ちいいのでぬくいなにかにスリスリした。なんかビクッてされた。
ぬくいなにかが離れようとしてる。逃がさん。
「や…」
ふさふさななにかを掴んだ。
「雪花!雪花!?そそそそれはダメだ!」
「ん?」
目覚めたら、ケビンさんの尻尾を掴んでた。とりあえず、尻を鷲掴みしてみた。張りのある、素晴らしい尻でしたが、しかし何故ケビンは全裸なんだ。
「キャウン!?し、尻を揉まないでくれ!」
「あ、ごめん」
無意識にセクハラしてたわ。尻を揉むのをやめて自分の服を確認した。エロくない、可愛いワンピースタイプの寝間着だった。下着も白に青い小花柄の清楚可愛いやつ…まったく見おぼえがないやつだなぁ。
「ま、捲らないでくれ!」
ケビンが慌てて捲っていた寝間着を下ろした。いやん、サービスしてしまったか。いや、昨日全部見たんだから、そんなに反応しなくても…
しかし昨夜の記憶を思い出してみたが、自分で着た記憶がない。体もサッパリしている。あんなにドロドロにしたシーツもサラサラだ。
「…まさかの夢オチ?いや、なんか身体に微妙な違和感が…あ、ケビンが着せてくれた?」
「す、すまない。無理をさせて…気絶させてしまった」
「…気絶」
まさかの初夜で気絶か。気絶した時の自動転移の行き先をケビンに設定しといてよかった。他だったら騒動になるとこだったよ。全裸で転移は勘弁だよ。
自動回復のおかげか、身体に不具合はないみたい。ちょっと違和感があるぐらいだ。
「す、すまない。雪花が魅力的すぎて我慢ができなかった」
「合意の上での行為に謝罪は不要です。それより、少し肌寒いので抱きしめてください」
「わ、わかった」
しっかりケビンを捕獲した所で、気になる事を確認した。
「この寝間着と下着はケビンの趣味ですか?」
「ぐふっ!?そ、そそそそうだ…」
ものすごーく動揺している。そうか、清楚系が好みか。しっかり覚えておこう。
「可愛らしいですし、気に入りました」
「そうか!」
あ、めっちゃ嬉しそう。
「あのエロい寝間着と下着は誰の趣味ですか?そしてあれはどうなりました?」
「…あれを用意したのは多分じいだろう。風呂場に洗って干した。シーツもついでに洗った」
「……再使用、する?」
「ぬあっ!?なんっ!?いや、その…た、確かによく似合っていてそそる…いやいやいや!」
そうか、エロも好みなのか。覚えておこう。そしていざって時に使おう。しかし、使用人さんとかに洗われてなくてよかった…気まずいわ!ケビンの気遣いに感謝しよう。ケビンがマメな男でよかった…
「身体がやたらサッパリしているのですが…」
「すまない、洗った」
「いや、こっちこそ迷惑かけてごめん」
「迷惑などではない。俺が負担をかけすぎたから「合意の上での行為に謝罪は不要です」
「…ああ」
おや、なんかしょんぼりしてしまった。
「初めてなのに痛くなかったし、気持ちよかったから謝らないでほしい。むしろケビンはどうだった?」
「…え?」
「気持ちよかった?」
「…それは、その………き、気持ちよすぎて我を忘れてしまった」
「それはよかった」
首まで赤くなったケビンの胸に頬をよせる。うわぁ、鼓動が超速い。傷がたくさんあるなぁ。傷をそっとなぞってみた。
「み、醜いだろう」
「何が」
「傷痕が」
「…醜いとは思わないけど、痛かったかなとは思った」
「……そうか。幼い頃から命を狙われたり、任務で死にかけたりしたからな…」
予想以上にバイオレンスだった!命を狙われたりってどんな!?任務はまぁ、討伐とかがあるだろうから仕方ないけど!
「ケビンは私が守るからね!あんまり無茶したらダメだよ!」
「…ああ。俺は本当に最高の婚約者を得たな」
そっとケビンが私を抱く手に力を込めた。
「ところで、ケビンはなんで全裸なの?」
「………………?ぜん…!!」
自分の状態を確認すると、ものすごい素早さで服を着たケビン。なんでも普段寝るときは裸なのですっかり忘れてたらしい。
「み、見苦しいものを見せてすまない!」
「いや、目の保養でした」
ケビンの筋肉は素晴らしいと思う。
「………………………は?」
「もっとよーく見たかったなぁ。残念」
「!!??」
「ね、今度はじっくり見せてくれる?」
「!!???」
「あ」
ケビンが鼻血をふいて気絶した。やり過ぎたか。とりあえず魔法で鼻血を止めてやり、ケビンを布団にいれて寝転がった。
一線を越えても、私の婚約者は変わらないようだ。
その頃のじいとマサムネさん。
「ああ…ぼっちゃまはちゃんと若奥様と最後までなされたのでしょうか…」
「いや、多分大丈夫だろう。若奥様がリードするさ」
「じいの秘密兵器が役に立ちますように…!」
「………………あまり聞きたくないが、ナニをした」
説明中。
「おい!余計なことをすんな!ぼっちゃんと若奥様がうまくいかなかったらどうすんだ!」
「若い二人の後押しをしただけだ!」
「それが余計なことなんだ!!」
「…………まぁ、姫様は細かいことを気にしないで、やることやるでしょうねぇ」
ヒートアップする二人をのんびり眺めるカダルさんでした。カダルさん、正解。