お泊まりなんだよ
後半に性的な話があります。苦手な方はスルーしてください。
「セツ、屋敷を案内しよう」
ケビンがそう言って、お屋敷のなかを案内してくれた。
まず庭園。広い。池がある。噴水もある。東屋だっけ?ガゼボだっけ??もある。
色とりどりの薔薇が美しい。他にも触ると鈴の音がする花やオーロラみたいなものを吐き出す葉っぱや爽やかな匂いの木とか、異世界ならではな植物もたくさんあった。
「うわぁ…」
「またゆっくり案内しよう。マイケルは喜んで貴女を案内するだろう」
ダンスホール、談話室、応接室、客間、書庫、厨房、執務室、使用人の部屋、子供達の部屋、厩舎、鳥小屋……
ここ、マジでお屋敷だよ!ひっっろいわ!!
「そして、ここが貴女の部屋だ」
「え………」
すごい。
茶と緑を基調とした落ち着いた色合い。地味すぎず、上品で落ち着ける雰囲気の室内。壁は色合いにあわせたのか柔らかなクリーム色だ。
家具はアンティーク風の焦げ茶で統一し、上品で大人可愛い意匠だ。正直に言おう。調度品の好みがどストライク!住んでみたかった理想の部屋だよ!
しかも、この部屋…バス、トイレ、厨房つき。ウォークインクローゼット完備。
厨房!欲しかった厨房つき!!しかも、最新式だから現代日本並に火加減可能!!テンション上がるわぁぁ!!
「き、気に入らなければいくらでも直すから言ってくれ!セツの話から好みを推測して用意してしまったが「気に入ったよ!すごく好み!早くここに住みたい!」
あ、ケビンがガッツポーズしてる。じいがよかったねって号泣してるわぁ。
「素敵なお部屋を用意してくれてありがとう。んー」
「あ、アオン!?」
「頑張ったご褒美のキスだよ。ほらほら、屈んで?」
「ぬああああああ!?」
私が首に手を回しているので走り出せないケビン。身長差があるので、少し屈んでもらわないとキスができない。奇声を発しつつも、ケビンの尻尾はちぎれんばかりに揺れまくりだ。ふふふ、君が嫌がってないなんてお見通しだよ!
「あ、じいは用事がございました。ごゆっくり、励まれてくださいませ」
じいは素早く撤退した。さすがは気が利く執事頭様だね!
「若奥様、ご健闘を!」
じいはそれはもうイイ笑顔で親指を立てていた。
「はい!」
私も親指を立ててイイ笑顔を見せた。
「な、何と戦うつもりだ!?」
「んー、ケビンの理性と…かしら?」
「!??」
硬直するケビンが可愛くて仕方ない。
「このドアは?」
「あ、そっちは…」
大きなベッドと机。シンプルで無駄がなく、私の部屋よりも全体的に家具がでかい。
色彩が……なんか黒い。なんだ、魔王の部屋かってぐらい黒い。
「…俺の部屋だ。その、セツは伴侶になる、から、俺の部屋の隣で、部屋同士が繋がっている…い、嫌なら塞ぐ!」
「…なんで?わ、ふかふか…」
大きなベッドにダイブしたら、ケビンの匂いがした。しかもベッドがふっかふか。あ~、落ち着く匂いもするし、このまま寝てしまいたい…
「…眠いのか?」
「ん…でもお風呂はいりたい…」
「ふ、風呂?」
明らかに挙動不審になるケビン。ちょっとした悪戯をしたくなり、首をかしげた。
「…いれてくれる?」
「あ……アオオオオン!!」
「あ……………やりすぎたか」
ケビンがぶち破った扉を魔法で修復して、自室のお風呂に入りました。
泡風呂を堪能して、薔薇の香りの石鹸で体を洗い、化粧水を使う。全部薔薇だなぁ。ケビンのミント石鹸も好きなんだけど、言えばくれるかな?
「……………おお」
そして、私に用意された替えの下着と寝間着…?下着?に絶句した。
エロい。エロすぎる。
こんな紐だけとかレースだけとか、履けるかぁぁ!?
あのケビンがこんなエロスなブツを用意するだろうか。とりあえず、下着はいくつかあったので1番ましというか露出がないのをチョイスしたが、肝心な部分を隠す気がないという罠下着だった。下着は普通のを所望するよ…でもどこにあるのかわかんないし、探すのもなぁ…
まだここにすんでる訳じゃないし、なにより気に入らないと知ったケビンが泣いたら嫌だし……とりあえず、エロはバスローブで隠したよ。
「その…髪を乾かしに、来たのだが…」
隣室からオドオドしたケビンが声をかけてきた。
「お願いしまーす」
「うむ」
おお、相変わらずのテクニック!きもちいー!うう…眠い…が、エロについて聞かねばなるまい。なんとか魅惑のブラッシングに耐えて、逆にケビンを乾かしてやった。
「…ありがとう、セツ。では、おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
私を私の部屋のベッドに横たえ、でこちゅーをしてケビンは隣室に行ってしまった。
………………あれ?
ちょっと!?人にこんなどエロいブツを着せといて放置!?つうか、お試しは夜までセットって聞いてるんだけど!?
私に色気がなかったのかとか、色々考えたがわかんないから突撃した。
「たのもう!」
「キャイン!?」
「え?」
何故かケビンは私の部屋とケビンの部屋を繋ぐドアの前にいた。
「…お邪魔します」
「あ、ああ。どうした?」
確かに枕持参とか、どうした?だよね。
「夜這いにきました」
「ああ………………はあああああああ!?」
私はケビンのベッドに転がる。ケビンが固まっているので手を引いてベッドに誘導した。
まだ固まっているので、靴を脱がせた。
まだ固まっているので、押し倒してキスをした。
まだ固まっているので、上着のボタンを全開にしてたくましい筋肉を触りまくった。
まだ固まっているので、ズボンを下ろそうとしたら、正気に戻った。
「そ、それは駄目だ!」
「えー?人にこんな勇気がいるものを着せておいて…ダメじゃないでしょ?」
はらり、とバスローブを脱いだ。
「…………!??ぶるああああああ!?なん!?美しい…いや、みたらダメ…いや、もったいな!?興奮す…!?」
ケビンは瞬時に自分の上着を私にかぶせ、ベッドの端に高速移動して混乱しまくっている。地味に内面が駄々漏れになってるね。
「あー、やっぱケビンのチョイスじゃなかったかぁ」
「解っていたなら、なんで見せたんだ…!こんな…おおお襲われても文句が言えないだろう!」
「…だって…ケビンがこれ着せたいと思った可能性もゼロじゃないから…頑張って着たのに…私だって恥ずかしいの我慢して着たんだよ?こんな卑猥なやつ…ね、興奮しない?」
「するに決まっている!理性をなくした俺に乱暴されたら「しないよ」
「……は?」
「ケビンはそんなこと、しないしできない。するなら合意の上でだよ」
「……それは…そう、だが…」
「それから、ごめんねケビン。私さぁ、名前を偽っていたの。この世界じゃ悪用されるかもって思ったからね。私の名前は芹沢雪花。こっちだと、セッカ=セリザワかな?」
「セッカ」
「…少し違う。雪花」
「雪花」
「そう、雪花」
「…雪花…」
「…この名前を知ってるのは、ケビンだけ。ちゃんと呼べるのもきっと、ケビンだけだね」
「……ああ」
ケビンは優しい表情で私を抱きしめた。私もしっかりと抱き返す。
「じゃ、しよっか」
「…………え?」
「婚約者にこーんな恥ずかしい格好をさせて夜にベッドで抱きしめたんだから、恥をかかせたりしないよね?それに、私の覚悟を甘くみないで。私はもう、元の世界より貴方を選んだ。責任、とってよ」
「それはもちろん、雪花に恥をかかせたりしないし、責任を…………ん?」
ケビンが固まった。ふはははは、言質は取ったぜ!
「優しくしてね?初めてだから」
「だ、だから煽るような…くっそ可愛い…!……ぜ、善処する」
こうして、お試しを最後まで完遂したのでした。いやあ、凄かったよ。
どうでもいい補足。
【ケビンがベッドではなく扉の前にいた理由】
ベッドで寝ようとしたら雪花の匂いがする。寝れない。雪花は寝たか気になる。でも行ったら夜這いと思われないだろうか…と悶々としていたらカモネギ…じゃなかった雪花が突撃してきちゃいました(笑)




