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おっさんは気遣いもできるんだよ

 お腹が満たされた騎士達は、今度は肉が食いたいと言い出した。

 今は昼過ぎなんだけど、今から城に戻ると夜になっちゃって城門を開けてくんないかもしれないそうな。どんだけ冷遇されとんじゃい!


「ふむ…まあいいだろう」


『肉!肉!』


 皆様、ヤル気満々です。


「ライティス、お前が指揮をしろ。ウォルター、ライティスの補佐を頼んだぞ。俺は姫様の護衛だから留守番だ。立派な肉を狩ってこいよ。姫様も食べるからな」


「無理はしないでね?怪我したらダメですよ」


『うおおおーん!!』


「!?」


 騎士さん達が鳴いた。え?何故に??


「姫様に、最高の肉を!」


「うおおおお!!狩って狩って狩りまくるぞおおお!!」


「姫様に肉を!」


「姫様のために!!」


「いや、肉は好きだけど、皆様の安全性第一で……」


 駄目だ、誰も聞いてない。


「流石は姫様、鼓舞がお上手ですね」


「いやいや!?違うから!荒ぶらせたかったわけじゃないから!最高の肉より怪我人ゼロの方が嬉しいです!」


「…ふむ。お前ら、姫様が悲しむから無茶はするなよ!姫様は肉よりお前らに怪我をしてほしくないそうだ!!」


『姫様あああああ!!』


 スーパーハイテンションになった騎士さん達は、元気に狩りへ出かけました。


「さて、姫。湯浴みはいかがですか?とはいえ、たらい程度しかないのですが…」


「入りたい!」


 いや、もうたらいでもいいです!お風呂めっちゃ入りたい!!





 おっさんは手際よくテント的なものを組み立て、たらいに湯をはり、石鹸やタオル、着替えまで用意してくれました。なんと細やかな気遣いでしょう!

 ちなみに湯は行く前にライティスが沸かしてくれたらしい。火の魔法、便利だなぁ。


「覗くようなバカは狩りに出しましたが、あの様子だと早く戻るかもしれません。念のために結界を張り、外は俺が見張ります」


「お願いします!本当にありがとう!」


「アオ……………どういたしまして」


 おっさん、鳴くのを耐えたな。しかし、本当に気遣いがありがたい!


「ふああ…幸せ~」


 大まかに体を洗って、たらいの湯につかる。気持ちいい…昨日走って汗だくだったし、生き返る!


「…女性は清潔を好みますからなぁ。服は俺が洗濯しますか?」


「いや、自分でします」


「俺などが洗うなど気持ち悪「下着とか恥ずかしいから自分で洗います」


 ネガティブ禁止!おっさんの発言を遮りました。


「した……??…………!!すいませんでした!幼いとはいえセツ姫様はレディですからね」


「いえ、やましい気持ちで言ったんじゃないことぐらいわかります。本当にありがとうございます、団長さん」


 着替えは騎士服だった。下着はボクサータイプ。日本でもたまに履いていたから違和感はない。それより服は最初大きめだったはずなのに、今はフィットしている。不思議だ。


「着替えました」


「よくお似合いです。髪を結いましょうか。こちらへどうぞ」


 椅子に座らされ、髪を丁寧に櫛ですかれる。すいたあとおっさんは私の髪をポニーテールに結い上げ、リボンもつけてくれた。


「リボン、まだあります?」


「ありますよ」


 おっさんの説明によると、汚したり破けたりなので騎士服の予備は必須だし、奴隷商とか誘拐犯から救いだしたときに服がないことが多いので貸出も視野にいれた予備を常に持っているらしい。

 やたらフィットするのは騎士服にかけてある魔法のおかげなんだとか。複数サイズを持ち歩くのは大変なので、ややお高くなるがワンサイズで済むからと予備騎士服は魔法を付与したものなんだそうだ。


「へー、色々考えてるんだねぇ」


 私は今、おっさんの髪を櫛ですいている。サラサラになったよ。うむ、いい手触りだ。いい仕事したね、私!


「あ、あの…楽しいですか?こんな醜いおっさんの髪を…」


「楽しいよ~。おっさんの髪は綺麗だし、サラサラになったから手触りもいい。あと、私は別におっさんが醜いとは思わないかな。おっさんは優しくて頼りがいがある素敵な人だよ」


 髪をリボンでまとめて終了した。リボンはお揃いなんだよ。えへへ。


「あ………あ…………アオオオオオン!!アオオオオオン!!」


「!?」


 しまった!またしても誉めすぎた!!つうか、つい本音が出まくっていた!!また独りマラソン大会か!?と思いきや、そうはならなかった。


「団長泣きすぎぃ。イヒッ、イヒヒッ」


 背後にいつの間にかいた細身の男性。なんか、ひと目見ただけでぞわわっとした。見た目はイケメンだけど、この人はなんかヤバい!目がこう…アラームも少し鳴っている。


「お、おっさん助けて!」


 私の危機を察知したおっさんは、素早く私を抱き上げた。

 ここならば…おっさんの腕の中なら安全だ。アラームも鳴らない。私は体の力を抜いておっさんに寄りかかろうとして…いや、あかんやろ!と正気に戻った。


 おっさんの包容力と優しさと頼もしさのせいで感覚がおかしくなっていたが、落ち着く場所がおっさんの腕の中っておかしい。


「イヒヒッ、お~い~で?」


「嫌だ、来ないで!この変態!!」


 本能的な嫌悪感から出たこの一言。これがいけなかった。


「へんたい…いいねえ、もっと罵って!むしろ踏んで!!糞野郎とか豚野郎とか言って!!」


「うわああああん!マジもんの変態だあああ!!寄るな、触るな!気持ち悪いぃぃ!!」


「サズドマ…死ぬか?」


「おっさんに虐められても嬉しくなぁい☆」


 私が本気で拒否していると察したおっさんの怒りにより、変態はあっさりと撤退した。


「……姫様、あれは騎士団の中でも実力があるのですが、問題児でして………なるべく俺から離れないでください」


「はい…」


 変態が怖かったので、私はしばらくおっさんにしがみついていました。

 おっさんは嬉しそうでした。ニコニコなでなでしながら私が落ち着くのを待ってくれました。



 後にこの光景を居残り組の皆が生あたたか~い目で見ていたと聞かされて、おっさんに土下座しました。




 おっさんロリコン疑惑が浮上していたからです。





 しかも変態と私を取り合ってるとか…おっさん、マジで、マジでごめんね!!

 ちなみにロリコン疑惑について。この国にロリコンという概念はないです。

 騎士団の皆様は団長よかったね…とほのぼのしてまして、軽蔑したりはしてません。


 雪花に話したのも、団長をお願いしますといいたかっただけですが、当人は盛大に勘違いしました。色々不憫。

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