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懐かしい味なんだよ

 使用人のみなさんも含めた食卓に並ぶ、美味しそうな料理の数々。


「これ…食えるの?」


「なんだこりゃ」


「おさかにゃー」


 皆さん戸惑っていらっしゃるが、これは……!


「わ、和食!?」


 お赤飯、鯛的な魚の煮物(尾頭付き)、筑前煮、茶碗蒸し、お吸い物、天ぷら、お刺身(ちみっこ達はソテー)などなど!


「ああ、解るか。おれのひい祖母さんが異界の姫君でな。我が家秘伝の祝いメニューだ」


「あ、ありがとうございます!」


 思わずマサムネさんを拝む私。やはり、和食が恋しかった!


「では温かいうちに食べるとしよう」


『いただきます!』


 皆でいただきますをしてから食べた。箸を使えるのは私とマサムネさんぐらいなので、皆はナイフとフォークで食べている。なんか不思議な光景だね。


「んんん!この筑前煮最高!」


「…そうか」


「美味しいぃ!いやもう、最高です!!」


 煮魚美味しい!いや、茶碗蒸しも美味しい!!


「マサムネ、礼を言う。セツがこんなにうまそうに食べるのは初めてだ」


「……そうなんですか?」


「セツに好き嫌いは無いようだが、今までで1番うまいようだ」


 そうですね。和食に飢えていたのを差し引いても、マサムネさんのご飯は最高です。


「うん!美味しいです!こっちで食べたご飯の中で1番です!」


 満面の笑みでケビンに返事をした。ケビンは沢山食べろよと笑ってくれた。そして、そっと大好物の海老天をくれた。何故わかった!?


「わかるさ。セツを見ているからな。マサムネの食事もうまいが、俺はセツが作った食事も好きだぞ」


 表情で読まれてしまったようだ。つうか、読むなよ。


「んん…でも流石にプロには勝てないかなぁ…」


「いや、セツが俺のために作る料理はマサムネの料理に劣らない。今まで食べた料理は本当にうまかった」


「まぁ、ケビンがそう言うならまた作るよ。マサムネさんが調理許可くれればだけど」


 マサムネさんは頷いた。


「俺はかまわん。むしろ知らない異世界料理を教わりたい」


「なるほど。今度レシピ書きますよ」


 そんな会話をしていたら、ちゃっかりご飯を食べていたカダルさんが話しかけてきた。


「姫様、お願いがあるのですが」


「なに?」


「私を雇っていただけませんか?」


「んん?」


 どゆこと?と首をかしげる私。


「姫様はこの家を気に入りましたね?」


「はい」


「ということは、近日中にここに住むことになるでしょう」


「はい」


「そうなれば、私は担当が姫様から王妃様辺りになります」


「…はい」


「あのわがままババァの侍従なんて嫌なので雇っていただけませんか」


「…………はい?」


 子供達がめっちゃ首を振ってるわ。


「まあ、他にも理由はありますよ。この屋敷の人間は少なすぎる。よくこれで回せているなと感心するレベルです。それゆえ、屋敷の維持で手一杯でしょう」


 じいが困った表情をしている。多分正しいんだろうね。


「…さらに、彼らの存在です」


「は?」


 カダルさんが少年達を指さした。


「私が彼らを追いかけまわしていたのは趣味だからだけではありません。姫様と騎士団長様を引き離したい人間にとって、貴方達はとても都合がいい」


 これ、趣味もあったんかい!とつっこんだら駄目なとこだよね…


「………………」


「粗野で野蛮な犯罪歴がある子供のいる家に、異界の姫君を置いておけますか?」


 彼らが悔しげにしている。うつむいている。


「カダルさんを雇えば、それをどうにかできると?」


「ええ。私を敵にまわすとどうなるか…私が痛い目にあわせた貴族は山ほどいますから、まずそういった些事で姫様をわずらわせる事はございません。それに私は貴女が望まないことはしない」


「…確かに」


 カダルさんは無駄な仕事はしない。私が手伝われたくない着替えなんかも手伝わない。

 決定権は私にないだろうからチラッとケビンを見た。


「セツが望むなら雇うのはかまわん」


「あ、勝手なことをした罰として、子供達に読み書きと礼儀作法を教えてください」


 子供達…特に年長組がゲッと嫌そうな顔をした。逆にカダルさんは涼しい顔で承諾した。


「かしこまりました」


「俺、こいつに習うのやだ!」


 トラ君が抗議したが、私はそこを譲るつもりはない。


「いいですか、トラ君。カダルさんは性格にちょっと…だいぶ、かなり難があります」


「…おう」


「ですが、世間様は恐らく、トラ君とカダルさんならカダルさんを雇います。彼の能力は非常に高い。おまけに物腰が上品ですから、それだけでカダルさんの第一印象は確実にトラ君より上です。しかも読み書きもできますから、引く手数多です」


「う……」


 トラ君へカダルさんがさらに追い打ちをかけた。


「それに、貴方達はそれでいいのですか?貴方達が団長様の枷になる。団長様にとってこれ以上はありえない最高の嫁が、貴方達のせいで嫁げないかもしれないのですよ。恩人のためなのですから、嫌いな私に教わるのを我慢するぐらい安いものではありませんか?」


「……お願い、します」


「シロウ!?」


 リーダー格のシロウ君が頭を下げた。少年達は驚愕する。


「俺は団長の枷になんかならない。ちゃんと学ぶし、教えを乞うならそれなりの態度をすべきだ」


 少年達はしばらく考えてから、全員が頭を下げた。


『お願いします!』


「はい。承りました。しかし基本はメルになるでしょうね」


「…カイン君は?」


「彼は事情がありますから、城を出るのは無理ですね。私とメルがお仕えすることになります」


「というか、メル君もなんですか?」


「はい。絶対メルも来ますよ。あれは姫様を主と決めましたから、姫様が拒否しても来ます」


「えええ?」


 メル君、私を主にとかってそぶりはないけど?


「なあ、メルってどんなやつ?」


 トラ君に聞かれて考えてみた。


「天使みたいに愛らしい少年…」


「へー」


「だけど中身が毒舌で癒されない系だね」


「ダメじゃん!」


「頑張れ!」


「………というか、セツ姉はそんな奴らに囲まれて大丈夫なのか?辛くないか?」


 シロウ君にガチで心配されてしまった。いや、うん…まあ、大丈夫だったよ。


「えと…カイン君がまともだったし、二人とも仕事は(比較的)ちゃんとするから大丈夫…多分…多分!」


「団長、早くセツ姉うちに来た方がいいと思う。セツ姉のためにも」


 シロウ君は真顔だった。ええと……ありがとうございます。


「う、うむ」


 ケビンも大丈夫か?と目線で言っていた。大丈夫と頷く。まあ、早くこの家に住みたいのは確かだけどね。


 とてもどうでもいい補足。

 メル君はわかりにくいツンデレなので、雪花さんを慕っていますが、残念ながら本人には伝わっていません。

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