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余計なことはしないでほしいんだよ

 私の背後には5人の少年達がいた。彼らを庇うように立ちふさがり、カダルさんをにらみつける。


「姫様、調きょ…躾の邪魔しないでいただけますか?」


「今絶対調教って言いかけた!絶対嫌!駄目!この子達の何が駄目だと言うの!?」


「粗野で野蛮。女性を敬う気持ちが微塵もありません。姫様に不快な思いをさせる可能性がございます」


「…なるほど?」


 カダルさんの言い分は解った。私は硬直している少年達に向き直り、深々と頭を下げた。


「はじめまして。ケビン騎士団長の婚約者、セツと申します。私の侍従が大変失礼いたしました。2度とさせませんので、仲良くしてくださるとありがたいです」


 少年達はまだ硬直している。仕方ないから魔法で彼らの耳元に声を送る。


「いや、とりあえず頷いてくんないかな?君達と友好な関係になれるんなら、その調教だか躾だかもいらないだろうし」


 彼らは私の意図を理解してくれたらしく、こくこくと頷いた。


「カダルさん、問題ないみたいですよ。それから、私に失礼です!子供達が女性を嫌悪するのはそれなりの理由があるからでしょう?私が傷つけられた子供に対して狭量だと言ってるようなものですよ!?トラ君なんか、私が追い出そうとしてると勘違いしてましたからね!?」


「…………やり方に問題があったことは認めます。申し訳ありません。姫様は寛大ですから、クソガキ共が悪さをしても不快にはならないでしょう」


 カダルさんが鞭を下ろした。とりあえず、私はカダルさんを捕縛した。


「姫様、この扱いはなんですか?」


「カダルさんに怯える子供に恐怖を与えないためです。とりあえず、何をやらかしたか話してください!できるだけ詳しく!」




 この家の孤児は現在全部で10人。逃げていた少年達は年長組で小さい子達を逃がしつつ囮になっていたらしい。素晴らしいチームワークだ。

 全員にカダルさん(縛られてる)と共に謝罪した。


「改めて、よろしくね」


「あい、よろちくにぇ~」


 起きたソラ君はまた私の膝にいる。かわゆい。ちみっこはソラ君を含めて4人

。2才のソラ君とルル君が最年少で、次が3才のトーワ君、そして5才のエド君だ。子供のうちは耳も尻尾も出たままなんだって。素敵だね!


 大人になると感情がコントロールできるようになり、よほど動揺した時以外は耳も尻尾も出ないらしい。おっさん、しょっちゅう出してたよ?

 耳も尻尾も出すのは恥ずかしいことなんだと、私は今教わった。


「わ、私はケビンを辱しめていたの!?うわああああ、ケビンごめん!マジごめん!」


「いや、その…」


 言ってるそばからまた出てるし!もふりたい!


「…セツといると幸せ過ぎて感情がコントロール出来ないんだ。だからその、恥ずかしいことなのかもしれないが…俺は幸せだ」




 どうしてくれようか。







 恥じらいながら何を言ってるんだこの人は!あああもう可愛すぎるだろうがあああああ!!


「!?セツ!?な、何を…んん!?」


 キスをして、ぺろりと唇を舐めてやった。可愛すぎてけしからん!


「ん…ケビンが可愛すぎるのがいけないんですよ?」


「くぁ〆〇∞☆§ふじこ!!」


「あ」


 ケビンは謎の奇声を発してから気絶した。どうやらやり過ぎてしまったらしい。


「いやぁ、お熱いですね」


「てへ」


 笑ってごまかそうとしたのだが、年配の使用人さん達が号泣していて顔がひきつってしまった。


「ぼっちゃまぁぁ!!おめでとうございます!じいは嬉しゅうございます!ついに、ついにぼっちゃまを心から愛してくださる奥方を見つけたのですね!」


「よかったなぁ、ぼっちゃまぁぁ!!」


「ぼっちゃまを…お願いします…」


 いや、まあ、お願いされますけどね。私がケビンを気絶させちゃったのはスルーされてるけど、いいのかしら?


「おい」


「はい?」


「あんた、本気で団長が好きなのか?」


 年長組のリーダー格であるシロウ君が話しかけてきた。


「はい。それから、私の夫は彼だけになります。他はすべてお断りいたしました」






『え?』









 大人と年長組が固まった。


「普通、女は5人ぐらい旦那がいるもんだろ?」


「らしいですねぇ。でも私の国では一夫一妻ですから、私の夫はケビンだけにすると決めました。よそはよそ、うちはうちです」


「マジか…すげぇ女捕まえたんだな、団長」


 シロウ君よ、どういう意味だ。


「う………」


 ケビンはようやく覚醒したが、気絶した経緯を思い出したらしく、尻尾を振ってこっちをチラチラしている。やめなさい、また気絶させちゃうぞ。可愛く誘うでない。


「ぼっじゃばぁぁぁぁ!!じいは、じいは嬉しゅうございます!このような素晴らしい奥方をよくぞ射止められましたな!!」


「はっはっは、そうですねぇ。たった一人の夫を選んだ貞淑な姫君。しかもこの方は異界の姫君です。この国で最も貴きお方ですよ。まさに最高の奥方を得たことになります」


 カダルさんがそう説明した。過大評価過ぎやしないか?


「そうだな。セツは可愛いし賢いし謙虚だし可愛いし優しいし気が利くし可愛いし大人の姿は色気があるし子供の姿は可愛いし…最高の婚約者だな!!」


 同意しないでくれ、ケビンよ。あと可愛いし言い過ぎ。ケビンの方が可愛いからね?


「いやいや、誉めすぎですから。私はたいして美人でもないですし…」


「いや、セツは世界一美しいぞ」


「それはない。婚約者の欲目だよ」


「いや…そんなことはない。初めてセツの大人の姿を見たときにも女神のようだと…いや、あれは思い出してはいかん…」


 なにやら思い出して悶えるケビン。まあ、容姿が好みだと誉められていることにしよう。


「若奥様」


「はい」


「若奥様は…異界の姫君なのですか?」


「はい」


 別に隠してないからね。異界からきたよ発言がスルーされてたね。そういえば。


「そうでしたか…ぼっちゃまぁぁ!!でかしましたぞ!でも、もっと早く教えてくだされ!じいの小鳥のようなハートか割れたらどうなさるのですかぁぁ!!」


 とりあえず、主の胸ぐら掴んでガクガクさせてる人は小鳥のようなハートではないと思う。


「じじいが小鳥のようなハートのわけねーわ」


 シロウ君の発言に、皆さん頷いてました。なんか、私ここで仲良くやっていけそうです。

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