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びっくりしたんだよ

 鼻血は魔法で消し去ったが、私は現在困っていた。


「グルルルル…」


「ちょっと話をするぐらい、いいじゃないですか」

『そうだ、そうだ!』


「駄目だ」


「それを決めるのは彼女ですよね?」

『そうだ、そうだ!』


「だ、駄目だ!」


 私を口説きたい店長さん達VSおっさんの戦いが勃発中。多分ケモミミのせいだ。そうに違いない。ケモミミ…怖い。


「いや、私は今おっさんとお試し中だから、横やりはマナー違反じゃないですか?それ以前に、私は彼だけが好きなので他の方とはお付き合いできません。私の世界では一人を愛するのが美徳とされ、私もそう考えています。ですから何を話そうと、気持ちは変わりません」


「セツ…」


「失礼します。行こう、おっさん」


『天使だ…』


 なんか変な呟きが聞こえたけどスルーしてお店をでた。






 町には珍しいものがたくさんあるから、私はキョロキョロしながら歩く。はぐれないようにおっさんに手を繋いでもらった。


「…セツ」


「んー?」


「本当に君は俺で…俺なんかで…俺だけでいいのか?」


「はい」


「……………」


 いや、自分で聞いといて照れないでよ!


「でも、1ヶ所修正させて。おっさん『で』じゃなくて、おっさん『が』いいの。そこ大事だから。おっさんだけがいいの」


「セツ……おおお俺もき、きききき君だけが、いい」


「えへー、ありがとう」


 嬉しいので手を繋いだまま腕にしがみついてスリスリとした。


「ふぬあああああああ!?セツが可愛すぎるぅぅ!!あ、アオーン!!アオーン!!ウオオオオン!!」


 あら、おっさんの雄叫びで注目されちゃったわ。


「おっさん、ええと…場所を移さない?」


「え?…!?す、すまない!そうだな…」


 おっさんは周囲の注目に気がつき、少し考えてから返答した。


「なら、うちはどうだろうか。その…万が一お試しが成功したらセツが来るかもしれないからと夕飯の用意もある」


「あら」


 これはもしや、仲の悪いご両親ともご対面か?


「いいですね、是非お願いします」


 私は戦うつもりである。私の大事なおっさんを傷つける奴は許さん!








「おっさん」


「なんだ?」


「マジでここ、おっさんち?」


「ああ」


 これ、家じゃない。邸宅 …いや、豪邸だよ。すげーわ。でかいわ。薄々そんな気はしていたけど、おっさんお金持ちなの!?

 庭…いや、庭園池つきの豪華な邸宅。花もよく手入れをされているし、庭には屋根つきのテラス風建物…ガゼボだっけか?まである。


「その、庭にはセツが好むならと薔薇がたくさんある。庭師が大喜びで植えたから、後でい、いいい一緒に見よう」


「うん」


 そして玄関の扉を開くと、おじいさんが立っていた。


「………ぼっちゃま、おかえりなさいませ」


 おじいさん、やたらしょんぼりしている。いや、一瞬嬉しそうだったけどおっさんを見てしょんぼりしたっぽい。


「…ああ。何故そんなに落ちこんでいるのだ」


 おっさんの上着を受け取り、おじいさんは泣き出した。ガチ泣きだ。


「うおおおん!だってだって!ぼっちゃまに、ぼっちゃまにようやく可愛いお嫁さんが来るかもしれないって…歓迎の用意をって言われたから、じいはそれはもう…1週間前から頑張って頑張って掃除やら何やら手配をしたのに…いえ、本当にお辛いのはぼっちゃまで………ん?」


「は、はじめましてー」


 おっさんの背後からひょこっと顔をだして、おじいさんに挨拶した。


「…………え?ぼっちゃま…こちらのお嬢様は…もしや、もしやもしや……今日のお試しは………」


「成功、でいいのか?セツ、今日はその…うちに…と、とと泊まって……ほしい、のだが……」


「成功ですよ。今晩はお世話になります。異界より参りました、セツと申します」


 おじいさんが床に倒れた。大丈夫か!?


「おじいさん!?」

「じい!?」


 おじいさんはすぐに何事もなかったかのように立ちあがり、見本のように綺麗なお辞儀を見せた。


「取り乱しまして申し訳ございません。私は当家の執事頭を勤めておりますミストルティンと申します。どうぞ若奥様におかれましては、気軽にじいやまたはじいとお呼びくださいませ」


 お茶目にウインクまでくださったのだが、おじいさんの変わり身が早すぎてついていけない。


「ええと…」


「ぜひお気軽に!じいと!」


「じ、じいやさん?」


「いえいえ、じい、とお呼びくださいませ!!おおっとこうしてはいられませんな!皆のもの!!若奥様が!若奥様がいらしたぞおおおおお!!若奥様がいらしたぞおおおおお!!」


 じいは走り去った。なんというか…嵐のようなおじいさまだったなぁ。



「「………………」」



 呆然とじいを見送る私たち。なんか屋敷のあちこちで歓声が聞こえるんだけど。


「すまなかったな、うちの執事頭が…」


「いえ、それよりも若奥様って…?」


「ゲホッ!そそそそれは…じいの気が早いのだ!ま、まだセツは俺の妻では…ない…」


 とか言いながらも尻尾が出てるよ?めっちゃフリフリしてるよ??


「そっかぁ…私がおっさんの若奥様かぁ。ね、なんて呼ばれたい?」


「………え?」


「結婚したらおっさんとは呼べないよね。なんて呼ばれたい?」


「う、あ…できるなら『ようこそ!いらっしゃいませ若奥様!!』





 タイミングわるっ!!




 やっとおっさんの名前がわかるかと思ったら、お屋敷の使用人の皆様から自己紹介されてしまい………結局うやむやになってしまうのだった。


 ナンテコッタ!

 実はいまだにおっさんの名前が出ていないという…タイミングが悪いおっさんですね!


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