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悲しませちゃったんだよ

 いい買い物ができたので、上機嫌な私がお店を出た時に見たものは…………







 体育座りで耳と尻尾をしんなりさせ、ふーん、キューンとものすごく切ない鳴き声をあげるおっさんだった。まるで雨の日に捨てられた小犬並みに目で訴えている。




 しまったぁぁ!!店主さんと長話しすぎたあああああ!!





「おっさん、ごめんね!」


 慌てて駆け寄り声をかける。


「……(ぷい)」


 プイされた。やっべえ、可愛い。しかも、プイしつつ、尻尾をパタパタさせてんの。耳はめっちゃこっちを向いてて、私がどう動くかを気にしている。

 やっっべえ、超絶可愛い。動画録りたい。いやいや、流石に怒られるね。


 おっさんにさらにゆっくり近づく。耳がピクピクしてるから、私の位置は把握しているのだろう。


「ぎゅー」


「アオン!?」


 私はおっさんの頭を抱きしめた。まさかいきなり抱きしめられると思ってなかったらしく、慌てるおっさん。しかし尻尾は相変わらずパタパタ…いや、バタバタしてるな。喜んでるらしい。


「ね、目を閉じて」


「!!??」


 何を想像したのか、真っ赤になるおっさん。見えないように抱きしめつつ、鎖の音がわからないように話しかけながらペンダントを取り出す。


「あのね、店主さんと話してたのはね…」


 そして私はおっさんの首にペンダントをかけた。うん、カッコいい。おっさんによく似合う。


「これをプレゼントしたかったからなんだ。お揃いなんだよ」


 自分のペンダントを胸元から取り出して、おっさんのと並べて見せた。


「…ぷれぜんと?」


「そう、プレゼント」


 おっさんはそっと黒い石のペンダントを手に取った。手は震えている。


「おれ、に?」


「そう、おっさんに。言ったじゃない、お給料でプレゼントがしたいって」


「きゅうりょうで、ぷれぜんと…ああ……言ってた…姫様…言ってた」


 呆然としながら、大切そうにペンダントを撫でるおっさん。


「気に入ってくれた?待たせてごめんね」


「う……うう…ぐしゅっ」






 おっさんが泣いた。





え?そんなに待つのが辛かったの??え??


「お、おっさん?」


「うおおおおお~ん!!」


 おっさん、大号泣だ。えええええ!?おっさぁぁん!?


「よ、よしよし…泣かないで?そんなに待つのが辛かったの??いやもう、本当にごめんね」


 おっさんをナデナデして慰めつつ、誠心誠意謝罪する私。喜ばせたかったのに、まさかこんなに悲しませてしまうとは…。


「…うぐっ、ぐしゅ…ち、がう…姫様…えぐ…おれ、おれ…うれじいんだ……」


「んん?」


 嬉しい?


「う……うう…ぐしゅっ…ご、ごんな…おぐりもの…もらっだごどない…うれじい…うれじいよお………」


「おっさん…喜んでくれて私も嬉しいよ」


「あ、ありがどう…ひめざま…ありがどう……だいじにずるぅ……」


 おっさんはしばらくえぐえぐと泣いていました。おっさん、わりといいとこの坊ちゃんらしいのですが、家族仲が悪く贈り物なんて今まで貰ったことがなく感激してしまったらしい。

 あと、ついでにこっちでは誕生日祝いがないということがわかった。


「では、私が初めてなんですね。光栄です」


 そんな風に冗談半分でウインクしたら、おっさんがとても幸せそうに笑ってくれた。


「姫様…」


「え?んん!?」


 うおおおおお!?おっさんからキスされただと!?あ、でもしたあと真っ赤になってる。いつものおっさんだね。


「その……姫様…セツの婚約者になれてよかった………あ、愛している」


「!??」


 ぎこちなく頬を撫でて優しく微笑むおっさんに、胸がバクバクいっている。不意討ちはやめていただきたい。


「えっと…これも…大事にする。宝物にする」


「うん、毎日つけてね。これ、おっさんを護る魔法が入ってるから。魔力が減ったら補充するからね」


「補充?」


「うん。こーやって…」


 おっさんのペンダントにキスして魔力を注ぎ込む。


「…姫様」


「何?」


「……魔力、ものすごい量が入っている気がするんだが?」


「あー、そうね。入ってるかも。瀕死の重症でも20人ぐらいならまとめて蘇生できるぐらいじゃない?」


「…………すごいな。そもそも無くす気はないが、絶対に無くさないようにする」


「ああ、大丈夫ですよ。一定距離離れると自動で戻ってきますし、おっさんと私以外に使えないですから」


「すごいな!?いや、すごすぎないか!?」


「よくわかんないです。賢者様にはまだまだだと言われてますが…」


「いや、賢者様は姫様をどうする気だ!?姫様、あまりこの事は言わない方がいい!」


「え?はい」


「よくわかってないな?これだけ強力な魔力に、有用性のある魔法…狙われる危険があるんだ!どんな魔法が使えるかは賢者様以外に教えるな!本当なら賢者様がその辺りも教えるべきなんだが…」


「あのじじい、そんな面倒なことしないでしょうし…そもそも本人も何がすごくて何がすごくないかが解ってない気がします」


「……」


 おっさんが頭を抱えた。なんかごめんね。結局おっさんがその辺については教えてくれることになり、ペンダントについては私が取り扱い説明書を作ることとなった。

 後でおっさんがまた頭を抱えたのは言うまでもない。



 ちなみに『待て』中のおっさん。

・5分経過

 店の前をひたすらにウロウロ


・10分経過

 店の中を覗き、雪花が楽しそうでショックを受ける。


・15分経過

 雪花が店主に盗られるのではと悶々とする


・20分以上経過

 悲しさと切なさと寂しさで、きゅーんくーんとひたすらに体育座りで鳴く



 とまあ、こんな感じでした(笑)

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