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たまにとんでもない攻撃が来るよ

 おっさんと手を繋いだまま特にあてもなく歩いていく。おっさんはお散歩も楽しいのか、尻尾をパタパタさせている。


「今から劇が始まりますよ~!観なきゃ損します!演目は『シュヴァルツ騎士団対大魔獣』です!我が劇団の最新作ですよ~!」


「む…」


 劇場の呼び込みだろう。威勢がいいお兄さんが元気に呼び込みをしている。

 おっさんは気になるらしく耳が呼び込みに向いている。


「おっさん、気になるの?」


「ぬあ!?いやその…子供達が好きでよく観ていたシリーズの話でして…」


「気になるんだね。なら、行こうか」


 おっさんの手を引いて劇場に行こうとした。しかしおっさんは動かない。


「姫様が好むような話ではない、と思う。劇は今日でなくとも別の日に観に行くし、今は姫様が好みそうな場所を案内したい」


「じゃあ、劇が観たい。おっさんが気にしてるあの劇がいい。おっさんが好きなもの、知りたい」


 私はごねた。しかしおっさんはとても優しい表情で私を撫でた。尻尾はごきげんでパタパタしている。


「…わかった。では劇を観よう。チケットを買いに行くか」


「うん!」


 劇場はさっきの場所よりかなりボロく、庶民向けなんだろうなと思った。当然さっきみたいな貴賓席などなく、立ち見席のみだ。


 これはよく見えないかなぁと思っていたら、横のおじさんが声をかけてきた。


「おや?こりゃあ別嬪さんだ。おい、女の子がいるぞ!空けろ、場所空けてやれ!」


「女の子!?」


「うわ、可愛い!」


 私は白目をむきたい気分だった。あれだ、モーセの海割れるやつ。もはや流されるままに最前列に通されてしまった。


「え、えと…ご親切にありがとうございます。なんだかすいません…」


「うおおおお!」

「やべえ可愛い!」

「女にお礼言われちゃった!」

「すげええええ!」


 周囲の反応があまりにも大袈裟すぎるのでまた白目をむきたくなったが、よく考えたら最初の頃のおっさんもこんなもんだった。大分なれたんだなと思う。


「……………」


「!?」


 なんとおっさんが背後から私にハグしている!?


「…貴女が他の男を見たり、声をかけるのが面白くない」


 ぬああああああ!?嫉妬ですね!?耳もとはやめていただきたいけど幸せすぎてどうしよう!!


「……おっさんが1番ですし…いつも貴方を1番に見てます」


 そっと腕に触れてスリスリと首に頭を擦り付けた。一瞬逃げた腕を捕まえて、むしろ抱きしめる。私は頑張った!やりきった!とおっさんを見た。


「アオン…ぐうう…」






 おっさんは大丈夫か聞きたくなるぐらい真っ赤だった。よく見たら、腕も赤かった。明らかに大丈夫じゃなさそうだった。めっちゃ震えてた。


「姫様、立ち見では疲れるでしょう。つかまってください」


「は?」


 復活したおっさんに、抱っこされた。小さい姿ではよく抱っこされていたが、あれは基本縦抱っこである。しかし今回は…






 乙女の夢、お姫様抱っこである。





「や、あの…」


「縦抱きですと後ろの人間が見えにくいかもしれない。立ったままでは見にくいし、足も疲れるだろう」


 いや、もう物理はいいよ!精神的に大打撃だよ!!


「いや、重たいし、おっさんが疲れるのでは…」


「重い?姫様は軽すぎるぞ。もっと太ってもいいぐらいだ。トレーニングにもならん。サズドマは姫様二人ぶんぐらいだぞ」


「え!?サズドマってそんなに重いの!?」


 あいつ細いのに…いや、筋肉か!?それとも鎧??成人女性二人ぶんの重さなの??


「人をデブみたくいわな…ムグッ!?」


「馬鹿!絶対バレた!撤退するぞ!」


「「………………………」」



「…聞こえた?」


「…サズドマと…ヘルマータ、シャザル…他にも数名いたようだな。匂いがする」


「「………………………」」


 なんか、おっさん落ちこんでないか?


「すまない、浮かれすぎてて気配に気がつかないなんて…!」


「浮かれてたの?」


「…そりゃ、婚約者になれただけでも幸せなのにお試ししてくれるなんて…これ以上ないくらい浮かれていたよ。多分貴女が思う以上に俺は…セツが好きだ」


 首にスリスリされて思考停止した。肩抱くのに失敗したくせに、攻めに転じると攻撃力が凄まじい…!


「ありがと…うれしい…私も、すき…」


 瀕死だったが、かろうじてお返事はした。


「セツ…!」


 感極まったらしいおっさんにギュウッと抱きしめられた。うう…おっさんが可愛くてかっこよくて愛しくて…幸せ!首にスリスリとしがみついて甘えれば、撫でてくれる。おっさんこそ、私がどんだけおっさんが大好きかわかってないよね。


「いいなあ、可愛い…」

「羨ましい…可愛い嫁かあ…」

「俺も夫にしてくんねえかな…」

「いや、無理だろ。ありゃ多分貴族だ」






 ナニシテンダヨ。






 ここ、劇場だよ!劇観るとこだよ!普通にいちゃついちゃったよ!


「おっさん、人前…」


「…虫除けだ。その…仲睦まじく見えれば、諦める輩も……いや、その…言い訳だな。貴女に触れる口実が欲しいだけだ」


 人前だからイチャイチャを控えてほしいと言おうとしたら、おっさんは照れ臭そうに私に触れたいと苦笑した。



 破 壊 力!!




 なんでこれでモテないの!?こっちの女達、見る目無さすぎ!すげえ破壊力なんですが!?


「その…ダメか?」


 首をかしげるなよ、可愛いなぁ!


「すきにして…」


 もはやそれしか言えない。しかし幸いにも開演ブザーが鳴り、それ以上はされなかった。


 ざ、残念だなんて思ってないんだからね!


 絶対残念だと思ってるだろうなと作者は感じました。

 色んなことがありすぎて、雪花さんがマイペースじゃない気がしてきた今日この頃。確実にロザリンドよりはスルー力があるんだけどね…スルーできない件が多すぎるからか(笑)

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