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初デートなんだよ

 今日は待ちに待ったお休み…つまりデートです。予定時間より早く目覚めてしまいました。


「おはよう、姫様」


「うん、おは…よう?」




 何故私の部屋の床におっさんが正座しているの??




「姫様、着替えを手伝いたいのだが…」


「それは自分でやる」


「で、では髪と化粧は…」


「お願いします」


「!!な、なら隣で待っているから着替えてくれ!」


 とりあえず、着替えながら考えた。この服、初めて見るけどゴテゴテ宝石とかついてなくて、シンプルながら可愛い。首まで覆うタイプで要所にレースが施された大人可愛いデザイン。スカートは足首まで…いや、そこはどうでもいいわ。


 着替えておっさんを呼ぶと、尻尾をパタパタしながらおっさんが来た。ヤバい。このおっさん可愛い…あれ?私服!おっさんが私服!?


「おっさん…」


「はい?」


 おっさんは私の髪に櫛をいれている。寝ぐせもあっという間に直ってしまった。相変わらず手際がいい。可愛く…いや、ちょっと大人っぽく結われてるな。


「あの、私服初めて見たけどかっこいいね」


「ワオン!?ああああああありがとうごじゃいます」


 鳴いた、そして噛んだ。おっさんは通常運転だね。鏡越しに見るおっさんは真っ赤になりながら尻尾をパタパタしまくっていた。振りすぎによる筋肉痛とかないのかな?


「なんで今日はお迎えじゃなくて私の身支度まで手伝うの?」


「ええと…色々考えたのですが、でぇととはいわゆるお試しに当たると思いまして…」


「お試し??」


 そこに颯爽とカダルさんが現れた。


「お試しとはまだ同居してない婚約者同士が一日共に過ごすことですよ。ちなみに成功ならその日は泊まり、失敗なら途中で強制終了して婚約解消です」


「厳しいね」


「まあ、結婚したら一日中居ることもありますから、我々は必要なものと考えています」


「で、私に『お試し』を教えなかった理由は?」


「面白そうだからです」


「おいいいい!?ちゃんと説明してくださいよ!起きたらおっさんが居てビビりましたよ!寝起きのだらしない姿は見られたくないです!」


「いや、姫様の寝姿はとても可愛かったぞ」


「そういう問題でもな…………そういえばおっさん、結界は?」


「結界?」


 寝室を確認すると、まだ解除されてない。私は寝る前に寝室に難解な結界をはりまくっているのだ。いまだに夜這いするバカがいるからである。


「おっさん、寝室に入ってみて」


「「…………………」」


 結界は反応しない。


「カダルさん」


「嫌です、痛そうだから」


「こないだ気に入ってた木苺パイ丸ごと「仕方ないですね」


 カダルさんが触れると、バチッという音と火花が出た。


「あたた…」


 軽くやけどしていたのですぐ癒した。


「おっさんにだけ結界が効かない?」


 どういうことなのだろうか。


「まあ、そちらの検証は後日賢者様にでもお伺いするとして、とりあえず朝食をめしあがられてはいかがですか?」


 性格に難があるものの出来るカダルさんに言われて朝ごはんを食べ、出かけることにした。






「わあ…」


 外出は城に来た日以来だ。異国情緒溢れる町並みに、ここはやはり異世界なのだと感じる。


「姫様、くれぐれも離れないようにしてくださいね」


「うん」







 迷子には、ならなかった。しかし、私は忘れていたのだ。おっさんが凶悪フェイスに見えることを。そんなおっさんが私を抱っこしていたら………


「人攫いだ!!」

「騎士団に連絡を!」


 こうなる。また私は人間、おっさんは獣人のため兄妹と間違われることすらない。


「………きゅうん…」


 おっさんはすっかりしょげてしまった。度重なる通報に、おっさんのライフはゼロである。


「もういっそ、触れ書きでも作るかぁ?イヒヒッ」


 たまたま巡回当番だったサズドマは面白がっている。ちなみに本日既に通報は5回目だ。



「仕方ないですね」


 路地裏に隠れると、もとの姿に戻った。鏡で姿を確認する。おっさんはこちらの姿に似合う服をチョイスしてくれたらしい。大人びた清楚な服は、本来の私の方がよく似合った。


「姫様!?」


「わぁっ!?」


 何故か必死の形相をしたおっさんが路地裏に駆け込んできた。


「………………え?」


「あ、えっと…これなら多分人攫いとは間違われないよね?」


 おっさんが固まっているので自分の考えを伝えた。


「そう…ですね。そうか…そうだよな。姫様は黙って俺を見捨てたりするような人間じゃない…」


 おっさんがなんだか泣きそうだ。微かに震えているように見える。なんか、捨てられた子犬みたく見えるなぁ…見捨てる?あ、いきなり路地裏に隠れたから、デートが嫌になったんじゃないかと思ったってこと??


「見捨てたりしませんよ。驚かせてすいません。ところでこのワンピース、おっさんが選んだの?」


 おっさんは明らかにホッとした様子になった。しょんぼりしていた尻尾がまた元気にパタパタしている。しんなりしていた耳もピンと立っている。


「ああ、その服は俺が用意した。お試しでは婚約者の着るものは全て男が用意するんだ。やはり今の姿によく似合っているな…とても美しい」


 うっとりしながら言われてしまい、私は大変困惑していた。いや、誉められて嬉しいけどね?こんなイケメンに普通の私がそんな美しいとか言われたら、狼狽えるのが普通だと思うの。


「あ、ありがとう」


 上機嫌のおっさんにエスコートされ、デート再開です。サズドマは大人姿の私を見るなり『これなら大丈夫そうだなァ』と言って走り去った。サズドマなりに気を遣ってくれている気がした。


「では、行きましょうか。俺のせいで足止めされて、すいません…」


「いえ、私の配慮も足りませんでしたから…今日は楽しみましょう!」


 ようやくおっさんとの初デート開始だね!実はこの姿にも問題があったと後に知ることになるのであった。

 ちなみに本来のお試しは丸一日婚約者と二人きりで過ごすので、婚約者の屋敷に行くのが普通です。

 危険なので、女性を外出させることはありません。雪花が外出できたのは、おっさんがこの国最強の男だからです。

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