つい仕事を探す、悲しい社畜のサガなんだよ
昼食を皆で食べることになりました。おっさんは大盛りオムライスです。
しかし、皆してうまいうまいとオーバーリアクションである。もうこれがデフォだと思うべきなのかもしれない。
「ひ、姫様…あ、ああああーん」
「あーん」
おっさんもちょっと慣れてきたのか私にあーんを自分からしてきた。
「お、おいしいですね」
「そうだね」
おっさんが嬉しそうなのでよしとしよう。
「午後の予定ですが、久しぶりに訓練参加しましょう。どっかの腑抜け団長がためた仕事は大半が片付きましたし、あまり我々が参加しなくなるとだれる輩も居ますからね」
副団長様、どっかのとぼかしつつ、団長と言ってしまっている。わざと……だな。
午後は訓練参加なのですが………やることがないよ。お給料をいただくのだから、何かしら働かなければ!仕事…何か仕事はないか!?
「いいよなぁ、先輩達」
「俺達も団長に稽古をつけてほしいよなぁ」
訓練所のすみっこで洗濯をしている少年騎士達を発見!
「ねえ」
「ぎゃあ!?」
「さ、サボってません!」
「ちゃんとやってます!」
どうやら驚かせてしまったらしい。
「あのさ、洗濯私がやるから訓練行ってきたら?」
「いや、でも、かなり量がある…ありますし…」
「大丈夫、大丈夫」
魔法で石鹸水を作り、洗濯機みたいに魔法で水流を操る。
「うおぉ!」
「すっげえぇ!」
「マジか!」
少年騎士達は目をキラキラさせていた。
「これなら一気に洗えるから、一人でも大丈夫。だから、訓練に行っておいで」
『ありがとうございます、姐さん!』
騎士団における姐さん浸透率がやばい。少年騎士達に手を振って、私はすすぎ➡脱水➡乾燥をさせて洗濯物をたたんだ。
ここで問題が発生した。この洗濯物をどこに置くべきなのだろう。先ほどの少年騎士達は並んでいるから声をかけにくい。戦うおっさんカッコいいなと若干現実逃避をした。
「洗濯物でしたら、この籠に入れて向こうの休憩スペースに置いてくだされば自分で取りに来ますよ」
「あ、シャザル君」
「こんにちは、姫様」
そうだ、人当たりのいい彼なら適任かもしれない。
「ちょっとお願いがあるんだけど」
私はシャザル君にお願いをした。ちなみに報酬はクッキーである
「わかりました!お任せください!……あ!」
シャザル君が一気に顔面蒼白になった。なんか、今朝似たようなリアクションを見た気がする。
背後を確認したら、威嚇するおっさんがいた。そして首根っこを副団長様につかまれる。首が苦しくならないなんて、高等テクニックだね!
「団長の気が散るので、ここに座ってなさい。見るのが仕事です」
見るのが仕事ですと言われてもなぁ…確かにおっさん強いし、真面目に指導してるのはカッコいいんだけど、サボってる気がして落ち着かない。
「…副団長様」
「なんですか?」
「訓練後に給水とかしないんですか?」
「しますよ」
「ここで作業しますから、飲み物を作ってもいいですか?」
「…貴女もわりと落ち着きがないですね…かまいませんよ。容器を持ってこさせます」
本来は井戸の水を入れて飲むらしい。シンプルな陶器のコップが沢山並べられた。
「プクプクく~ん」
「は~い。姫様、今日はどんなおいしいものを作るのぉ?」
すっかり私の作るおやつが気に入ったプクプク君。呼べば来てくれるようになってしまった。たまにピエトロ君がヤキモチをやくのだが、おやつをあげるとすぐ機嫌をなおしてくれる。
「飲み物を作りたいの。疲労にいい…レモンと砂糖…あとは塩を混ぜた飲み物」
要はポカリ的な飲み物だ。プクプク君がレモンと砂糖を出してくれた。プクプク君は植物または植物由来のものが出せる。彼のチートにより、豊かな食生活が可能になりました。
「厨房から塩、持ってきたよ」
「ありがとう、ピエトロ君!」
麒麟の姿で塩を持ってきてくれたピエトロ君。厨房の人が腰を抜かさなかったことを祈る。
二人にはご褒美でこないだ作ったプリンの残りをあげた。
魔法で水を精製し、そこにレモンの絞り汁と砂糖、塩を入れ、そのまま空中でシェイクする。ちょっと味見して…ほどよい感じに仕上がったら冷やしてコップに分配した。
「完成!」
「どれ……うまい!これはいいですね!爽やかで仄かに甘い」
副団長様から誉められました。というか、まだ休憩じゃないのにナチュラルに飲まれたよ。
「…休憩!」
おっさんの号令で騎士さん達が一斉にこっちに来た。おい、何故並ぶ??
「申し訳ありません。せっかくだから可愛い姫様から渡されたいということでしょう」
なるほど!私が可愛いかはさておき、女が珍しいこの世界ではパンダみたいなものってことかな?パンダがドリンク手渡し…並ぶね!絶対並ぶね!
「あ、おっさん最後ね」
おっさんの番になったが、待つように告げた。おっさんは拗ねて体育座りをしている。心は痛むが、これには理由があるんだよ…
最後の騎士さんにも配り終え、私はタオルを広げた。
「おっさん、おいで」
おっさんは尻尾を振りながら私の側に来た。
「お疲れ様。汗拭いてあげるね」
そう、私はこれがやりたかったのだ!おっさんの汗をフキフキしてあげるために最後にしたのだ。ついでに軽く揉みほぐしてやる。
「アウ~ン…フゥ~ン……」
おっさんは狼顔になってしまった。もともとたいして汗をかいていなかったが、これでは拭けない。でもまぁ、おっさんが嬉しそうだからいいか。
「おっさん、ドリンクはどうかな?」
「…俺、近いうちに死にそうな気がします。一生分の幸せがここにある気がする…!」
「とりあえず生きろ。おっさんは私がもっと幸せにするんですから、まだこれからですよ」
頭を拭くふりをして、タオルで隠してほっぺにチューをした。
「きゅーん…」
おっさんからスリスリされた…だと?もふもふからのスリスリだなんて、ご褒美だね!
「団長…」
「いいなぁ、あれ…」
「羨ましい…」
私は人目があるのをすっかりと忘れていた。おっさんが可愛くて可愛くて可愛いから、仕方ないと思うの!
ラブラブアピールにもなるからいいんだよ!多分!!あと、おっさんが幸せらしいから、いいんだよ!多分!!
別に社畜ではないですが、ついお給料もらっているからサボれない悲しい日本人のサガ(笑)
おっさんはいいところを見せたかったのですが、落ち着かない雪花なのでした。いや、たまにチラチラ見てたけどね。