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おっさんは気を使いすぎなんだよ

 今日もおっさんの側でお仕事です。お仕事開始…と思ったら、おっさんのお腹が鳴りました。


「おっさん…?」


「いや、その………」


「正直に言わなきゃ、しばらく口きかない」


「……!?あ、朝早く出てきすぎたから朝メシを食べてこなかっただけだ!別に1食ぐらい抜いても問題ない!」


 おっさんは慌てて説明をした。


「大問題ですよ!騎士は身体が資本でしょう!朝食は朝の活力の源です!」


「いや、しかし…屋敷の料理人に俺の都合で朝早くから働かせるのも悪いし…」


「なら私と朝食を摂るとか、色々方法はあったでしょ!」


「姫様と朝食……」


 おっさんはウットリしている。いや、そんな想像だけで喜ばないでよ!一緒にご飯ぐらい、いつでも付き合うよ?


「と、とにかく!とりあえずおっさんは今私が作ったお弁当を食べてください!おっさんの昼食は別メニューで作りますから!」


「い、いや……姫様に迷惑をかけるわけには……」


「迷惑じゃないです。私がしたいんです!はい、あーん」


 おっさんは、炊き込みご飯と多分私の誘惑に負けた。尻尾を振りながら、大きめのおにぎりを5個も食べました。おかずもおいしいおいしいと大袈裟なリアクションをしつつ食べてました。


「まぁ、朝食は食べた方が効率的に仕事ができるでしょう。本当にいいお嫁さんをもらいましたね、団長」


 副団長様も頷いてました。いや、嫁ではなくまだ婚約者ですけどね。おっさんは嬉しそうに頷いた。


「ああ、世界一可愛いんだ!」


 おっさんは、目がおかしい。いや、婚約者の欲目?おっさんは満面の笑みをうかべている。まぁいいか。嫁とか婚約者とか私が世界一可愛いとか、些末な事だ。おっさんが幸せならそれでいい。とりあえずなんだか感激して号泣しているガウディさんはともかく、何がツボだったのかはわからんがマナーモードになっているオレンジ頭はしばいてもいいだろうか?


「あ、副団長様に提案があるのですが」


「なんですか?」


「実は…」


 私なりにどうやったら汚い字や不可解な文章が改善されるか考えた。そして、副団長様に提案した。


「……どの程度効果が出るかはわかりませんが、ある程度有効だと思います。騎士団の人間は基本的に単純ですからね……ところで、団長」


「ウウウ…な、なんだ?」


 おっさんはまた狼フェイスでめっちゃ威嚇していた。おっさん、可愛い。


「仕事上の話をしているだけで嫉妬しないでください。あまりに酷いと姫様に部署移動してもらわねばならなくなります」


「!???」


「え」


 おっさんは目に涙をためて泣きそうになっていた。そんな絶望したって顔しなくても…


「それが嫌ならさっさと仕事しろ、色ボケ団長」


「はい!」


 正直、どっちが上かわかんないなと思った。けどまぁ、仕事はちゃんとすべきだよね!


 副団長様には逆らってはいけません。超怖い。






 私はおっさんのお仕事をサポートすべく頑張るのですが………


「姫様、これを取りたいのか?」


「姫様、それは重たいから俺が持とう」


「姫様、姫様にそんな使い走りのようなことはさせられない。俺が行く!俺ならすぐだからな!」



 おっさんわんこよ、気持ちは嬉しいんだがな?背後にな?般若を越えたナニかというか、鬼の副団長様がね?


「えっと…」


 どうやって背後に迫る危機を伝えるべきだろうか。そして、おっさんと働くためにはきちんと言わねばなるまい。


「おっさん、私…おっさんの仕事の邪魔になるなら本当に別の部署に行かされると思う」


「姫様は邪魔などしてない!」


「…邪魔しようとしてないけど、おっさんが私を手伝いすぎておっさんの仕事が疎かになってるでしょ」


「うぐ…!」


「私、仕事に集中しているおっさんが見たいな…きっとカッコいいと思うの。お仕事が終わったら、お話とかできたら嬉しいなぁ…」


 ちょっと照れてしまって、おっさんの反応をうかがったら、目を見開いて固まっていた。


 これ、どういう反応??


「ひあ!?」


 おっさんはもはや人外じみたバネ人形のような動きで机に座り、すごい勢いで仕事をしだした。


「姫様、見事な手腕です。一気に片付けるぞ!ガウディ、ライティス!ついでにたまってた面倒な案件も全部持ってこい!」


 集中したおっさんはすごかった。積まれた書類がどんどん減っていく。


 昼食前に未処理書類は8割片付いてしまったらしい。集中が切れたおっさんはぐったりしていた。


「姫様、こちらはいいですから、適当に癒してきてください」


「へ?はい」


 副団長様に計算チェックしていた書類をとりあげられた。


「おっさん、お疲れ様」


「……天使が見える」


「いや、人間です。おっさんの婚約者ですよ。頑張ったね」


 頭をナデナデしてあげたら、尻尾が元気に揺れていた。


「…お仕事が落ち着いたら、デートしたいね」


「でぇと?」 


「えっと、二人きりでお出かけするの。一緒にお買い物したり…だめ?」


「荷物もちですか。お任せください!」


 なんでそうなる。しかもなんで嬉しそうなんだよ!


「……………ちがう」


「姫様?」


「ちーがーう!デートとはつまり!好意をもった異性が…おっさんと私が!二人きりで!食事したり、イチャイチャしたり、お給料で私が!おっさんに!贈り物をしたいって意味で………あ」


 サプライズにするはずが、盛大にばらしてしまった!しかも別におっさんは悪気があって荷物もちと言ったわけではないのにキレてしまった。しかもイチャイチャしたいと公言する女ってどうなの??


「あ…………………」


 おっさんはまたしても固まっていた。


「おっさん」


「アオーン!ルオオオオオン!!グオオオオオン!!ワオーン!ワオーン!!」


「おっさぁぁぁぁん!?」


「まぁ、書類は片付いてますからいいでしょう。あれなら午後も元気よく働くでしょうね、よくやりました」


「え?……は、はい…」


 おっさんはしばらく戻ってこなかった。そろそろ探しに…と思ったら戻ってきた。


「ひひひ姫様、お、俺…姫様を、い、いつかででででぇとにさ、さささささ誘う…から、待ってて…ほしい」


 私にひざまづいて真っ赤になったおっさんにそう告げられた。





 このおっさん、どうしてくれようか。




 とりあえず、抱きついて力の限り頬擦りをしてやった。


「アオーン!?」


 おっさんが鳴いてもかまわず、私が満足するまでスリスリしまくってやった。

 世界一可愛いのは、間違いなくうちのおっさんだね!

 おっさん、頭がいいので本気を出すとすごいのですが、かなりギリギリにならないとスイッチが入らないタイプです。

 今回は雪花がスイッチを連打しました。

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