表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/241

忠犬おっさん…いや、やっぱり狼…いや犬だったよ

 イシュトさんにとりあえず仮採用してもらえて、騎士団の服もいただきました。今日の侍従はカダルさんです。


「おはようございます、姫様。朝食の用意は整っております」


 顔を洗うためのお湯が入ったたらいがさしだされ、洗顔したらすかさずタオルを渡される。


「ありがとうございます」


「いえ、本日から騎士団で仕事とうかがっております。面会等はすべてお断りいたしました」


「え」


 そういえばそこ忘れてたと思ったら、きちんとカイン君が対応してカダルさんに引き継いでくれたらしい。


「カダルさん、私が騎士団で仕事してる間は暇ですよね?」


「…そうですね」


「なら、これをカイン君に渡してください。あと助かりました、ありがとうって伝言をお願いいたします」


「承りました。でも、カインは仕事をしただけだってつっぱねるかもしれませんよ?」


「なら、いつもの仕事へのささやかな感謝だと言ってください。で、こっちはカダルさんへのお礼です。仕事外の頼みを快く引き受けてくださってありがとうございます」


「どういたしまして」


 ちなみに中身は昨日量産したクッキーだ。味見したけどサクサクでおいしかった。


 身支度を済ませて朝食を食べ、まだ早い時間だから厨房で昼食を作って差し入れようと考えて部屋のドアを開けた。


「キャイン!」


「え?」


 ガンッ!と派手な音がした。ゆっくり開けたら、後頭部を強打したおっさんが丸まっていた。


「おっさん、大丈夫!?」


「う…大丈夫です」


「ちなみに、1時間前ぐらいからおりましたよ」


「カダルさん早く言って!むしろ起こして!!」


 知ってたら優雅な朝ご飯しなかったよ!


「いや、その…姫様…セツ様を迎えに来たくて…俺が勝手にしただけ…ですから」


 モジモジするおっさん。朝から可愛いです。チラチラと私の表情をうかがっている。


「おっさん、お迎えありがとうございます。お昼の差し入れを作ってから出る予定だったのですが…」


「手伝う。野菜の皮剥きなら得意だ」


 それドヤ顔して言うことじゃないのではしかも上手くなった理由が先輩騎士に雑用押しつけられてたって……まぁいっか。今はないみたいだし。


「なら、お願いいたします」




 お城の厨房に来たら、顔見知りのイケメンコックさんが歓迎してくれました。



「姫様、おはようございます!今朝は何を作るんですか?」


「おはようございます。今日は炊き込みご飯にしようかな」


 後はから揚げとたまご焼きと…野菜炒めにしよう。デザートは昨日帰ってから量産したクッキーでいっか。


「ヒッ!?」


 何やらコックさんが怯えている。私の背後には…尻尾をパタパタした可愛いおっさんしかいない。おっさんの背後も確認したが、おっさんしかいない。


 私は気にせず調理を開始した。昨日下ごしらえをしておいたので、炊き込みご飯は炊くだけだ。


 鶏肉(どんな鳥かは怖くて聞けない)に下味をつけて揚げていく。




 おかしい。





 普段ならコックさん達がわらわら寄ってきてレシピを聞いたり味見したがったりするのに、おっさんしかいない。

 から揚げの油をきりつつこっそり様子をうかがうと…おっさんが狼フェイスでめっちゃ威嚇していた。すごい迫力だった。



 原因はおっさんか!



 さっき怯えていたのもこのせいだよ!むしろこの威圧感に気がつかなかった私が鈍すぎだよ!


「…おっさん?」


「キャン!?」


 狼さんは一気にいつものおっさんになった。なんか叱られる直前のわんこみたいにビクビクしている。


「…なんでコックさん達を威嚇してるの?」


 何故かコックさん達から姫様にぶい!というヤジが…え?まぁよく言われるけどね。鈍感力は案外あると幸せに生きられるのだよ。見ない方がイイモノって世の中にはたくさんあるし。


「………て………ました…」


「え?」


 下らないことを考えていたら、聞き逃してしまった。おっさんにもそれは伝わったらしく、必死に顔を隠しながら私に告げた。


「しっと……しました……こころがせまくて…ごめんなさい……」


 大きな手からのぞく肌は真っ赤で、耳もピンクに染まっている。見上げるほどの大男なのに、恥じらいながらヤキモチをやいたと正直に告げたおっさん…


「ぐはっ!」


「姫様!?」


 鼻血を出さなかった私を、誰か誉めてください。倒れた私をすばやくおっさんが抱っこした。


「姫様!?い、医者!??」


「いらない。んもう、おっさんたら可愛いんだからぁ!だいすきぃぃ!!」


 おっさんに抱っこされたまま抱きついた。今日もおっさんはいい匂いです。


「ひひひひひ姫様!?く、くすぐったいです!いや、人前で!?きゅぅぅん!」


 おっさんの首にグリグリスリスリしてやりました。こんなとこじゃダメといいつつ、尻尾は喜んでるじゃないか!ふははは、よいではないかぁぁぁ!!




「姫様ー、いいかげん作らないと時間ヤバくないですか?」


「は!本当だ!」


 手早く残りを作って詰めたけど、時間がヤバい!おっさんが可愛すぎるせいだ!走っても間に合うかなぁ…


「姫様、お任せを」


「え?」


 おっさんは私を抱っこして走った。速かった。しかし、飛び降りたりととんでもないルートだった。

 それなのにおっさんの腕の中は異常なまでの安心感があり、私はジェットコースターを楽しむ気分だった。


 おっさんのおかげで間に合いました。今日もお仕事頑張るぞ!

 ちなみにおっさんは雪花の部屋のまでをまだかなまだかなとソワソワうろうろしながら扉の前に居たので扉が直撃しました。地味に不幸。

 そして近寄るコックさん達が嫌で威嚇しました。


 雪花さん大好きわんこです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ