表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/241

幸せランチタイム

 おっさんはまだ現実を受け入れられないらしい。私が離れたら夢が覚めると思っているらしく、はなしてくれない。


 マーロさんとミック君は静かだなと思ってはいたが、笑いを通り過ぎて痙攣していた。なんて残念なイケメン達なんだ。


「おっさん、私差し入れを作ってきたよ」


「マジ!?姫様俺の分は?」


 何故かオレンジ頭が食いついた。


「あるよ。というか、この場の全員分あるよ。ガウディさんのもね」


「戻りました!バッチリ提出しましたよ!」


 ちょうどガウディさんも戻ってきた。時間も昼時なので、ランチタイムにすることに。アイテムボックスからカツサンドセットを取り出して並べていく。団長執務室には応接用の机とソファがあり、書類を汚すと困るので全員そこに座った。私はおっさんの膝に座っている。


「うわ、うまそ~」


 それぞれいただきますを言って食べ始めた。


 全員固まった。あ、あれ?なぜに??わけがわからずオロオロする私。サズドマは普通に食べていたから、マスタード&ソース味がお気に召さないわけではないはずだ。


「うぅぅまぁぁいぃぃぃ!!!」


 おっさんが雄叫びをあげた。膝に乗っていた私は至近距離でくらったので、耳がキーンとした。


「なん…サクサクで…じゅわーで、おいしい!」

「これは…」

「これ…な…うまい…」

「はぐはぐはぐはぐ」

「もぐもぐもぐもぐ」


 ミック君もマーロさんも驚いている。イケメン眼鏡は言語崩壊したのか呆然と単語を呟いていた。オレンジ頭とガウディさんは無言でひたすらカツサンドを噛みしめている。


 普通のカツサンドですよ?


 確かに美味しくはできた。サクサクの衣にジューシーなお肉。刻みキャベツは細かく刻んである。


 そんな、感動する味じゃないよ?


 しかしおっさんはおいしいと呟きながらえぐえぐ泣きつつ食べていた。そしてカツサンドとスープがなくなって、耳と尻尾がしんなりした。


「おっさん、私の分ちょっとあげます。私にはちょっと多いです。まだ食べれそうならおかわりもありますよ」


「……!!て…天使!?」


「人間です!はい、あーん」


「むう!?」


 私にカツサンドを食べさせられるおっさん。真っ赤になっておっさんはモグモグしている。


「はい、あーん」


 スープもあーんで食べさせようとする。フーフーしたから熱くないはずだ。


「あばびゃぶばば!?ほああああ…むぐ!」


 おっさんがアワアワしているので、さっさと食べさせた。


「おっさん、私の国では妻や婚約者はこのように配偶者または婚約者に給餌をするしきたりがあるのです。そして、これは私からの愛情表現でもあるのです!」


 半分嘘である。愛情表現なのは本当だ。しきたりということにしておけば、おっさんは素直にあーんされると思っていた。


「……あ、あーん?」


 おっさんは私にカツサンドを差し出した。顔は真っ赤で、本来銀色の耳はピンクになっている。恥じらいながら、口を開けてあーんをするおっさんに、うっかりキスしそうになった。とりあえずカツサンドをかじる。


「…おいしいね」


「………そそそそうでしゅね」


 噛んだがおっさんはそれどころではないらしく、尻尾をバタバタ振りまくっている。すげー可愛い。後でチューしたい。とりあえず、今はほっぺだな。チュッとほっぺにしたら、おっさんが悶えた。私はお膝にいるため、おっさんは動けない。



「団長…よかったですね…」


 ガウディさんは泣いていた。


「姫様、そーゆーのは二人きりでにしましょうよ」


「ごめん」


 素直にオレンジ頭に謝罪した。おっさんが可愛すぎるのがいけないんだと思うの。


「いや、団長殿が初々しいですね」

「ふは、確かに」


 マーロさんは何がツボなのかマナーモードになっている。ミック君も楽しそうだ。


「…異界の姫様」


「はい」


「……貴女は、まるで団長を本当に好ましく想っているように見える」


「うぇ!?は、はい」


 どストレートにイケメン眼鏡に確認されてアワアワしてしまう。


「団長…おめでとうございます!本当に嫁を見つけたのですね!騙されているのではと疑ってすいません!姫様…団長はこんなですがいい男なのです!団長を…団長をよろしくお願いいたします」


 イケメン眼鏡に土下座されました。


「…おっさん、部下にここまでよろしくされるって、おっさんの女性遍歴はどーなってんの?」


「……嫌われ疎まれ物を投げられたぐらいか?そもそもまともに会話をできたことがない…」


 おっさんが涙目になったので慌ててプリンを差し出した。


「おっさん!ほらこれ!新作だよ!おいしいよ~」


 そして男達は甘味(プリン)に夢中になった。



「これは…奇跡の菓子だな!」


「甘くて美味い…なんとぷるんぷるんなのだ!」



 あまりにもプリンに夢中になりすぎて、皆さんおっさんの話題をすっかり忘れてくれた。

 しかし私がうっかりこっちは卵が濃厚なので甘さ控えめにすべきか甘めがよいか…さらにはカラメルの苦味等の調整について話したら、もはや議論になってしまった。


「団長、いい加減仕事してくださいよぉぉ!!」


 たまたま書類を持ってきたはいいが、散々待たされたシャザルさんが泣くまで議論は続いてしまった。


 ちなみにおっさんは甘さ控えめでカラメル苦めが好きなようなので、またプリンを作ろうと思った。

 実はトンカツもこっちにはありません。そのまま揚げることはあります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ