緊急家族会議なんだよ
そんなわけで、緊急家族会議。議題は『なんで深雪たんが女王様風になったか』
「すんませんっしたあ!!!」
「どちら様?」
その議題を出したら、見知らぬ少年が土下座した。誰かに似ているような気がしないでもない。
「エマムゾ!?なんでお前がここに?」
「サズドマ、知り合い?」
「サズドマの弟ですよ」
シャザル君がサズドマのかわりに答えてくれた。
「弟」
言われてみれば、似てる。しかし、エマムゾ君の方がなんとなくまだスレてない感じがする。なんかすげぇ怯えられてる気がするのは気のせいだろうか。
「ご、ごめんなさい。お……ぼく、が悪いんです」
「えー?エマムゾちゃんはわるくないよ〜?うまい話はウラがあるのに、みゆが乗ったからだめなのよ〜」
よくわからないので怒ってないから説明してほしいとエマムゾ君に言ったら、なんかありえないモノを見たような表情になった。
「エマムゾ、この人がヒメサマ。こーゆー人なんだよォ。気にすんな」
どういう意味だと問い詰めたいが、そうしちゃうと話が進まないしエマムゾくんがさらに怖がるかもしれないからやめておいた。チラッチラッするサズドマ。踏まないからね!
オドオドしながらもエマムゾ君が話しだした。エマムゾ君以外に三人の獣人兄弟がいるのだが、彼らはシャザル君のうちにお世話になっている。
子供を大事にする、とはいえあくまでもそれは自分の子供であり、母から見捨てられた彼らはサズドマが基本お金を渡し、シャザル君の家にある離れで寝ていた。
シャザル君の家族は優しいが、それはあくまで男性のみ。居住スペースが別れているとはいえ、シャザル君の母に見つかれば、ひどい目にあう。完全に安心できる環境とは言えなかったし、あくまでシャザル君のお父さん達は他人。実父達に捨てられたエマムゾ君達にとって、家族とは身を寄せ合う兄弟だけだった。
そんなある日、エマムゾ君は狩りにでかけた。獣人は身体能力が高い。子供といえども森の入口にいる魔物程度なら狩れる。サズドマが叱ろうとしたっぽいのでさり気なく口を塞いだ。
エマムゾ君はそこで、黒い丸を見つけた。
それは、エマムゾ君にこう言ったそうだ。
『私を手伝ってくれたら、オマエの望みを叶えてやろう』
いつもなら、そんな怪しげな勧誘に引っかからなかったのだが、エマムゾ君はうなずいてしまった。そして、願いを言った。あれ?願いは??
「なんて願ったの?」
「………たいって……」
そんな恥ずかしい願いなの?すげー真っ赤で鱗が出まくってるんだけど??魚なのかな?耳からエラっぽいのも出てる。
「愛されたいって!こんなオレでも好きって言ってくれる、可愛いお嫁さんがほしいって言いました!!」
「な、なるほど?」
サズドマとシャザル君の視線が痛い!そんな言いにくいお願いだと思わなかったんだもん!ケビンは気持ちがわかるらしく涙目でかわゆす。とりあえずお膝に乗ろうかな。夫を慰めるのは妻のお仕事だからね。よいしょっと。
「それでみゆに会ったのね?」
「……そう」
「ウチの娘可愛いもんねぇ」
親バカ全開だと自覚はあるが、偏見がないかわいい嫁なんて、深雪にあるような称号だ。雪那にはシロウくんがいるので無理だし。
「みゆ、サズドマ好きだからエマムゾ君もサズドマに似てて好きだし〜条件に合ったのかも〜?」
場が、場が凍りついた。
「え??なんで!?深雪はいつからサズドマが好きなの!?ほんとにいいの!?最近色々丸くなったけども、サズドマってド変態だよ!??」
「だから人をデブみたいに言うなよォ!」
デブはだめだが変態はいいらしいサズドマ。感覚がおかしい。デブのほうがいいと思うよ?変態は矯正できないし。
「え〜と、前から〜!そしたらね〜、カダルがサズドマは女王様みたいな人が好きですよって言うから〜、女王様みたいになったらサズドマのお嫁さんになれるかなって〜」
「カダルさんや」
「申し訳ございません」
だから、そっと私に鞭を渡して尻を向けるな!叩かないからね!!
「あのカダルが……服従して、いる……?」
ヤバい、エマムゾ君がドン引きしている……!ガクブルされているううううう!!カダルさんのせいだあああああ!!
「盛大に脱線しましたが、つまりエマムゾの願いでミユキ様に会い、黒丸はミユキ様に取り憑いた?」
「だが、そのミユキとやらは欲が異常なまでに希薄だったんだろうな。割に合わないからと抜け殻だけが残ったのだろう」
「うむ。あれは力の滓だったな。ミユキとやらは、よほど根が善良なのだろう。強力な魔力に目をつけ、そこのガキから乗り換えたのだろうが……逆に弱る羽目になったと見た」
ピヨ魔王とカモノ魔王が頷く。ん?待てよ?ということは、エマムゾ君が言ってた黒い玉って……??
「え、つまりこの国に魔王がいるってこと……??」
まだ、魔王退治は終わってくれないらしい。
次から次へと起きる事件。
サズドマ、産まれて初めてもてたけど、もはやそれどころではなくなった件。