変態はお腹いっぱいなんだよ
チョコレート強化からの鬼コンボにより、魔王は滅んだ……のかな?とりあえず、魔王らしき噂も無くなった。これで帰れる!!我が子に会える!!
私がめんどいという理由で国々の歓待はすべてお断りした。話がしたくば、アカデミーに女性を差し出せとも言ったらいくつかの国が興味を示した。言ってみるもんだなぁ。
難色を示した国には、こちらから女性教師を派遣する算段をつけておいた。ただでさえ希少な女性。こちらの方が受け入れやすいようだった。方針転換すべき?とりあえずはカルディアで試してみてからかな。もうすぐ、次の計画に移れそうだし。
「雪花のおかげで予想より大幅に早かったな……」
ケビンの見立てでは十年ぐらいかかってしまうかもと思っていたそうな。いやいや、そんなに我が子を放置できないから!!
でもまあ、徒歩で各国を回ってたらそんなもん?もっと??そうだったのね……。
「移動手段のおかげもあるよね」
ドラゴン君たちが運んでくれたので、異常なまでのスピードで世界各国を移動できたのだ。徒歩とか馬ではこうは行かない。馬は飛べるし速いけども、ドラゴンには敵わない。ドラゴンは強いから、大概の魔物は見ただけで逃げていくので邪魔も入らないし、いいことづくめである。
「ふはははは!!主の母君のためとあらば、いくらでも!!」
「ふはははは!メシもうまい、強い!慈悲深い!!最高の主君よ!!」
「うん……??」
いやまあ、ついでだからとご飯をふるまったけども……?私はいつの間にドラゴンの主君扱いに……??強さでいったらうちの旦那様が最強だと思うんだけども??
「……どう見てもヒメサマがボスだもんなァ……」
「そうだね……滲み出るラスボス感……野生の魔物は敏感だね」
「人を魔王扱いするんじゃありません!!今日の夕飯、二人は外食させようか!?」
あんまりな物言いなので、サズドマとシャザル君に苦情を言った。誰がラスボスだ、誰が!私はか弱い団長婦人だっつーの!!
「「大変申し訳ありませんでした」」
すっかり餌付けされてしまったのか、サズドマまでもがガチで土下座した。
「わ、わかればよろしい。今日はハンバーグですよー」
「「わーい」」
サズドマがだいぶ丸く……いや、なんかこう……。
「サズドマ、さらに太った?」
「シャアッ!?ふふふふふ……………ふとっ………太った……かも」
「うんうん。更に太りましたね。筋肉もついてますけど、これまでが痩せすぎだったので、肥えたというか、健康的になりましたよね」
「だね。会った頃はガリガリだったもんねぇ」
筋肉はあれどアバラが浮いてそうなガリガリ具合だったサズドマ。ふっくらお肉がついてきた。いい意味で。言い方が悪かったかなー。まあいいや。サズドマだし。着実に肉がついてます。筋肉とかもさらにかな?
「……すまんな。私が不甲斐ないばかりに、お前達にろくに食わせてやれず……」
「「団長は悪くないです!!」」
深刻な予算不足だったもんね……。今はきっちり予算が出てるから食生活も改善された。劣悪な状況下にあっても騎士達が辞めなかったのは、ケビンの人徳だろう。あのサズドマですら(本人をいじると全力否定するが)ケビンに憧れて騎士団に入ったらしいし。彼にもピュアな時期はあったというか、今もある意味ピュアなのかもしれない。
「……でもさ、シャザル君はそこまでやつれてなかったけども、なんでサズドマはガリガリだったのかな?」
「ああ、それは」
「シャザル!!……余計なこと言うな!」
何やら理由があるようだ。
「サズドマは、弟達を養っていたからな」
「シャアッ!?団長!??」
「弟?弟なんているの??」
サズドマに弟……なんか、想像つかないわ。兄がこんな変態で大丈夫なの??いや、最近はだいぶマシ?ジロジロ見られて困惑したのか、サズドマが丸くなった。
「………いるよォ……。あいつらは、オレのことなんか知らないけどよォ……」
「……どういうこと?」
「サズドマの母はこう、なんというか……一般的な女性よりもさらに癇癪持ちでして……サズドマみたいに獣の特性がある子は育てなかったんです」
「ナニソレ有罪」
聞いといて話を遮るとか失礼だが、許せない。何それ。
「……ワリと、ある事なんだよォ……特に蛇獣人は嫌われるから、そうだって事も隠すし……だからオレの親父は追い出されたしなァ……」
サズドマの実父は他の父親達に殴られ、サズドマだけが残された。母の手前もあって、サズドマは冷遇され……シャザル君ちがほぼ育てたようなものらしい。
「だからこんな仕上りに……」
「屈折してる自覚はあるけど、残念扱いすんなよォ!!」
「いや、あんたはいい子よ。性癖は残念だけど、自分より弱いモノはいじめないでしょう」
よしよししたら鱗がみっしり。そしてフリーズした。まあ、性癖はさておき、そう言えばカダルさんも弱い者いじめはしない。強い者いじめはするけど。むしろ強い者を屈服させたがるような………?やめよう。深く考えるのはやめておこう。頭が痛くなる気がする。
「きゅーん」
癒しのマイダーリンが撫でてもらいに来たから忘れよう。こんなにゴツいのに可愛いとか奇跡じゃないかな。モフモフだし癒やされるぅ。
「姫様ー、もう聞いてるかわかりませんけど、サズドマは他の獣人特性がある弟達に食べさせたりしてるから僕よりガリガリだったんですよ。僕も食べ物を分けるって言っても、プライドなのか聞きませんし、そういう子たちだからかサズドマ以外からの食事は受け付けませんし」
「なるほど」
じゃあ、私からの援助もダメかしら。というか、認識されてるじゃん、サズドマ。
「……シャザルからは受け取らねぇとか、初耳なんだけどォ……結局、アイツらもシャザルんちの世話になってるしィ。つーかさ、シャザルんちの親父達、金すら受け取らねーのひどくねェ!?」
「酷くない酷くない。うちの父達からしたら、お前もうちの子だから。子供からお金を搾取するほど困窮してないしね」
「……シャザル君のお父様達、素敵ね」
問題は、何故カダルさんがああで、サズドマがこうなのかということだ。
「自慢の父達です。全員カラーの違う変態ですから、姫様に会わせるのは全力で避けたいですけどね」
シャザル君の笑顔が怖かった。わかったよ。会わないよ!そう言うまでその笑顔をやめなかった。
どんなお父様達なのか、気になったがサズドマですら笑顔で沈黙した。どういうこと!??
お久しぶりすぎる更新であります。
希望があれはシャザル父ーず参戦………するかも??
濃ゆいのは間違いない親父達です。
別作品で申し訳ないですか、悪なり小説7巻&コミカライズ2巻が好評発売中でありまーす!