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釣られた魚だって餌が欲しいんだよ

 おっさんと正式に婚約すると約束した交流試合から1週間が経ちました。私とおっさんのラブラブ生活がついにスタート!かと思いきや………




 おっさんが、来ません。






 前は最低週1で来てくれていたのに、来ません。


「き、嫌われた!?」


 大暴れしたせいで幻滅された!?いや、高飛車がまずかった!?いやいや、あのチューか!??もはや心当たりがありすぎる!!


「あー、多分そりゃないわ。あに………団長もそのうち来るだろ。気にすんな」


 頭をかかえる私を慰めてくれたのは、本日の侍従カイン君です。サラサラな銀髪に青い瞳。これで片方が赤い瞳ならおっさんに似てるのになぁ。カイン君は美人でゴツくないし、耳も尻尾もないけど…やっぱ似てないわ。色が似てるだけだわ。


「そうだよ、姫様。試合のときの姫様は超怖かったけど、姫様はめったにキレたりしないもん。だから僕、怖くないし姫様大好きだよ」


「…ありがとう」


 さりげなく抉ってくる友人その2ことミック君。かわいい系な少年です。


「ねーねーマーロ様ぁ、僕姫様と社会見学したいなぁ。今からできない?マーロ様の権力で!」


「おや?ふふふ…そうですね、姫様の第2夫にしてくださるならいくらでもいたしますが、いかがしますか?」


「私は、結婚するなら1人だけと決めていますからお断りします」


「わかりました。では友人として協力しましょうか」


「あーあ、やっぱりかぁ。僕も姫様の旦那さんになりたかったなぁ」


 他の友人達も苦笑していた。後で聞いたが、夫は5人ぐらいが普通だからおっさんと正式に婚約すれば他も選ぶのでは…という期待もあったらしい。口説くのをやめたのは、私を尊重したから…とのこと。


「複雑ですが、嬉しくもあります。貴女方は本当に見ていて微笑ましいですから」


 友人達も頷いた。マーロさん達により、私はおっさんとだけ結婚する予定だと情報が流された。

 更に、圧力もかけてくれていたらしい。持つべきものは、権力がある友人ですね!


「では参りましょうか。その前に、これを」


「これは?」


「ふふ、今の貴女方に必要な書類ですよ」


 マーロさんはニッコリと微笑んだ。


「さて、行きますか。ちゃんと予約してありますからねぇ。ミック、君も来たければ来てもいいですよ」


「マジ?やった!社会見学だぁ!流石は公爵様!権力万歳!」


「…えっと、マーロさんお仕事は?そして、見学ってどこに??」


 大概マーロさんは昼休憩におやつをもらいに来る。見学の案内なんかしたら、タイムオーバーではないだろうか。


「ふふ、視察というお仕事ですから、大丈夫ですよ。もちろん騎士団です。団長とも面会しますよ」


 流石です!しかもイケメンだからウインクも様になってます!


「なら、良かったです」


「私のせいで姫様に悪評がたっては困りますから、そこら辺はちゃんとしてますよ」


「マーロさん、ありがとうございます!」


「はいはい、姫様はおでかけなら気合い入れないとな。少し待っていただけますか?がっつり磨きますんで」


「…………オテヤワラカニオネガイシマス…いや待った!手土産準備してからで!昼食用意します!」


「おや、それは私も興味がありますね」


「時間は大丈夫ですか?」


「問題ありませんよ。午後は視察と言ってあります。時間がかかるものでも大丈夫です」


「わかりました。すぐ作りますね!」


 私はお言葉に甘えてカツサンド・野菜スープ・プリンを作りました。こっちにはゼリーもプリンもないから、皆驚くんじゃないかな?


 余談ですが、こっちの卵に私が驚いた。こっちには『卵がなる木』がある。牛乳も実がある。鳥の卵ももちろんあるけど、やたらとカラフルだ。真っ赤な黄身…黄色くないけど…にピンク色の白身…慣れればいつか使うかもしれないけど当面は色がまともな卵の実を使いたい。

 ちなみに赤、青、緑、紫などがあります。





「さて、作ったな?」


 私がアイテムボックスに昼食をしまったのを確認して、にんまりとカイン君が笑いました。


「オテヤワラカニオネガイシマス…」


「多少は我慢しろ。可愛くしてやるから」




 とても可愛く仕上げていただきましたが、カイン君は容赦がありませんでした。


「きつく結わないでって言ったのに…コルセットもきつい……」


 禿げたらカイン君のせいだと思う!あと、骨折したらどーすんだ!


「女の子って大変なんだねぇ…」


「しかし、よくお似合いですよ」


「うう…ありがとうございます…」


 しかし、おっさんに会えるわけから私はウキウキです!コルセットがきつくても、頑張りますよ!

 ちなみにマーロさんは公爵、ミック君は侯爵子息です。雪花によく会いに来る貴族は比較的高位貴族が多く、他の女性達と違う雪花を微笑ましいとマスコット的に思っています。

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