表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
189/241

小さな奇跡

 また呼ばれたのか、と思ったのだが……普段とは景色が違う。都会ではなく、田舎道だ。記憶が吹き出すよう。気がつけば、駆け出していた。相変わらず無人………それもそうか。これは………私の(こころ)なのだから。


「わふっ!」


「わあっ!?」


 私に何かが覆い被さってきた。抱えきれず転倒する。そうだ、うちでは犬を飼っていた。ちょっとぽっちゃりしたゴールデンレトリバーの……コロ。


「………おかえりなさい」


 そんな、まさか……。そう思いながらも期待して目線をあげた先に……。








 変態鳩マスクがいた。








「必殺!鳥さん召喚!!」


『こけこっこぉぉい!!』


 鳥も群れるとかなりの迫力だね。ダチョウ、ペンギンが変態鳩マスクに襲いかかった。期待してしまっただけに落胆が大きかったが、コロに会えただけでも充分だ。変態鳩マスクがいるということは、ロザリンドちゃんもいるだろうか。


 名残惜しいがコロから離れて母屋に……行こうとしたら、なんかいた。茂みに隠れているつもりのようだが見えているよ。


「お父さん?お母さん??」


 立ち上がり、こちらへ両手を伸ばす両親。最後の記憶そのままの姿だ。


「大きくなったわねえ」

「そうだな」


「お父さん!お母さん!!」


 迷わず走り、泣き出した。おかしいな。こんなに私は泣き虫だっただろうか。両親はあたたかかった。それが、嬉しかった。


「そろそろ新しい家族を紹介してくれるかしら?」


「うん!」


 話したいことがたくさんある。どこから話そうかと思案していたら、大好きな声がした。


「私はケビン=カルディアと申します。カルディア騎士団で団長をつとめております。事後報告となってしまい申し訳ありませんが、ご息女との結婚を認めていただきたい!」


 なんでケビンが?とか、西洋風の格好が和風建築で浮きまくっているとか、騎士服はご褒美なのかとか、色々思った。しかしいきなりの『娘さんをください!』と土下座に固まってしまった。


「あらあら~」

「………ふむ」


 母は楽しげで、父は考えた様子だった。


「………ケビン君、でいいかな?」


「はい!」


「とりあえず、立ってくれ。それから……そうだな。ありがとう」


「…………は?」


 土下座はやめたが、地面に座ったままポカンとするケビン。母が楽しげにケビンへ話しかけた。


「ケビン君はよくわかっていると思うけど、この子はなんでも一人で抱え込むし……泣かないでしょう?」


「それは………はい。とても強くて……可愛いと思っております。最近はようやく、少しだけ私にも荷を預けてくれるようになりました。彼女だけに負担をかけぬよう、心配りをしたいと考えています」


「泣かないんじゃなくて、泣けなくなったのよ。この子は強くなかった。でも、強くならざるをえなくなったの。私達が……親がいなくなったから……ごめんね、雪花。ずっとずっと、見守っていたわ。貴女が幸せになってくれて、本当によかった」


「お母さん……」


 ヤバい、また泣きそう。そんな空気を察してか、またしても聞きおぼえがある声がした。


「ママ、そろそろワタシ達も紹介してほしいわ」


「雪那?」


 我が家の可愛い子供達も現れた。これは夢だ。しかし、とびきり素敵な夢。ポッポちゃんからの特別ボーナスかもしれない。とりあえず、鳥さん達には帰還していただいた。


「まあまあ!素敵!孫にも会えるなんて!ぜひ紹介してほしいわ!」


「くうん?ママと似た匂いがするー」


「えっとー、だっておじいちゃまとおばあちゃまだものー」


「いつも会ってるおじい様とおばあ様はパパの両親で、今いるおじい様とおばあ様はママの両親よ」


「わかんないけど、わかった!つまり、ゆきのじいじとばあば!」


 説明が難しかったらしく、早々に考えるのを放棄した雪斗。まあ、間違ってないからいいのかな?


「じいじ、ばあば、はじめましてー!ゆきはねえ、ゆきって言うんだよ!」


 元気に走り、父に抱きつく雪斗。父も嬉しそうだ。


「ワタシは雪花の長女で雪那=カルディアと申します。おじい様、おばあ様……お会いできて嬉しいですわ」


 優雅にスカートをつまみ、礼をする雪那。礼儀作法はカダルさんに仕込まれただけあり、完璧だね!


「挨拶はこうやるのよ」


「まああ、雪那ちゃんはお利口さんね!」


 母に抱きしめられ、アワアワする雪那。助けを求めているようだが、尻尾がパタパタしているのでにっこり笑って手を振った。


「ゆき、スカートはいてないからできない!」


「カダルに挨拶は教わったはずよ?」


「カダル?追いかけっこよくしてくれるよ!」


 あのカダルさんからも逃げ切るとは、雪斗………やるわね!後で労っておこう。


「ちゃんと教わらなきゃダメ!次からはワタシも同席するからね!」


「あらあら、雪那ちゃんが一番お姉さんかしら?しっかりしているわねえ」


「ゆきが一番お兄さんだよ!ばぁば、一番はゆきなの!」


 必死で一番お兄さんは自分だとアピールをする雪斗。


「別にワタシが一番お姉さんでいいんじゃない?精神年齢はワタシが上だし」

「ゆきなの!!」


「私が末っ子の~、深雪です~」


 言い争う二人に対し、やはりマイペースな深雪なのであった。ありえないほどに幸せな光景に、自然と笑顔になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] コロ…ちょっとぽっちゃりとか… めちゃくちゃ癒し系じゃありませんか!! 私も会いたい…モフモフしたい… 雪斗ちゃんが、あのカダルさんから逃げ切るなんて… いつの間にそんなに成長したの! 将…
[一言] 子供の一番アピールは可愛い。誰がなんと言おうとも可愛いのだ!!( ・`д・´)…解ったからおだまりなんて言わないったら言わないよ?(笑) ウンウンそうね~ゆきちゃんが一番お兄ちゃんよね~(…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ