夢みたいなんだよ
この世界の女性は、自由なようで不自由である。甘やかされて気づかない者がほとんどだが、無意識にそれを感じているのではないだろうか。だからこそ、満たされないのだ。
さらに都合よく使えるように誘導するためか、根っこは素直な場合が多く反発されても根気よく話せばきちんと納得してくれる。マウントを取りたがるのはこの世界の女性達の習性だと思えば、さほど不快でもなくなった。
そんなわけで、お嬢様はすっかり落ち着いてしまった。
「お姉様、異世界の話を聞かせてくださいませ!」
そして、何故かなつかれた。今日は異世界スイーツも使ってないのに……何故??なんというか、こっちの女性ってこちらがポイントさえ理解していれば、それほど問題ない子が多いかも。職場の話が通じないお局様の方が扱いが難しい。
「いいですよ」
求められるままに話す。こちらで驚いたこと。必ずしも異世界の方が優れているわけではないこと。こっちの育児制度は素晴らしいけど、もっと女性も参加したらいいのではないかなと話していたら………腹痛が来た。
あ、これ、まずい。
「お姉様!?」
「う、産まれる……」
なんでまた、このタイミング……?うおお……お腹がああああ……。え?臨月まだ先じゃないの!?
「えええ!?だ、誰か!医師を!いえ、姫様の旦那様をー!??」
ケビンがすぐに駆けつけてくれた。そして、すぐに医者へと走り、無事出産。初回とは違い、大変スムーズに産まれた。とはいえ、格闘すること数時間。しかも双子だからねえ……。産まれた頃にはぐったりですよ。
今回、ケビンは出産のお手伝い。お湯を沸かしたり、私が苦しめばさすったり、甲斐甲斐しく働きまくっていた。それなのに、泣きながら赤ちゃんを抱いている。元気だなぁ……。
「雪花、元気な女の子達だ!可愛いぞ!!ありがとう………ぐしゅっ…」
「おっぱいあげなきゃ……」
初乳は大事……。娘達を抱っこして、吸わせてやる。げっぷはケビンがさせてくれた。
「疲れただろう?赤子は俺に任せて寝なさい」
「ん………」
くたくただったので素直に眠ってしまった。ケビンとじいがいるから、大丈夫だ。
そして、目が覚めたら、不思議な光景が目に入った。
「こ、こうですの?」
「まあ、及第点ですね」
何故かお嬢様も育児に参加している。母性が刺激されたのか、とても優しげな表情だ。そして、何故かお嬢様を指導している……メル君??上から目線だわあ。
「だから、なんでオレにガキを抱かせるんだよ!シャザル、助けてェ!」
「育児はできた方がモテますよ、サズドマ。可愛いじゃないですか」
「くっそイイ笑顔しやがって!絶対ェ本音、違ェだろォ!!」
「はっはっは、こんなに怖がるサズドマはそうそう見られませんからねえ」
サズドマとシャザル君はともかく、カダルさん??シャザル君とカダルさんって、笑顔がそっくりー。
「サズドマ、ちゃんと抱っこしないと。まだ首がすわってないんだから。首が折れちゃうよ」
「そんな危ねェ生きモン、オレによこすなよォ!!」
サズドマは涙目だ。そんなにビビらんでもいいのに。よく見たら、緊張しすぎて手が異常に痙攣している。
「びゃあああああああ!!」
「うわあああああああ!!」
不器用にあやすサズドマから素早く奪い取り、オムツを替えてリターン。よくオムツってわかったなあ。
「だから、戻すなって…」
サズドマがしんなりしている。珍しい。あいつ、本当に赤子と子供が苦手なんだなあ………。
「わん!」
「…………雪斗?」
足元にモフモフなうちの息子??とりあえず抱き上げる。うわーい、モフモフでフカフカ……。
「ママ、ぎゅー」
「お帰りなさい、ママ。ワタシの仕事は完璧よ!」
あら、うちの可愛い子供達じゃないですかー。とりあえず、全員捕獲してよしよししよう。そうしよう。うちの子、可愛い。
「うんうん……会いたかったよう……」
あ、やべ。これは泣くわ。これ、夢かな?でも、終わらないでほしいなあ……。
「ゆき、おりこうさんしてたよ!でっかいの狩ったよ!ベーコンにした!」
「うん……」
「わたしもだよ~」
「うん……」
「ワタシは働いていたわ!」
「……雪那は何をしていたのかな?」
「ふふん!よくぞ聞いてくれたわ!」
いや、うん。うちの娘は優秀だわあ……。私がやるより仕事が早くないかしら?え?可愛い孫のおねだりでお義父様があっさり許可したし手伝った??ああ……なるほど。
まだ企画段階だった学校計画は、ほぼ実行段階へ移行。さらに計画は拡大し、世界各国の女子がカルディアに集まることになった?流石は夢。都合がいい。でもさあ、それより何より言わなくちゃ。
「ただいま……」
そこがどこであったとしても、家族がいる場所が私の家なんだ。ケビンがいて、子供達がいて、幸せだ。子供達と泣きながら眠り、どうかこの夢が覚めないでほしいと願った。
「ん………?」
そして、次に目覚めたら夢でもなんでもなく現実だったと理解するのだった。