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どうしようもないんだよ

 城下町が、みるみるうちに白く染まっていく。

 新たなる鳥?変態鳩マッスルの効果は『仲間にする』だった。敵にハグをすることで、敵を新たなる変態鳩マッスルに変えてしまうのだ。


「こけこっこーい」

「こけこっこーい」

「こけこっこーい」

「こけこっこーい」


「まさに傾国」

「それはもういいから!」


 確かに国を傾けちゃったよ!物理的にな!


「そもそも、これは私だけじゃなくポッポちゃんのせいでもあるからね!」


「くるっぽー」


 知らん顔をする変態鳩マッスルの親玉ことポッポちゃん。諸悪の根元はポッポちゃんだと思う!


「ですが、これが貴女の望み」

「どの辺りが!??」


 変態鳩マッスルによる支配なんて、微塵も望んでませんけど!??


「これなら、無血開城できます。貴女は血が流れることを望んでいないでしょう?」


「それは……まあ……」


 甘いかもしれないが、どちらにも傷つかないで欲しい。どちらにも、だ。誰にも私のせいで傷ついたり、死なないで欲しい。そんなわがままを叶えようと思ったら、これしか方法が……いや、うん。他にもあるに違いない。騙されてはいけない。だがまあ……手っ取り早い方法では、あったのかもしれない。


「さあ、我らが姫勇者様。大切な貴女の王子様がお迎えに来ましたよ」


「雪花雪花雪花雪花雪花雪花雪花ああああああ!!」


「ケビン!」


 もはや、反射だった。反射で飛び降りた。何も考えず、ケビンの声がしたから、最短距離で行きたくて。


「こけこっこぉぉい!」


 流石にそのまま落ちたら死ぬだろうから、ペンギンさんを途中で喚んだ。最短距離でケビンの所へ。


「ケビン!!」


 そんなに離れていなかったのに会いたかった。少しだけやつれたケビンに抱きつく。


「雪花雪花雪花雪花雪花………ああああああ……会いたかった。会いたかった……雪花が居なくては生きていけない」


 私の身勝手で泣かせてしまった。どうしよう。でも、私だって同じだ。会いたかった。会えて嬉しい。欠けていたものがはまるような感覚があった。


「ケビン、迎えに来てくれてありがとう。ただいま」


「ああ……おかえり、雪花」


「感動の対面に水をさすのは大変心苦しいのですが、さきほどから拍手している白い者達はいったい……」


 辛い現実に容赦なく直面させようとする副団長様。もうしばらくケビンごほうびタイムに浸っていたかったよ。変態鳩マッスル集団は、ひたすら拍手していた。怖い。


「ポッポちゃん!」


「お呼びですか?」


「副団長様に説明してください」


「かしこまりました。お初にお目にかかります。私は神の使い・ポッポちゃんと申します。くるっぽー」


『こけこっこいじゃない!?』


 いや、そこは心底どうでもいい。確かに私が喚ぶ鳥はみんなしてこけこっこいだったけど、ポッポちゃんは私が喚んだわけでは………ある意味召喚しているが……多分、ない。


「くるっぽー」


 ポッポちゃんの説明に頭を抱える副団長様。いや、うん………すいません。さらにこちらに来た経緯を伝えた。




「なるほど……わかりました。では、神託が下ったことにしましょう」


「しんたく」


 稀に聖職者がミスティアの声を聞く事があるそうだ。そしてそれは、何より優先される。


「私が今、全世界の神官に下しますか?一応それも私の仕事なので」


『……………………』


 全員が微妙な顔になった。女神ではなく変態鳩マッスルが神託をくだしていたと知ったら、聖職者が暴動を起こすのではないだろうか。


「………お願いいたします」


 副団長様は誰よりも早く復活し、お願いした。


「文章をこちらで用意しても?」


「かまいませんが、できることとできないことがあります。そこは了承してください」


「はい」


「……この文章ならば問題ないでしょう。では、私は向こうに戻り神託を下します。他に用件がありましたら、雪花様が喚んでください。姫勇者のサポートこそが私の本業ですので」


 親玉であるポッポちゃんは消えたが、変態鳩マッスルは消えなかった。


「神託を待ってから乗り込みましょう」


 副団長様の眼鏡がキラリと光り、空から雷……ではなく、光の柱がいくつも降りてきた。

 そして、光の柱の中央に巨大な美女。見覚えがあるそれは………女神ミスティア。黙っていれば絶世の美女。喋ると残念な女神様だ。


『人の子らよ、聞きなさい。姫勇者・セッカは私が加護を与えた子。何人たりとも、彼女の邪魔をしてはならない。彼女はいずれ、世界を救う。彼女の助けとなれば、滅びゆく汝らは救われるでしょう。彼女の妨げとなれば、私の怒りは解けぬままでしょう。人の子らよ、姫勇者の助けとなりなさい』


「…………副団長様」


 私は副団長様が書いた文面をチェックしなかった事を後悔した。確かに今後やり易くなるだろうが、弊害も出てくるに違いない。睨みつけたが、副団長様は満面の笑みだった。怖い。これガチギレしてるヤツ!


「さあ、城に乗り込みますよ!」


 満面の笑みを浮かべる副団長様を止められる勇者などいるはずもなく、全員で素直についていくのだった。


 あ、ポッポちゃんから変態鳩マッスル軍団の解除方法を聞き忘れた。後で聞こう。なんか変態鳩マッスルついてくるんだけど!ビビっていたらケビンが抱っこしてくれた。流石はマイダーリン。普段ならおろしてもらうが、ケビン欠乏症だったのでおとなしくひっついている事にした。


 ただいま、ケビン。ちいさくこっそり、つぶやいた。

ポッポちゃん、大活躍。

変態鳩マッスルが黙ってついてくるのは、間違いなくホラー。

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― 新着の感想 ―
[一言] 副団長すらも驚かす『こけこっこいじゃない!?事件』 うん☆どんだけ定着してるんだ雪花さんの鳥達よ(笑) 今回は珍しくまとも…まとも?に活躍したポッポちゃん!確かに無血だし、今後おんなじ様な…
[一言] 変態白タイツマッスル集団が無言で……? 「「「「くるっぽーーーー!」」」」 とか言ってついて来てもソレはソレでとてもイヤ(笑) 怖いじゃん?真顔でくるっぽーーーー!叫びながらダカダカ行進し…
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