大変なことになったよ
タイタンに来てから二週間。事件が起きた。いわゆる、クーデターという奴である。
「姫様に、女性に、自由を!」
「グルアアアアアアアアアイアア!!」
「姫様のために!!」
「ゴアアアアアアアアアアアアアア!!」
「姫様を解放せよ!!」
「ギャオオオオス!!」
「傾国のヒメサマだなァ」
「やめて」
それ、ガチでシャレにならないから。何故こんなことになってしまったのだろうか。私はただ、会話していただけなんだけど。そりゃ、帰りたいとは言ったけれども………思いきりが良すぎじゃないかしら。
現在、タイタンはクーデターなう。
異界の姫様と女性に自由をって、モフモフな騎士さん達と女性を家族に持つ貴族さんが協力しちゃったなう。
なんでこうなったなう。
いや、お姉さんは帰りたきゃ自力で帰れるんだよ。やればできる子だから、助力はいらなかったんだよ……と頭を抱えるが、後の祭りである。
「姫様、城内の八割は掌握いたしました。名残惜しいですが……旦那様に会えますよ」
彼女、ミンティアさんは公爵令嬢。本好きの変り者と称されながらも貪欲に知識と書物を求め続け、自力で呪いを解いた女傑だ。
「ケビンが来ているの!?」
「ええ……カルディア騎士団が破竹の勢いで進撃しておりまして、鎮めてください、お願いいたします!!」
「え」
思ってたんと違う。話し合いとかをすっ飛ばして武力行使??ケビンらしくない。
「まあ………」
「そうなるわなァ」
「しかたございません。王は愚かな男でございましたから。じいもこう………若奥様がどこの馬の骨かもわからぬもふ男に盗られては、ぼっちゃまが可哀想ではありませんか。なので伝を駆使して事実をちょちょいと盛って伝えました」
「じい!??」
それは夫婦の危機じゃないの!?モフモフしたいとは思ったけど、浮気になったらいやだからしなかったのに!
「ほっほっほ」
じい酷い!
「色々準備していたのに、台無しにされた腹いせでもあります」
「じいいいいいい!??」
思った以上に私情が入ってた!!
「あのじいさん、ナニモンなわけェ?」
「私の調べたところによれ…ば!?」
じいが棒手裏剣的なモノをヘルマータに投げた。危ない。
「紳士の秘密を勝手に暴露するものではございませんよ。命が惜しければ……ね」
「身分を問わずに結成された精鋭部隊、消えた銀翼騎士団の方です」
「若奥様あああああああ!??」
「し・か・え・し」
ニヤッと笑ったら、何故か全員丸まった。あ、キモかった?すまぬ。
「もう約束も終了ダロ?団長に連絡してやったら?」
「そうだね」
もはや人質云々もうやむやだろう。スノウ経由で会話してはいたが、せっかくだから声が聞きたい。
「………ケビン?」
『天使の声がする……』
何故こっちの人達は私を人外認定したがるんだ。とりあえず修正しておこう。ケビンが星になったら困る。現実を見てくれ。
「生身の嫁です」
「雪花!?雪花雪花雪花雪花雪花雪花雪花無事かケガは浮気は会いたい好きだ寂しい雪花雪花雪花雪花雪花雪花雪花あああああああ!!」
ケビンが予想外に重症だったなう。
「無事です。ケガも浮気もないです。会いたいし、好きです。早く、迎えに来て。………………………かえりたい」
「ウオオオオオオ!!わかった!今行く!今すぐ行くからな!!」
やっべ、泣けてきた。会いたい。なんか忘れているような………。頭を抱えるミンティアさんを見て思い出したが、後の祭りである。興奮したケビンには、修正がきかなかった。
「こうなったら、召喚!」
この争いを止める鳥!平和の象徴、鳩………?一瞬、キャラが濃すぎる神の使いを思い出したのがまずかったのかもしれない。
「こけこっこい!」
「こけ!」
「こけ!」
「こけこっこぉぉい!!」
白く輝く全身タイツ。素晴らしき肉体美だが、頭は鳩。鳩ではなく、変態鳩マッスルを量産してしまった。
何故だ。解せぬ。彼らは一斉に走り去っていった。私には、変態鳩マッスル軍団を呆然と送り出すしかできなかった。
「ヒメサマ、ナニアレ」
「ポッポちゃん!ポッポちゃああああああん!!」
自分のせいだと思いたくなかったので、変態鳩マッスルの親玉を召喚した。
「クルッポー。お呼びですか?」
「「「こけこっこいじゃない!??」」」
サズドマ、ヘルマータ、双子騎士がビックリしていた。そこはどうでもいい。
「ポッポちゃんの仕業でしょ、あれ!!」
「いやあ、バレてしまいましたか。心を痛めながらも使命をまっとうしようとする姫勇者様に微力ながらお力になれれば、と思いまして」
「…………どういう効果なの?」
「敵対者を仲間にします」
「…………………え?」
理解した瞬間、バルコニーに出て外を見た。
『こけこっこぉぉぉぉい!』
この日、タイタンは変態鳩マッスルに占拠されてしまったのだった。
茶目っ気爆弾が爆発しました。楽しいです。