異界の姫
タイタンに雪花さんを連れてきたお偉いさん視点になります。
今回召喚された異界の姫は変り者だと聞いたが、確かにそうだった。女なんて、甘い菓子と金品を与えておけばなびくと思ったのだが………。
「必要ありません」
ドレスも靴も宝石も、彼女は夫が与えたものしかいらないと言う。不思議な鞄から山ほどドレス類や宝飾をを取り出されれば、こちらも引き下がらざるをえない。身は一つだから、いらないと断る。
では、甘い菓子や花なら?
「結構です。私が作るものより美味しいものはありませんから。お花は他の方に。わたくし、花は夫からしか欲しくないの。あ、夫と子供たちの間違いでしたわ」
実際、彼女が作る異世界料理はありえないほど美味なんだそうだ。こちらの料理は口に合わないと自分で作っている。まさか、媚薬を混ぜたのがバレた?いや………あれは無味無臭。警戒されているのだろう。
残念ながら、菓子のレシピは取引材料だから教えてもらえなかったとボロボロのコックから言われた。なんでボロボロかって?あの姫が気まぐれで余った菓子を分けたから争奪戦になったらしい。逆に調理人が懐柔されないよう警戒するはめになった。
ならば、美しい男ならどうだ!
「自信を無くしました」
「己を磨いて出直します」
「姐さんは旦那さん以外は無理みたいです。無駄な努力はやめましょーよ」
なんと、美しい男達にも無反応。むしろ、すごく嫌そうにしていた。そして最終的に我慢ならなくなったのか、男達を床に座らせ説教をし始めた。
結果がコレである。最後の奴はなんなんだよ。もっと頑張れよ!大半は自分がいかに空虚であるか理解いたしました。美貌だけでなく内面も磨きます。自分は顔と家名だけではないと証明しますと言って休暇届を出して旅立ってしまった。
帰ってこおおおおおおい!!
いや、待て。確か異界の姫の夫は筋肉だるまの超不細工………。つまり、不細工が好みか!さらに獣人だったな!方向性を間違っていたんだ。異世界では美醜の感覚が違うのかもしれない!というわけで、選りすぐりの不細工を集めてみた。
「え………無理です」
「無理です」
「無理です。死ねと?」
「えっ、はい…………罵倒されればいいです?」
不細工のネガティブがはんぱない。最後は何?ねえ、ちゃんと私の説明、聞いていたの?聞いててそれなの??絶対、理解してないじゃねーか!
仕方がないので、頑張って説明すること、しばし。
「え……無理です」
「あの……口説いたことなんてあると思います?」
「死ねではなく、解雇ですか?」
「えっ………踏まれればいいですか?」
無理をいっている自覚はあったが、お前ら一体何があった。特に最後の奴。何をどうなったら口説けが踏まれるになるんだ!
多大なる不安を感じたが、他にまた一から説明するのも嫌なので送り出した。
おお、さっきよりにこやか…………………気のせいか?口説けと言ったやつらが接待されているような………?
「生きていて良かった……」
「天使だ……」
「女神だ……」
「ああ………踏まれる以外の幸せがあったなんて……」
お前らが陥落してどうすんだよ!!
つうか、最後の奴は何があった!?踏まれる以外の幸せって……踏まれる事は幸せじゃねーだろ!!
ただ、不細工の方が異界の姫の反応が良かったので、不細工獣人は定期的に行かせる事にしたのだが………。
「いいんですか!?」
「また天使に会えるんですか!?」
「崇めていいですか!?」
「…………鞭を贈っていいですか?」
待たんかい、最初のは二人はともかく、後半んんん!!崇めるな!そして、鞭をどうするつもりだやっぱいい聞きたくない!!
異界の姫から、この国の女に会いたい。叶えるなら女神の呪いを解く方法を教えると言われた。
まさか…………異界の姫は女好き!?稀少な女を差し出すべきか迷い、王に相談。結果として出生率が上がるなら、と差し出すことに。
「何をされるんですか?」
「生贄ですか?」
「え!?生贄!??」
下位貴族の比較的大人しい令嬢達を選んだのだが、生贄発言に怯えてしまった。
「皆様、あの御方はそのような事をいたしませんわ!わたくし達と、お話をしたいだけなのですわ!」
まあ、今までの結果から言って多分そうだろうが、なんでそんなに自信満々なんだろう。かなり無理矢理、家の権力まで使ってねじ込んできた公爵令嬢は胸を張った。
本好きの変り者で有名な公爵令嬢は、いまだかつて見たことがないほどに瞳を輝かせていた。
「ああ、生きていて良かった!まさか姫様と生でお話ができるだなんて!!」
いつの間にか、異界の姫は女性たちに大人気となり、我々すら会えないほど人気となってしまった。まだ来て一週間だというのに。
思えば、私はいくつかのミスを犯していた。小さかったミスはいつしか…………歴史に残る大事件へと発展してしまったのだ。
今日は昼休みに休めなかったので大遅刻しました。おまけに残業しました(´;ω;`)