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一難去ってまた一難みたいだよ

 ケビンが逃亡したといっても、店の周囲を走り回っているだけだ。サズドマとシャザル君の会話から、黒幕を推定できないかと喚びだしたままのペンギン君に意識を集中する。


「しっかし、コルシミノーにタイタンに、今日のはハラミン?大人気だな」


「まぁ、姫様はすごい人だからねぇ。どこも姫様が欲しいんだよ」


「さらってからが大変な気がするけどな。団長がキレたら………」


「いや、姫様も大暴れして甚大な被害を出すよね」


「「うわぁ」」


 とりあえず、失礼な二人の尻をペンギン君につついていただいた。


「痛い!?」

「イテッ!?」


「副団長様とケビンにチクってやる!上司とその嫁をネタに笑ってたってチクってやる!」


「うわ、マジ勘弁!」

「ごめんなさい、すいません、誠心誠意謝罪しますから、許してください!!」


 シャザル君の謝罪がすごかった。中身が私とはいえ、ペンギン君に土下座していた。地に額を擦り付けるガチ土下座だ。日頃の苦労がわかってしまう。ちょっと、だいぶ反省しなさい、サズドマ。


「貸し一つね」


 二人とも頷いていた。そうか、他国から……か。ならば暗殺ではなく誘拐……そのための魔法使い……なのかな?ペンギンさんとのリンクを解除した。雪那に休むよう厳命されていたけど……これは無理かもしれないなぁ。




「す、すまない。久しぶりに雪花とい………いちゃいちゃしていたら耐えられなくなった。あまり可愛いことをしないでくれ」


 いや、もっと可愛い存在が何を言うんだ。まぁ、大好きな旦那様に可愛いと言われるのは……嬉しいけども。


「特に可愛い行動をした覚えはないけど、葉っぱがついたままだよ」


 葉っぱやゴミをヒョイヒョイと拾い、気が利く店主さんが持ってきたごみ箱に入れる。あや?耳がションボリしている。


「す、すまない……汚いから……」

「私はケビンが世界一大好きなので、少しばかり汚くても気になりませんが?」


「アオン!?」


「なんならこのまま口づけします?舐めます?」


「なめっ!?ファオン!?」


 何故彼はそんなに慌てるんだろうか。


「……ほぼ毎晩私に「キャイイイン!!ダメ!それ話したらダメェェェ!!」


 マッハで口を塞がれた。恐らく言いたいことは伝わったのだろう。


「………よくやるじゃないですか。まだお風呂に「イヤアアアアアアア!キャイイイン!!」


 ややぼかしたが、まだダメだったらしい。


「そういうわけで、平気です。デートなんだもん、まだエスコートしてくれるんですよね?」


「あ、ああ。うちの妻が可愛すぎて辛い……」


 ん?なんだか周囲から『やはり女神か』とか『天使だ』とか聞こえてくる。こっちの女性はどんだけ酷いんだろう。


「まあ、姫様!」


「あ、こんにちは」


 誰だっけ?見覚えがないご令嬢だなぁ。そして、めっちゃグイグイ来るね。私はケビンとデートしてるんだがね?強引に一緒にお茶をとお願いされた。私達のデートって、邪魔が入らない日はないんだろうか。

 仕方なく紅茶をすすっていたら、見覚えがないご令嬢が話しかけてきた。


「姫様は、妊娠についてのお話もされてますのよね?わたくし、是非聞きたいですわ」


「シンプルに申しますと、男児ばかり産まれるのは女神の呪いです。解呪するには『真の自由』が必要です。ラトビア=ルマン嬢がそうしたように、己の道を得た者は呪いが解けるのです。申し訳ありません。私は今日、夫とデートなんです。二人きりになりたいの」


「ふぇ!?こ、こちらこそすいませんでした!旦那様を大切になさっておられるのですね」


 え?普通じゃね?大切にはしているけども。


「ええ。私にとって、唯一にして最高の夫ですもの。大切にしなきゃ、逃げられてしまうわ」


 たくましい身体を抱きしめる。物理的な逃亡防止のためだ。ここで置き去りにされたら厳しい。


「俺は、幸せ過ぎて死ぬのではないだろうか…」


 なんか、ケビン本人は泣いていた。解せぬ。

 あれは泣いても仕方ないよな、と呟くお客さんとなんかよくわからんが感動しているっぽいご令嬢。


「これは……確かに萌えますわ……」


 なんの話だい?お姉さん、ついていけてないよ?


「ケビンはもっともーっと私が幸せに……ううん、一緒に幸せになるんだよ。だから、今は死んじゃダメ。私と一緒に、孫とひ孫に囲まれて老衰で死ぬの」


「それは……最高に幸せだろうな」


「でしょ?」


 ケビンが嬉しそうだから、私も自然と笑顔になる。首にスリスリしたら、頭を撫でられた。


「え」


「す、すまない!可愛くてつい……」

「もっと」


「クゥン?」


「無理しすぎて疲れてるから、もっと撫でて。ケビンに撫でられるの、大好きなの」


 たまには甘えてもいいよね?首にまたスリスリした。


「ぐふぅ!!」


 ケビンが片膝をついた。なんか真っ赤になっている。嫌がってはないようだ。ケビンが悶えるポイントがわからない。


「さ、最高ですわ」


「可愛すぎる……」

「ナニアレ、天使だ……」

「羨ましい…………」


 ご令嬢は鼻血を出しているし、お客さんも悶えていた。久しぶりに、異世界意味わからないと思ってしまった。

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