謝罪されたんだよ
ケビンの温かさで気が抜けたせいか、お腹が鳴った。ケビンの耳がピーンと立つ。そして、叫んだ。
「食事!食事を用意しろ!雪花に食事ぅおおおお!!」
「恥ずかしいからやめて!」
私に注意されてションボリするケビン。かわいい。仕方ないな。超可愛いから許す。
「ケビン、私疲れて歩きたくないなぁ」
「!!わ、わかった!」
軽々と抱き上げてくれる、たくましくて力持ちな旦那様。うん、そうだ。完全に間違えていたんだ。ケビンに抱っこされたまま雪那に話しかけた。
「雪那」
「なに?」
「助けてくれて、ありがとう」
「どういたしまして。あんまり無理し過ぎないのよ。それからワタシ以上にママの補佐に相応しい人材は居ないんだから、くだらない遠慮なんかせずに頼りなさい!」
うーん、うちの娘はしっかり者だね。
「じゃあ、深雪はママを癒すぅ~」
少し大きくなった子犬…ではなく子狼モフモフがお腹に乗ってきた。
「フカモフぅぅ」
癒される!これはマジで癒される!!子狼の毛は柔らかくて幸せの感触だよ!!モフモフに癒される……!深雪達は大きくも小さくもなれるらしい。一粒で二度おいしい!おいしすぎる!!ごっつぁんです!!
「ママ!ママはゆきが守るからね!」
「雪斗………ありがとう」
雪斗は私の護衛をしてくれるらしい。すでに赤子とは思えない身体能力で、将来有望すぎると騎士から苦情が絶えないのだ。主にサズドマが困っているが、まぁよし!
「おなかの妹達も守るからね!」
「……ん?」
お腹の、妹??
「あ、ああああああああああ!??」
そういう事か!ここんとこ精神が不安定だったり、妙に身体ががだるくてケビンにひっつきたくなるのは、妊娠してたからかあああああああ!!
「坊ちゃ……旦那様、若奥様に雑炊を作ったから連れてきてくれ」
マサムネさんがおたまを片手に呼びに来てくれた。
「ああ、わかった。雪花、可愛い娘達のためにも食べてくれ」
「うん」
あたたかい雑炊は、とっても美味しかった。お腹がふくれたら、また眠たくなってきた。
「ケビン、私どのくらい寝ていたの?」
感覚からいって数時間ではなさそうだ。まさか、丸一日?
「三日だ」
「みっか」
一日じゃなく、みっか…………三日!?
「三日!??」
「お医者様とワタシの診断結果は、極度の疲労と魔力欠乏症よ。妹達のためにも、一週間は仕事しちゃダメ。パパ、ママを頼んでいい?魔力供給はパパが適任だわ。パパはママの癒しだしね」
「ああ!雪花は俺が癒すぞ!」
え?一週間休むの?この世界には看病休暇がある??嫁や子供に何かあったら仕事が手につかなくなって、とんでもないミスがあったら困るから……らしい。
「しっかり休んで、元気な子を産んでくれ」
「あうう……」
無理をしていた自覚があるだけに、反論できない。
「仕事はこのワタシがキッチリカッチリこなしてあげるから、安心して休みなさい!そして、ワタシこそママの右腕に相応しいと証明してあげるわ!!」
「無理しないよ~に~、深雪も手伝うから~、大丈夫よ~」
うちの娘達がたのもしすぎるわ。
「お、お願いします」
「ワタシはママみたいに無理はしないわ。ちゃんと下僕を使うもの。ほら、優しい上司様が馬鹿な貴女達の要望を特別に叶えてあげるわ」
『ちょ、心の準備が!』
『誰が下僕よ!』
声だけが響く。雪那は誰かと通信魔法を使っていたようだ。見覚えがある女の子達が、雪那の指パッチンと共に落ちてきた。転移魔法の応用だね。
「あ………」
「えっと……」
「その………」
「よかった!元気になったんだね!」
全員まとめて抱きしめて、頬ずりしてやった。セクハラだって?いいじゃないか、このぐらい。
「うう……」
「ん?」
あ、流石にいきなり抱きつかれるのは嫌だったのかな?うなり声かと見てみたら、泣いていた。え?そんなに嫌?撫でて撫でて、と甘えていたのに……とショックを受けた。
「ごべんなざい……」
「んん?」
何故謝罪?よくわからなくて首をかしげた。しかし、その一言がきっかけで、皆して泣きながら謝罪してきた。
お姉さん、寝起きだし頭がついていかないよ?
要約すると、彼女達は仮病を使って騙していたのを謝罪しているらしい。
「いや、本当に具合が悪い方が困るし、問題なし!むしろ、今まで独りでよく頑張ってきたね。お姉さんでよければ、たんと甘えなさい」
余計に泣いている気がするのは、何故?え?私じゃご不満??
「はぁ………流石はママ。人心掌握に長けているわね」
「え?」
「まぁいいわ。貴女達、ママを喜ばせたいなら、獣化したらいいわ」
首をかしげながら次々に獣化する女の子達。兎、猫、リス、アヒル、犬………モフモフ天国じゃないか!めっちゃ愛でた。雪斗や遊びから帰ってきたソラ君達も参入して、モフりまくった。
今日まで頑張ってきたご褒美に違いない!モフモフ最高!!