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さめない夢を見たよ

ラトビア視点になります

 私とグラ……い、イシュト、様が正式に婚約して数日が経ちました。


「お姉さま、お久しぶりですわ。私、夢から覚めませんの」


「ラトビアちゃん!?めっちゃフラフラだよ!?」


 ふらふら?あら、たしかにふらふらしていますわ。


「でも、ねたくないんです。わたし、いしゅとさまのこんやくしゃのままがいいの」


 ああ、情けない。涙と一緒にワガママな私の本心が溢れてしまう。


「しってます。これは、ゆめ。だけど、ゆめにしたくないの。だから、ゆめからさめたくないの。わたし、ぐら……いしゅとさまにあいされたいの」


 なんと浅ましいのでしょう。泣きながら『愛されたい』と願うだなんて。こんないい夢を見てしまったら、現実に戻れませんわ。


「ぐふっ!」


「あ、副団長様」


「いしゅとさま…」


 今はお仕事のはず。やはりこれは夢なのですわ。だから、たくさん甘えてもいいですよね?夢のイシュトは私を愛してくださいますもの。


「いしゅとさま、だっこしてくださいませ」

「喜んで」


 夢だからでしょうか。イシュト様は軽々と私を抱っこしてくだいました。キスまでしてくれるなんて、幸せですわ。


「う、うわぁ……」


 なぜかしら。お姉様が真っ青だわ。


「キャラほーかいって奴か…」


 サズドマ様も真っ青でウロコが出ているわ。


「えっと…副団長様!とりあえずなんでもいいから、ラトビアちゃんを寝かしてきて」


「嫌ですわ!!」


 つい大きな声を出してしまいました。でも、寝たらきっと夢から覚めてしまいますわ。眠るのは嫌!


「何故です?ラトビア」


「だって……ゆめからさめたくないのです。イシュトさまとずっとずっといたいのです」


「………姫様、婚約者が可愛いです」


「気持ちはわかるけど、落ち着け。仕方ない…ケビンを呼ぼう。昔、似たような症状によくなっていたからね!」


「イヒッ、確かに!」


 私、病気ですの?頭がボーッとしていて、ちっとも思考がまとまりませんわ。




 しばらくして、団長様がいらっしゃいました。しかし、イシュト様は私にスリスリしたりしています。これはやはり、夢ですわ。


「イシュトはどうしたんだ?」


「色ボケした団長と同じ病気だろ?キヒヒッ」


「…………………………そうか」


 団長様が赤くなってますわ。照れたのですわね。何に?今のイシュト様と以前の団長様が同じだから??芸の細かい夢ですわ…。


「ケビン、ちょっとお願いが」

「アオン?…………………わかった」


 お姉様に内緒話をされて耳がピッとする団長様…あんなにゴツいのに可愛らしいなんて…メモが必要ですわ!


「…ラトビア嬢」


「ひゃい!?」


 あ、危ない!迸る萌えの結晶を見られていませんわよね!?


「これは夢ではない。頬を軽くつねってみなさい。痛いだろう?」


 ほっぺをつねりますの?


「ラトビア、君の美しい頬に痕がついては困る。私をつねりなさい」


「イシュト…意味がないだろう」

「副団長様がおかしい」

「うあ、キモ~い」


 確かめようにもイシュト様が手を握っているから無理ですわ。あったかい手。イシュト様のいい匂い……ん?




 夢って、温かさとか匂いとかあったかしら。




 私の頭は一気に覚醒しました。本気で暴れてイシュト様の腕から転がり落ち、フカフカの上に落ちました。


「まあ、大きな………」


 フカフカな団長様が身を呈して守ってくださったようです!思いっきり乗っかってますわ!!


「すすすすいませ…痛い!」


 慌てて団長様から離れようとして後頭部を強かにぶつけました。






 痛い?





 先ほどまでのフワフワと…朦朧としていた頭が痛みという刺激で一気に覚醒しました。


「夢じゃ、ない?」


 呆然と床に座ったままの私を、イシュト様が抱き上げます。やっぱり温かくて、いい匂いがします。


「ラトビア、貴女は私の求婚を忘れたのですか?」


「忘れてなんかいません!忘れたくない、忘れられない、本当の本当に、本当なんですの?」


「私はラトビアと結婚します。本当です」


 イシュト様にギュッと抱きつけば、そっと抱き返してくださいます。


「……本当に本当なら…………く、口づけをくださいませ」


 本気で私と結婚するなら、できるは………ず……………………………長い!ちょ!長!!な、なんか舌!?舐め!??


「他人の家でナニしてんですか!」

「やりすぎだ!」

「ヒャハッ、普段キリツがどーとかいってんのにバカじゃね?」


 お姉様達に救出されましたが、それより何より、これ現実!??色々と限界だった私はそのまま倒れ……次に目覚めた私の周りには花と手紙が山のように積まれておりました。



「お嬢様、起きた!」


「おはようございます?」


「お嬢様、お嬢様ああああああ!!み、皆にも知らせなきゃ!お嬢様が起きました!お嬢様が起きましたああああ!!」


 お父様達もやつれた様子で来ました。


「ラトビアああああああ!!」

「ラトビアああああああ!!」


「お、落ちついてくださいまし!」


 私は3日も眠り続けていたそうですわ。心配をかけてしまったようです。


「ラトビア!目を覚ましたと聞きました!結婚しましょう!!」


 夢からさめても、イシュト様は私と結婚しようといってくださるのね。触れた手は熱くて、これは現実なのだと教えてくれました。

 

「…………はい。私、貴方が居ないとダメみたい」


「!!や、やったああああああ!!」


 私を軽々と抱き上げるイシュト様。イシュト様も私からワガママやおねだりもなくて不安だったそうです。

 それからお仕事を放ってきてしまったらしく、団長様に叱られるイシュト様……ちょっと可愛いと思ったのは内緒です。

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