変態達は意外と強いんだよ
順調に試合は進み、おっさんはすでに決勝に出ることが確定。準決勝でサズドマと変態が戦うことになりました。意外にも変態はかなりの実力者だったらしい。
「頑張ってね、サズドマ!勝ったらおやつあげるよ!」
「マジでぇ、頑張るぅ」
サズドマはクネクネしながら試合場に移動した。なんか変態で荒んでいたせいか、サズドマですら可愛い気がしてきた。いや、可愛いとこもあるんだよ。おやつ食べてる時とかね。
「きゅーん…」
耳と尻尾がしんなりしている。おっさん、どうした…まさか、やきもちか!?
「おっさんも次、頑張ってね」
「!!ああ!頑張るぞ!」
にっこり笑ったら、明らかにご機嫌になった。めっちゃ尻尾振ってる。おっさん、マジ可愛い。超癒される。
「ちょっとぉヒメサマ!ちゃんと見ててよねぇ!」
おっさんをもふろうとしたら、サズドマに注意された。うん、ごめんよ。ちゃんと見るし応援するよ。
「姫様、この低俗な蛇男は私が退治いたします!」
「サズドマは低俗な蛇男じゃないです!ひねてるけど、根っこは素直でいい子なんだからね!」
「…フシャー!?ヒメサマやめてぇ!」
サズドマがクネクネした。真っ赤になってた。なんかごめんよ。つうかサズドマもおっさんも、ちょっと誉められただけで過剰反応しすぎだと思うよ。
「両者、構え!これより準決勝戦を開始する!試合、始め!!」
審判の合図で、先ずサズドマが駆け出した。
「はっ!」
しかし、変態が一撃を受け止めた。変態の武器は…鞭?いや、先にはナイフがある。特殊な形状の鞭だ。近距離はナイフに切り換えて応戦している。中距離武器なのだろう。
近距離ならばサズドマが優勢のようだ。少しずつだが、変態が下がっている。
いいぞ、サズドマ!やーっておしまい!
「さて、ヒーローは必ず勝つものだ」
「……?」
変態の周囲から、青い魔力が円を描く。
「くっそ…」
明らかにサズドマの動きが鈍りだした。なんの魔法なんだろう。
「相性が悪いんですよね。サズドマは蛇の獣人だから、寒さに弱い」
「…そっか」
ガウディさんが教えてくれました。蛇は変温動物だ。彼は蛇ほどではないだろうが、寒さが苦手なのだろう。相手の変態もそれを知っているから魔法で周囲の気温を下げているのだ。
「チッ」
舌打ちして距離をとるが、先ほどまでのキレはない。変態はやはり中距離が得手であるらしく、サズドマを追いつめていく。
「ぐっうあっ!」
そして、変態はサズドマをなぶるように傷つけていく。あの武器は致命傷を与えにくく、いたぶるには便利なようだ。
サズドマの体に傷がついていく。どうにか避けようとするが、寒さで体を動かせなくなっているようだ。時間と正比例して動きは鈍くなっていく。それでもサズドマは諦めず、傷だらけになりながらも果敢に戦った。
「さ、サズドマ!もういいよ!お菓子はちゃんとあげるから、降参して!」
「んー?……マイリマシタァ」
サズドマは私をチラッと見て少しだけ思案すると、あっさり降参した。
「ごめんなぁ、ヒメサマを困らすバカに勝てなかったぁ」
珍しく、サズドマは申し訳なさそうにしていた。
「そんなんどーでもいいわ!あんたが怪我する方が嫌よ!無茶すんな!」
「そっかぁ」
サズドマはヘラっと笑った。痛々しい傷を私の魔法で癒していく。サズドマの怪我は深い傷はないものの全身に切傷があり、各部にしもやけまで出来ていた。あいつ、絶対許さん!こんなに痛めつける必要はなかったろうが!
「おー、スゲーなヒメサマ!痕もねーわ」
「本当に素晴らしいですね。切傷だけでなく凍傷まで治せるとは…」
しかし、当のサズドマはケロッとしていて私の治癒魔法に感心していた。ガウディさんまでも。そこはどうでもいいから!
「…サズドマ、頑張ったな。だが、アレは俺の獲物だ」
サズドマの頭を撫でてニヤリと笑ったおっさんは、肉食獣の笑顔をしていた。
肉食スマイルのおっさんがカッコよすぎてキュンキュンしたのは内緒である。
ちなみに、荒事に慣れててしょっちゅう怪我をするサズドマ達にしてみたら大した怪我でもないので雪花の反応は新鮮でした。
治癒魔法の方に関心がいったのは、こちらの世界の治癒魔法はせいぜい傷を塞ぐ・癒すのみ。本来治癒魔法は解毒したり、凍傷治癒はできないからです。