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とても難しい判断なんだよ

副団長様視点になります。

 きっと、初めて気になる女性ができた。初めて信頼できると思った女性に依頼して、話ができることになった。だが、私はすっかり忘れていたのだ。今まで女性にどのような対応をしてきたかを。



 だからきっと、これは私への罰に違いない。



「ら、ラトビア嬢…頭をあげてください」


 彼女にとってやや細身とはいえ武骨な自分は怖いものだったのだろうか。どうすれば安心してもらえる?団長は姫様にどう接していた??


「失礼」

「ぴゃうっ!?」


 ラトビア嬢を抱き上げて膝にのせ、片膝をついた。うむ、これで視線が合うな。ラトビア嬢は顔を真っ赤にして口をパクパクさせ、固まっている。とりあえず土下座はやめてくれたらしい。それにしても、ぴゃうってなんだ。可愛すぎる。驚いているようだが、嫌悪や恐怖はないようだ。


「すいません。そんなに私は怖かったでしょうか」


「…は?」


「団長にも、もう少し愛想よくしろと言われるのです」


 その忠告を無視し続けていたツケが今ここに。まさか気丈そうな気になる女性から怯えられるなんて想定外だ。


「いいえ、グランド様は悪くありませんわ。むしろグランド様が愛想よくされると勘違いした令嬢が争って大惨事になりますわ!」


 ラトビア嬢は私をよく理解しているらしい。実際、そういう事があったのだ。だが気になる女性には私だって愛想よくしたい。気に入られたい。できれば……好かれたい。こんな気持ちは初めてだ。ラトビア嬢を再び抱き上げてソファに座り、また膝にのせた。


「あああああの、この距離はその、適切ではないと思いますわ!」


「しかし、貴女と目線を合わせるべきだと思います。団長はまだ親しくない頃から姫様を膝に乗せていました」


「うああ、予期せぬ萌え情報…ではなく、あれは姫様が幼いと団長様が誤解していたから許されたのであって、私達にはあてはまりませんわ!せめて隣に座らせてくださいまし!」


「……もう土下座は」

「しませんわ!」


 しぶしぶラトビア嬢を隣に座らせようとした瞬間、勢いよくドアが開いた。


「ごめんね、二人とも来るの早すぎ……………お邪魔だったみたいね。じゃ、後は若いお二人で「待って!お姉様、後生ですから行かないでくださいましぃぃぃ!!」


 勢いよくドアを開けた姫様は、状況を把握するとさっさと出ていこうとした。しかし、ラトビア嬢の必死すぎる懇願により戻ってきた。


「え?無理矢理なの?副団長様、ナニをやらかしたの??」


「……土下座されたので、膝にのせました」


「ナニそれ。どうなってんの??なんで土下座?いや、むしろ土下座した人を膝にのせるってナニ??」


 そういえば、ラトビア嬢があまりにも愛らしかったから何故土下座されたかを聞いていなかった。




 店主が運んできた紅茶を飲みながら、情報を整理することになった。あの店主、盗み聞きか覗きでもしていたのだろうか。笑いすぎて震えていた。


「つまり、ラトビアちゃんは昔副団長様に声をかけて、精神的にボコボコにされちゃったと」

「違います!あれは正しい措置だったのです!私は傲慢で失礼な小娘でございました。今はもう…」


「土下座したら膝ですよ」


「グランド様のいじわるぅぅ!??」


 いやもう、ラトビア嬢可愛い。土下座されると困るが、膝にずっと乗せていたい。団長が姫様を膝にのせていたのも、同じ気持ちだったのだろう。


「二人とも仲良くなったみたいだし、私帰っていい?」


「どうぞ」

「ダメですわ!」


 私は是非二人きりで話したいのだが、ラトビア嬢は嫌であるらしい。多少見目がよくとも性格が悪い自覚がある。私など範疇外なのだろう。しかし、彼女に言い寄られていたのを覚えていないのは問題だ。そしてそれを申告すべきだろうか。彼女の罪悪感は減るが、彼女に興味がないと思われるのは困る。


「えー?なんでダメなの??」


「仲介役不在で二人きりなど、グランド様によからぬ噂がたってしまったら、悔やんでも悔やみきれませんわ!ただでさえお仕事に支障をきたすような事をやらかしましたのに、これ以上迷惑をかけることはできません!自慢ではありませんが、私は事故物件扱いでしてよ!」


 それは堂々と言ったら駄目だろう。姫様もツボに入ったらしく震えている。


「ラトビアちゃん、私がいなくなると「困ります!」


 彼女はそんなに私が嫌なのだろうか。あまりの拒否ぶりに悲しくなってきた。


「いいんですか?ケビンのお話聞き放題の機会をみすみす失うなんて」


「へ?」


「私がいては聞けないようなお話もあるのでは?ケビンの女性遍歴とか、私に会う前の話とか」

「お姉様、申し訳ありませんが…」


 彼女は自分の欲望に忠実だった。先ほどまでと違い、何かのスイッチが入ったのだろう。瞳がキラキラと輝いている。

 そして、姫様はラトビア嬢の操縦方法を熟知しているらしい。


「グランド様、聞きたいことがたくさんございます!!」


 右手にペン、左手にメモを持ったラトビア嬢に迫られる私に笑顔で一礼すると、姫様は優雅に退室した。まあ、団長についてならばいくらでも語れるから問題ない。望むところだ。私は笑顔で頷いた。

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