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意外な縁なんだよ

 そこからは普通に飲み会になって、皆と雑談していた。今日の副団長様は結構酔っているらしく、プライベートな話を色々してくれた。お母様が変り者で、侯爵夫人なのに商売をしていたこと。姉が3人もおり、ワガママで虐められていたこと。多分可愛がられていたみたいだが、副団長様的には迷惑だったようだ。

 姉達には甘いが、副団長様にはやたら厳しかった父達も嫌っていた。変り者の母は、平等に扱ってくれた。

 山ほど見合い話が来たが、お姉さん達の影響ですっかり女嫌いになった副団長様は見合いを断りまくったらしい。これにお父さん達は苦笑したが、なぜか副団長様を責めたりはしなかった。


「私だって、団長の偉大さをわかってくれる女性がいれば結婚しますよ。それをケダモノだのなんだのと…!お前らの方がよほど醜いんだよ!」


 だいぶ酔ってらっしゃる。癒し要員として雪斗を出動させた。雪斗は尻尾をフリフリしながら椅子に座る副団長様のお膝によじのぼった。


「イチュトはいいこ~。よちよち」


「………ユキト様は可愛いですね。子供は…欲しいんですがね…女が嫌だ…」


「ええと……私は?」


 一応女ですが?


「姫様は団長のよき理解者ですからね。女性でも問題ありません」


 つまり、ケビンを悪く言わない女性ならいいってことかな??


「副団長様、本好きですよね?」


「はい」


「これ、どうぞ」


 なんとなく捨てられなかった例の本を渡した。首をかしげつつも受け取って読み始める副団長様。面白いのか無言になってしまった。ひたすらページをめくっている。


「おや、イシュトは夢中みたいですね。どんな本なんですか?」


 副団長が本に集中したため任務完了と判断した雪斗を抱き上げながら考える。んんん……言いたくない。


「その…雪花と俺の………ああああああ愛物語…らしい。雪花の描写が素晴らしくてな!面白いぞ!一部事実と違うが、読み物としてはなかなかだ」

「だいぶ事実とは違いますが、等身大のケビンが書かれています。この本の著者なら、嫁は無理でも茶飲み友達ぐらいにはなれるのでは?」


「なるほど…」


 ガウディさんが副団長様のお話を補足した。副団長様とそれなりに付き合った女性もいたのだが、ケビンを悪く言ってしまい破局しまくったらしい。副団長様自身が任務優先だし、この世界の女性はかまわれて当然なのだ。もはや仕方ない気もする。


「イシュトは俺のせいで…」

「違います」


 副団長様がうなだれたケビンの頭をぺしっとして、私に本を返してくれた。そう、ラトビアちゃんの作成したケビンと私の愛物語?である。


「言い方は悪いですが、団長はいい試金石でしたよ。おかげでつまらない女をめとらずに済みました」


 副団長様いわく、副団長様が尊敬している人を理解しようともせず悪し様に貶める女達の醜さにうんざりしたそうだ。副団長様は面倒だから結婚したくないと話していた。


「で、姫様。この本の著者様に会わせてくださるんですか?いつですか?どこでですか?どんな方なんですか?この方がお好きなものはなんですか?」

「え?え??」

「どんな本を読まれるのですか?この本はどこで買えますか?頼めばサインをいただけるでしょうか?ずうずうしいですかね??」

「副団長様、落ち着いて!」


 副団長様がめっっちゃグイグイ来る!ラトビアちゃんの本は副団長様の興味をがっつり引いたらしい。予想以上だった!!


「イシュトは本が好きなんですよ。はまったみたいですねぇ。こうなると長いんですよ。頑張ってください」


 副団長様の目が怖い!恋愛小説好きとか意外だ!なんかどこが素晴らしいとか語りだしたよ!それ元ネタ私達だからやめてくれ!!


「お目が高いですね!」

「マーロさん!?」


 なんで肉食べてんの!?ナチュラルに参加していたらしい。き、気がつかなかった!騎士服まで着て擬態していたようだ。本当に何やってんの!?サボりなの!?


「いえ、ちゃんと仕事で来てますよ。姫様の慰労会ですからね。姫様に特別賞与を渡しに来ました」


「だから人の心を読まないでくださいよ!」


「はっはっは。さて、私は異界の姫様と騎士団長の恋を見守る会改め、異界の姫様と騎士団長の愛をサポートする会・会長としての仕事もせねばならぬので、暫しお待ちを。副団長殿」


「何か用ですか?」


 副団長様、マーロさんが嫌いなんだよなぁ。マーロさんのおかげで正気に戻ったらしい。良かった、と安堵できたのは一瞬だけだった。マーロさんが何故出てきたのかなんて、ちょっと考えればわかることだったのに!!


「おや?そんな事を言ってよいのですか?先程の続き…読みたくはありませんか?こちらなど、まだ上演されていない新作の台本…レア中のレアですよ」


「ぐっ!?」


「私はこの本の著者様と懇意にしておりまして…好みも把握していますよ。さあ、観念して異界の姫様と騎士団長の恋を見守る会改め、異界の姫様と騎士団長の愛をサポートする会・騎士部門の長となるのです!」


「マーロさん、無理な勧誘は感心しません」


「これは取り引きですよ。大体、これまで副団長殿が入会しなかった理由は私が気にくわないからですし」


 そうなんだ。マーロさんがトップじゃなきゃ入ったってこと?


「そういうことです。私がトップじゃなければ、ケビン殿の幸せを願う彼は入ったでしょうね。ちなみにもうお一人の副団長であるガウディ殿はすでに入っています」


「だから人の心を読まないで……が、ガウディさああああん!??」


「はい」


 いつの間に入ってたの!?どゆこと??


「微力ながら団長の恋を応援したいと、姫様が働き始めたぐらいから入ってましたよ」


「だから、人の心を読むなってばぁぁ!!」


「はっはっは」


 私の叫びがこだましたのだった。

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