変態(ロリコン)は人の話を聞けないんだよ
おっさんのお膝でまったりしながら観戦していたら、嫌な気配を感じた。
「げ」
あいつも居たのか。ど変態その1こと、ヘルマータ。というか、近衛騎士だったなんて今知ったわ。
「あれぇ、ヒメサマあいつ知ってんのぉ?」
私が顔をしかめているのを変態…サズドマが気がついた。
「…知ってる。知りたくないけど知ってる。しかも、しつこく求婚されてる」
「……うわぁ、カワイソー」
サズドマに心から同情された。うう…そしておっさんが真っ青です。
「ひ、姫様はご無事なのですか!?あれは近衛の中でも問題児中の問題児でして……」
「無事だよ。初対面で乳を揉まれたけどね。全力でぶん殴って、それ以来結界で触れないようにしてる」
「……そうですか」
おっさんは静かに微笑んだ…が、目には静かな怒りが浮かんでいた。何を思ったか、変態が宣言した。
「姫様のために勝利をささげます!」
「いらん」
変態滅びろと念を送ったが、残念なことに変態は勝ってしまった。なんてこった。
「姫様の愛で勝ちましたよ!」
「そんなものは欠片もこの世に存在せんわ。お前の愛は薄っぺらいんだよ!私の話を1ミクロンたりとも聞いてないだろうが!」
「照れ隠しだね☆て・れ・や・サン☆」
「むっがぁぁぁ!!照れとらんわ!!全力で拒否してますぅぅ!!」
「うわぁ…マジで気に入られてるぅ…ヒメサマカワイソー」
「……………だな」
サズドマとガウディさんから同情されました。同情するなら助けてくれ!他近衛騎士達も可哀相なものを見る目で私を見るなら助けてくれ!
「姫様は…アレが嫌ですか?」
「嫌。超嫌」
「アレはああ見えて高位貴族です。見目も性格にさえ目をつぶれば極上です」
「高位でも低位でも、人の話を聞かない男はお断り。そもそも性格が1番大事。地位と見た目はそこまでこだわってません」
「……わかりました」
キュッとおっさんが私を抱きしめた。
「おっさん?」
おっさんは何やら決意したご様子でした。でも私と目が合うと頬を染めて目をそらす。乙女か!しかし、おっさん効果で変態によりささくれた心が癒されていく。おっさんにはマイナスイオン的なナニかがあるに違いない。
「ヘルマータ!俺と勝負しろ!!俺が勝ったら姫様に二度と手を出すな!姫様を諦めろ!」
「騎士団長殿、アンタは私が勝ったら二度と姫様にその汚い面を見せないでくださいね」
「ちょっと待ったあああ!!それ、私に得がない!どーせ変態は手は出してないとか言って足でとか触るから!絶対ちゃんと守らないから!というわけで、この誓約書にサインを!!」
「姫様、俺は?」
「おっさんは真面目だからなくても負けたら私に顔を見せないでしょ。そうはならないって信じてるから、必要ないけど」
「姫様…!」
おっさんからハグいただきました。近衛騎士団も文句はないらしい。変態、お前味方からも信頼がないんだね。ちゃんと署名捺印させたよ。捺印は血判です。
「こら、醜い男が姫様に触るな!」
「違いますぅ、私がおっさんにベタベタしてるんですぅ!んんー、久しぶりのおっさんだぁぁ!」
ぎゅうっと抱きついてスリスリして見せた。
「ん…いい匂い…」
耳元で囁いた。おっさん、ミントの匂いが少しする。石鹸かな?首筋にすり寄りながら匂いをかぐ。
「%〆∞¥$§£¢△!??」
おっさんが真っ赤になって人語ではないナニかを叫んで固まった。
「おっさぁぁぁん!?」
「ふふ、ふふふふふ…つまり姫様は私を本気にさせて真の実力を見たいと…だから嫉妬させようと…私を試しているのですね!」
「おっさぁぁぁん!?」
変態が何かほざいているが、私は変態どころではない。おっさんを現実に戻さねばならない。私のせいで不戦敗は勘弁だ!!
「いや、単なるヤりすぎだろぉ」
「清々しいぐらい相手にされてないのに、頑張りますね。頭の内部はどうなってるんでしょうか」
サズドマとガウディさんが呆れているのでろくでもないことを言っているのは理解した。
変態は芝居がかった動きで私の側に来た。やばい!おっさんのホールドで地味に身動きがとれない!!
「姫様、さぁ私の手を…」
変態が近寄ってきた。怖い!おっさんごと結界でくるめばよかったのだが、私はパニックを起こしていた。おっさんに抱っこされているから結界が使えないと思ってしまったのである。
「い、いやああああああ!!おっさん!おっさん!!助けて!やだやだ、触られたくない!!気持ち悪い!!おっさん以外はいやだあああああ!!」
「ふん!」
おっさんは私の必死の訴えのおかげか再起動をはたし、変態の手を振り払った。
「いった…姫様は誰のものでもないのですから、騎士団長殿の膝にいるのはおかしいです!」
確かに!だがおっさんのお膝にいたい!
「い、いいえ!私はおっさんから求婚されました!つまり私はおっさんの嫁予定!婚約しているようなものです!」
「なあっ!?」
「ふぬあっ!?」
おっさんまで驚かないでよ!しかし、我ながら苦しいいいわけだ!
「つまり、私は現時点でおっさんのものなのです!ね!だから私の定位置はおっさんのお膝です!!」
「そうそう。姫様は唯一、団長殿の贈り物だけを身につけ、他の贈り物は誠心誠意説明してお断りしているしね。私もフラれてしまいましたよ」
マーロさんがウインクした。ナイスフォロー!!
「つまり、愛の試練!!」
『は?』
今、会場の心が1つになりましたよ。変態、何を言ってんの??
「姫様は、騎士団長殿から自らを救い出せとおっしゃっているのですね!!」
「違あああう!!」
「ぶひゃははは」
「これは酷い」
「うーん、流石は近衛騎士団一の問題児だねぇ」
つっこむ私、爆笑するサズドマ、顔をしかめるガウディさん、さすがのマーロさんも苦笑してます。
「ひめさま……ひめさまは俺のここここんやくしゃなのですか?」
ええと…とりあえずおっさんの膝に居たいがために言ったけど、返事保留中だけど…間違ってないよね!いや、でもできたら二人きりでちゃんとお返事したいし………あああどうしたら!?
「ゆ、優勝したら正式に婚約してあげてもよくってよ!」
あかぁぁぁん!焦ったからってなんで高飛車か!!こんなんじゃおっさんが悲し……
「わかりました!優勝いたします!キスと婚約、必ずや……勝ち取ってみせます!!」
ヤル気だああああああ!?しかもめっちゃ尻尾振って喜んでるわ!私はおっさんのヤル気スイッチを連打してしまったらしい。
おっさんは出たら相手を瞬殺した。騎士も近衛も関係なく、全て一撃である。ガウディさんも一撃である。
「いやあ、あんな殺る気の団長は初めてです。死ぬかと思いました」
「すいません!」
そして、大半の騎士・近衛騎士が怯えてしまい、棄権するという事態になってしまった。
おっさんの本気はスゴいことがわかりました。でも勝つとチラッチラッとこっちを見て『勝ったよ!誉めてほしいワン!』と目線で言ってるおっさんが可愛くてしかたないのですが、どうしたらいいですか?
お膝にいる私にスリスリしながら『くーん、きゅーん、姫様大好きだワン!』と言ってくるのですが、テイクアウトは可ですかね?
※『』内は雪花さんの妄想により補完されています。でも、多分大して間違ってないと思われます。
何故か増える変態…もう一人もそのうち出す予定です。まだこっちの方がマシだったりします。
実はこちらで求婚して返事保留は婚約に相当します。こちらでは女性がその場ですぐ断らない場合、そのまま婚約する可能性が高いためです。
おっさんは雪花が忘れていると思っていたのでびっくりしたようです。