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ある意味可哀相だったよ

 予想外に山姥…城婆??に遭遇したりメル君が引きずられたりしたけど、ようやく目的地に…………ついた??なんか、香ばしい匂いがする。誰か城で焼き肉をしているとか?いや、そんなことする馬鹿はいないか。厨房の匂いなのかなぁ。風に乗って届いたのだろう。そんなどうでもいいことを考えながら訓練所のドアを開けたら、皆さん訓練所で焼き肉してらした。とりあえずドアを閉めた。


「???」


「…まったく、アホな大人達だね。ホラホラ、姫様。とっとと入った。主役が居なきゃ始まらないよ」


「わっ!?ちょ、押さないで!」


 メル君はなにか知っているらしい。聞きたいがメル君が雪斗と繋いでない方の手でドアを開けるとグイグイ押してきたので聞けなかった。


「わっわっ!」

「大丈夫か?雪花」


 よろけたものの、立派な大胸筋が受け止めてくれた。うちの旦那様は今日も包容力に溢れています。


「大丈夫。ケビンも大胸筋も愛してる」


「!?アオン!?おおお俺もあいしてる…」


 おお!最近照れるけど逃げずにお返事をくれるようになったよね!くうっ、家ならもっとお触りし放題なのに!!仕方ない。子供達が寝静まったらやろう!


「……ママはほんとうにパパがちゅきよね…」

「なかよちね~」

「………ユキト様は本当にいい子だなぁ…」

「俺のセツナもいい子だぞ」

「黙れ色ボケ」


 メル君の毒舌にシロウ君がへこんだ。雪那がシュンとしてしまったシロウ君の腕をトントンする。


「……おにーたん、ワタチ…うれちい」


「セツナ?」


「おれのっていってもやえて、うれちい」


「……?………!!」


 どうやら無意識に『俺の』発言をしたらしくシロウ君は真っ赤になって悶えていた。それでも雪那を放さないシロウ君にニヤニヤしていたら、文句を言われてしまった。仕方ないと思うの。ほほえましいんだも~ん。




 さて、訓練所に視線を戻した。


「あ、ヒメサマ!肉あるよぉ」


「………いや、ナニしてんの??」


 ケビンに来るように言われた訓練所では、訓練ではなくバーベキューパーティが開催されていた。


「焼き肉」


「それは見たらわかる」


 なんで訓練しないで焼き肉してるんだよ。酒を呑んでる騎士までいるじゃないか。仕事はどうした。副団長様も呑んでるからいい……のか??


「わんわんわんわん!」


「アブねぇから足元チョロチョロすんなってぇ」


 雪斗を不格好に抱っこするサズドマ。雪斗は気にせず尻尾をパタパタしている。雪斗はサズドマの何がいいのだろうか。案外雪斗に気を使うし、不器用ながらも優しいからか。


「なんか、ヤナコト考えてる気がすんだけどぉ。チビは肉食えんの?」


「あまり味が濃くなければ問題なし」


「りょーかい」


 サズドマが雪斗にお肉をあげようとしたら、いつの間にか肉を焼いてたメル君が待ったをかけた。


「ユキト様。ほ~ら、メルがおいしいお肉を焼きましたよ。ユキト様が好きなカボチャもありますよ~」


「わん!わんわん!」


 肉もカボチャも大好きな雪斗は、メル君の所に走り去った。メル君が丁寧にフーフーして冷ましてから食べさせてもらう。メル君は小さく切って食べやすくしてくれている。ハグハグする雪斗、かわゆす。


「あーあーあーあー!これだからドシロートはなぁ!狼獣人の子供には、これだろぉ!」


 サズドマが持ってきたのは、皆大好き骨付き肉。


「わんわんわんわんわんわんわんわん!!」


 雪斗、大興奮。雪斗はお肉とカボチャが好きです。骨付き肉はもぉぉっと大好きです。大興奮でサズドマの周囲を走り回る。そしてもらった骨付き肉をくわえて走り回る。目が回りそうだね。


「あ、いいなぁ」


「食うか?」


 雪那も骨付き肉が大好きです。シロウ君が食べさせてくれて幸せそう。よかったね。私もケビンが色々持ってくるから食べている。うむ、いい焼き加減。


「ケビンもあーん」


「アオン?あ、あーん……」


 雪斗は走り回るのをやめて骨付き肉をガジガジしている。そして、メル君とサズドマが睨み睨あっていた。


「あのさぁ、なんなわけ?メルはユキト様のお世話係なんですよ。余計な手出ししないでほしいんですけどぉ」


「ああん?ヒメサマはオレがユキトにメシやるの、気にしてねぇし!テメェの指図は受けねぇよ!!」


 めっっちゃ険悪ムードな二人に、天使が舞い降りた。


「メユおにちゃ~、チャウドマ!けんかはめ~よ!」


「「は?」」


「ゆきは、メユおにちゃもチャウドマもだいちゅき!だかや、なかよちちてね~」


 二人の手を取り、ニコニコする雪斗。二人は明らかに戸惑っていた。


「お前なんか嫌いだが、ユキト様が言うなら仕方ない」

「…まぁ、チビが泣くとめんどぉだしなぁ」


 サズドマとメル君は睨むのをやめた。よしよし、ママも雪斗に協力しようじゃないか!


「サズドマ、はい」


「!??フシュッ!ぬあ、な、ちょ、ヒメサマああああああ!?」


 ナニをしたかって?深雪を抱っこさせただけなのだが、雪斗すら怪我させそうで怖いと思っているサズドマにとって、予想外の暴挙だったらしい。


「う、うああああああ!な、ナニコレ柔らかくてコエェ!!」


「まだ首がすわってないから、支えないと大変なことに「そんなガキをオレに渡すなよおおおお!!」


「いや、イジメられるの好きでしょ?」


「マゾにも好みはあるからな!なんでもイイわけじゃねぇっつの!的確な嫌がらせすんなあああああ!!」

「びえええええええええ!!」


 サズドマがうるさいから深雪が泣いた。


「フシュウウウ!??ユキト、これどーすんだ!??」


「よちよちみゅ~、ちゅるの!」


「よ、よちよち?みゅ~??」


 うちの子は深雪だよ。やべぇ。サズドマがよちよちとか言ってんの、やべぇ。


「その抱き方じゃ安定しないから余計怖いんだよ。ほら、これでどうかな?筋力あるから片手で安定させなよ。ほ~ら、ミユキ様の好きな鈴だよ~」


 メル君はテキパキとサズドマの抱き方を直してしまう。さらにメル君が鈴を鳴らすと、深雪が手を叩いて喜んだ。


「あきゃきゃ!」


「笑った…って、お前慣れてんだろ!?抱いてくれよ!」


 あ、気がついた。抱き方を直すとき、実はメル君が一瞬抱いたんだよね。メル君が自然に深雪を戻したから、サズドマも無反応だったけど。


「メルの虚弱さを甘く見ないでよね!いくら可愛くても赤ちゃんは重たいよ!」


 メル君…でも確かにメル君は頭脳労働派だよね。


「どうしたの?わぁぁ、ミユキ様だ。今日もかわいいね~」


 シャザル君がやってきた。深雪のほっぺをプニプニする。あ、それ私もやりたい。後でやろうかな。


「あ~う」


 にばっと深雪が笑った。


『かぁわいいぃ~』


 今、サズドマ以外の全員の心がひとつになった。しかし、サズドマはそれどころではなかった。


「シャザル、お前ガキの扱い得意だろ!これ超怖ぇ!!頼むから、頼むから抱いてくれ!!」


 サズドマは必死だ。これはガチで余裕がないやつだ。


「え?たまにはサズドマも苦労したらいいんじゃないかな」


 ブラックシャザル君が降臨しなすった。サズドマはタイミング悪く何かやらかしたらしい。


「ちょ!?シャザル!??シャザルうううう!!」


 シャザル君はニッコリ笑うと颯爽と走り去った。サズドマは叫ぶが追いかけられない。お前どんだけうちの子が儚い生き物だと思ってんだよ。


 最終的にサズドマが泣いてケビンに助けを求めることを思いつくまでサズドマはオロオロオロオロし続けた。


「ユキト様、僕チャウドマさんと仲良くなれそう」

「サズドマだっつーの!!あああもう!皆嫌いだああああ!!」


 晴れやかな笑顔のメル君とは逆に、サズドマは泣きながら走り去った。どSのメル君と、どMのサズドマ…意外と仲良くなれそうな気がしなくもなかったが、道は遠い。

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