確認をとったよ
ケビンには申し訳ないけど、今後はいくつかの計画を同時進行しなくてはならない。雪那にまたしてもワーカホリックだと叱られたが、これに関しては仕方ない。ケビン同伴でお義父様に面会を申し出た。
「ママ、じぃじのとこにいくなや、ゆきととみゆきをつえていくといいわ」
白玉を上手に作って皆から誉めまくられ、アワアワしながら雪那が言った。
「……んん?雪斗はともかく、深雪は話途中で泣いちゃうよ?」
「かわいいはせいぎよ。かわいちゃでじぃじをかいじゅうすゆのよ!」
「おおう……」
我が子が賢すぎてどうしよう。この年齢で可愛さを武器に……ん?雪斗と深雪だけ??
「雪那は?」
「ワタチはなまいきでかわいくないもの」
「いや、超可愛いよ。ママは雪那にねだられたらなんでも買い与えてしまう自信がある」
駄目な親の自覚があるが、うちの娘は可愛いのでしかたない。
「いや、そえはダメでちょ!ワタチはかわいくないったや!」
確かに普段はちょっとツンツンしているが、その分たまに甘えたときの威力がスゴいのだよ。雪斗は雪斗、深雪は深雪、雪那は雪那の可愛さがあるのだよ。
「いや、雪那は世界一可愛い」
真顔のシロウ君による可愛い攻撃!効果はバツグンだ!
「そえはもういいったや!」
と言いつつ尻尾がパタパタしている雪那がかわゆい。
「そういうわけで、我が家の最終プリキュン兵器を連れていきますかね。まあ、多分否やはないと思うけどねぇ」
あっさりと謁見許可がおり、話し合いをすることになった。しかし、お義父様が我が家の最終プリキュン兵器にメロメロで使い物にならなくなった。三人揃うと破壊力バツグンだね。
「ばぁばだぞ~」
「わんわんわん!」
雪斗はケイ様が好きらしく、ケイ様の周りをぐるぐる駆け回っている。ケイ様が変身して狼になり雪斗の尻尾を追いかけ、雪斗がケイ様の尻尾を追いかけている。バターになりそうなぐらい走り回っていて………ケイ様も使い物にならなくなった。
「ナイトメアコングの報告かな?」
じじ馬鹿を発揮するお義父様と目を回すケイ様を無視してお義兄様は話してきた。お義兄様はもう何を言われても驚かないぞと呟いていた。別に驚かせたいわけではないのだけど、申し訳ない。
「お義父様は、異界の姫がどのように国を支えるのかご存知ですよね?」
「………ああ」
返事はしたが、意識が完全に深雪へいっている。
「父上、深雪を抱っこするのは話が終わってからにしてください」
ケビンがこれはいかんと深雪を奪還した。お義父様は涙目になりケビンが怯んだが、お義兄様が睨んだのでどうにかもちこたえた。
「…はぁぁ…しかたない。話が終わればミユキたんを抱っこしてよいのだな!?して、なんの話だ?」
「父上、次はないですよ?異界の姫がどのように国を支えるのかをご存知ですよね?」
「………知っている。お前にはまだ教えていなかったな」
お義父様が辛そうな表情になった。ゆっくりと頭を下げる。
「何を言おうと言い訳にしかならぬだろう。だが、女神の呪いへの打開策がない今…他に方法がなかったのだ。何を言われようと「あ、そこはどーでもいいんですよ。女神から知らされて解決しています。私が求めているのは、そっちは許可するんで私がすることを許可してほしいんですよ」
「……姫がすること、とは?」
女神ミスティアにより作られる私ベースの肉人形。それを使う精霊達に、モデルケースになってもらうのだ。急に『自由な女性』と言われたってイメージがわかない。だからこそのモデルケース。平等を謳い、自由を体現する存在だ。
女神ミスティアが言った『自由な女性』とは、自ら道を選び進む女性を指す。今の女性達は虐待こそされなくなったが、居心地のいい檻に囚われ、子を産むことを強制されているのだ。そちらも少しずつ意識改革をしていきたい。茶会や交流を経て呪いを破る女性を増やしていく。
呪いを自力で解除した女性に話をしてもらうのもいいだろう。だが、明らかに手が足りない。だからこそ、精霊達に手伝いを願うのだ。教育機関も、そういった女性を育成するための機関としたい。
「そして、私は最後の異界の姫になりたいと思います。それが私のやりたいことです」
「よく言った!えらいぞ!流石はセッカだな!私は話なんかは苦手だが、できることがあれば手伝うぞ!本当にいい嫁捕まえたな、ケビン!」
「はい」
エンドレスぐるぐるで目を回していたケイ様はいつの間にか復活し、元気に協力を申し出てくれた。ケイ様に晴れやかな笑顔で返すケビン。なんか雪斗や雪那も得意気だ。
「……私も、できる限り助力しよう。ひとつ、聞いてもいいだろうか」
「なんでしょう」
お義兄様は真っ直ぐに私を見た。
「君は何故、こんなにも国に尽くすんだ。君にはなんのメリットもないだろうに」
「メリットはありますよ。私はここで暮らすと決めました。大切な子供達を育てる国が、いい場所であってほしいと思うのは当たり前です。それから、私がいた異世界は文明がこちらより発達していますから、制度なんかもあった方がいいものや作りたいものがあります。今の私には関係なくとも、この先を生きる子供達のためなんです。それから…女性達の扱いも納得いかなくて……」
ううん、なんだか違和感がある。目をつぶって、考えてみる。そもそもの前提が違うんだ。目を開けて、私も真っ直ぐにお義兄様を見た。
「私は、私がしたいようにしているだけです。国に尽くしてなんていません。カルディアだけでなく、ローシィアも…ミスティアースを変えたい!」
「そう、か。ミスティアースを……か。我が弟は、本当にいい嫁を捕まえたな。なんなりとお言い。助力しよう…いや、援助させておくれ」
「ありがとうございます」
遠慮なく、今後助けてもらうだろうなぁ。特に、孤児院は国営にしてほしい。農園が軌道に乗ったら、引き換えに孤児院運営してほしいんだよね。
「私の妻も、呪いを破ることができるだろうか」
「ええ、必ず」
彼女は芯が強いので、いずれ自力でどうにかできると思う。
「…姫、ありがとう」
お義父様が私の手を取り、跪いた。
「お義父様?」
「……この世界に来てくれて、ありがとう。望まずに来たのだとは知っている。だが、この国に現れたのが貴女で…本当によかった。我が国は、協力を惜しまぬ。なんなりと言ってくれ」
こうして、国からの援助も約束していただいた。とりあえず、戸籍を作ってほしいとお願いした。支援を要する規模が知りたい。貴族は問題ないけど、平民は把握に時間がかかるとのこと。
私は少しずつ、望む未来へ進んでいる。
「というわけで、ミユキたんを抱っこしてよいか!?」
「ワタチもだっこちていいわよ」
「ぬあああ!?セツナたんもじゃと!??」
「わん」
「ユキトたんまで!?」
いや、雪斗は二人がいるから来ただけで何も考えてないと思う。雪斗はお義父様の膝に前足をかけて首をかしげた。
「くぅん?」
多分、じぃじは遊ばないの?と聞いているのだろう。今日も安定の可愛さである。
「ふぬおおおおお!!」
あ、お義父様が壊れた。可愛い孫娘達を抱っこしたいけど、雪斗とも遊びたいらしい。平和な光景に、思わず笑みがこぼれた。
「父上、色々台無しです……」
疲れたご様子のお義兄様のため息が印象的でした。うちの最終プリキュン兵器がすいません。