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ボス雪花さんなんだよ

 とりあえず、失ったナニかについて嘆いている暇はない。細かいことは気にしな~い。


「とりあえず、貴方達は守護者になってもらいましょうか」


『は?』


「あ、この提案が気に入らないやつはかかっておいで。元ボスと同じ目にあわせてあげる」


 猿達がめっちゃ首を振ってた。でかい元ボスだから気絶で済んだが、普通サイズの猿がペンギンボディープレスをくらったら、死ぬかもしれない。いい見せしめになるかと思ったんだけど、残念。


『具体的には、何をしろと言うのだ……ボス』


 悔しそうではあるが、私は元ボスに認められたようだ。


「向こうに畑を作るんで、それを他の魔物から守ってほしい。タダでとはいわないよ。見返りは…これ。プクプク君!」


「はぁい」


 地面に落ちたのは、山盛りバナナ。こっちではバニャニャと言うらしいが、言いにくいからバナナで通す。


「先ずは食べてみなさい」


『うんめええええ!!』


 ボス猿はバナナを食べて泣いた。そして、バナナの虜になった。他の猿達も同じだ。猫にマタタビ、お猿にバナナ。やはり猿はバナナが好きだった。


『ばななああああああ!!』

『ばななんばななん…ばななああああああ!!』

『ああバナナ…貴方はどうしてバナナなの?』

『バナナ…もうはなさない!!』


 異世界のバナナには、なんかこう……変な成分が入っていたんだろうか?プクプク君に聞いてみたが、入ってないらしい。だが、明らかに猿達(の頭)がおかしい。バナナへの愛が溢れすぎている。


「…ええと、言うことを聞くなら月一回バナナを支給『やります!!』

『俺も!』

『おれも!』

『あたしも!』

『ボクも!!』

 以下略。


 結局、猿はバナナにメロメロになり、私の条件をすべて飲んだ。バナナ以外にも、冒険者に襲われなくなるというメリットもある。しかし、彼らは多分バナナのために働くのだろう。バナナ、恐るべし!


 これで今まで危険だからと空白地帯になっていた城壁外のエリアに畑が作れる。今までは城壁内部にしか畑が作れず、野菜や果物は高級品だった。肉はともかく、野菜と果物が足りないのだ。もしかしたら、その辺りも女児出生率低下に関係しているかもしれない。


 すでに周辺の土地は誰の所有でもないと確認済。念のためちゃんとお城で申請して土地を購入してある


「この辺りに畑を作るの」


 猿達にも見てもらった。森と壁に囲まれた人間達の住みかの境にある広大な平原。道以外に利用価値はない土地だ。


『ハタケとはなんだ?』


 お猿だから、農耕という発想がそもそもないのだろう。魔法で地面を耕し、あらかじめ育てるつもりだった芋を植えて成長させた。芋を茹でたり焼いて試食させる。ちなみにじゃが芋は茹で、さつま芋は焼いた。


『いもおおお!!』


 生でも食べてた。ワイルドだぜぇ。いや、野生の猿だった。バナナほどではないが、おいしいらしい。自分達も作りたいと話した。


 猿達と協議した結果、彼らも畑の一部を借りる代わりに農業を手伝う話になった。猿達がここら一帯を縄張りにすれば、魔物は来ないとのこと。


 でも、二十四時間体制にさせるのも可哀想だし何かスノウ辺りと考えなきゃなぁ。それから、お猿達が攻撃されないよう冒険者ギルドと騎士団…城にも通達しなきゃ。やることがてんこ盛りだね。


 今日はとりあえず報告をして、詳しいことは明日また話し合うことにした。元ボスが、多分苦笑した。


『ボスは変わってんなぁ。わしはてっきり、使い潰されるのかと思った。それがルールだ。弱ぇやつは、強ぇやつの食いものになる』


「んん…人間だからじゃないですか?私は、弱いやつにもスゴいやつがいるって知ってますから弱いからって食いものにするのはもったいないと思うんです」


『……例えば?』


「戦えないひ弱な人間でも、罠を作るのが得意とか、頭がよくて作戦を考えるのが得意とか…貴方達と同じ群れですから、強いだけがすべてじゃない。適材適所ってやつですよ」


『…ウチにも罠を作るのが得意なヤツは、いるな。上手くやれば、わしより獲物を獲ることもある。だが、わしらは異種族だ。ヒトは異種族を嫌う』


 よく知っている。人と関わったことがあるんだろうか。


「私は異世界の住人でしたから、この国の常識にとらわれない人間なんです。変り者なんですよ」


 豪快に元ボスが笑った。


『変り者か!そりゃあいい!ヒトで変り者のボス、あんたが見せる未来を楽しみにしているよ』


 私がこれからする事を応援するかのような言葉に、とても嬉しくなった。


「ありがとう。さ、皆帰ろうか。おやつを食べよう」


「…雪花、君は本当になんというか…すごいことを考えるな。報告は俺に任せておけ」


 頼りになる旦那様にお願いして、皆と帰宅した。明日からまた忙しくなると話したら、可愛い娘に叱られた。うちの雪那はワーカホリックとか、異界の言葉も知っているのがわかりました。

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