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やっぱりおっさんはかっこい……可愛いんだよ!

 今日は友人となった貴族のマーロさんに連れられて騎士団の交流試合を見に来ました。


 この国では騎士団と近衛騎士団は別組織なんだそうな。

 騎士団は平民出身者や獣人がほとんどで、仕事も町の治安維持や魔物退治など多岐にわたる。警護にあたることもある。

 近衛騎士団は貴族がほとんどで、魔法を使える人材が多く仕事は要人警護と城の守護。


 今回はこの2つから代表者が出て試合をするわけだ。おっさんは騎士団長として毎回出ているらしい。おっさん、不器用だから毎回勝っちゃって近衛騎士団の団長から恨まれてるらしい。いや、近衛騎士団の団長がおかしいよ。八百長したって仕方ないじゃん?


「あ、変態発見」


 どうやら変態も参加するらしい。私の席はマーロさんのコネで最前列だから声が聞こえたのか、変態は手を振った。私もそれに応えると、なんかクネクネしていた。なんでや??キモいよ??


「知り合いですか?」


「…可愛げのある変態です」


「……………………ブホッウフッ、フヒヒッ」


 マーロさんは美形だが、笑い上戸過ぎて残念な男性である。ちなみに可愛げがない変態はロリコン2名。いまだにしつこくアタックをかけてくる変態である。奴らには話が通じないのである。

 可愛げのある変態はわりと素直で気が利くので、いまはそれなりに仲良しだ。最近は私のとこにおやつをねだりに来る。奴は対価としておやつをおっさんに届けて手紙を持ってきてくれている。ギブアンドテイクな関係である。誉めるとクネクネ…あれは照れてたのか。

 さっきの謎行動の理由がわかってしまった。確かにあいつ自業自得な面も多々あるけど、やたら嫌われてるからなぁ。あいつに手を振りかえす人間って私とシャザル君以外に居ないのかも。


「あ………」


 おっさんが居た。あれ?おっさん泣きそうだ。なんで??


「おっさ……団長さん、カッコいい!!絶対勝ってね!!」


「………!?」


 おっさんは某トト□の如く足➡頭の先まで毛先がビビビビーンとなった。そんなにビビらなくてもいいじゃないか。手を振ったらはにかみつつも応えてくれた。

 か、可愛い……いや、鎧姿で真っ直ぐ前をみるおっさんは凛々しい。彫りの深い顔立ちに、たくましい体躯。外見は文句なくカッコいい。しかし、はにかむ様が可愛くて仕方がない。あんなにでかくてゴツいのに……おかしいなぁ

……


「交流試合は勝ち抜きトーナメント制なんですよ」


「へー」


 マーロさんと話していたら、視線を感じた。あれれ?またおっさんが泣きそうじゃないか??


「ふふふ、わかりやすいですねぇ」


 マーロさんはニヤニヤしている。なんか悪いこと考えてます?


「ちょっと失礼」


「?」


 マーロさんに抱き寄せられた。何??キョトンとする私。おっさん…真っ青になっている。んんん??


「嫉妬しているんですよ、貴女の側にいる私に」


「ひょわああ!?」


 耳元でイケメンボイスは反則ですよ!耳元を慌ててガードして距離をとろうとした。


「姫様!!」


 おっさんが私に両手を伸ばしていた。迷いなく柵を飛び越えておっさんの腕に飛び込む。もはや反射だった。


 おっさん、ちょっとパサパサだ。やはりこないだ会ったときは念入りにお手入れしてたんだね。


「姫様…お願いがあるんだ」


「なぁに?」


「も、もし優勝できたなら……姫様のき……キキキキキキキキキスが欲しい」


 おっさん、どもりすぎだ。


「……ほっぺ?口??」


「!??へええ!?ほほほ!頬でお願いします!」


「いいよ。今?」


「か、勝ったらだ!!」


「……うん」


 おっさんの首にスリスリしてうっとりする。そして、今そんな状態じゃないわと気がついた。け、けどまぁ私はおっさんにメッロメロアピールになったよね?

 マーロさんが親指立ててました。ありがとうございます。


「姫様はこちらに」


「いいの?」


 客席ではなく、戦う騎士達がいる椅子に座らされた。


「あちらでは俺の気が散る。ここに居てくれ」


「…ヤキモチやいちゃって?」


「ぐっ!?…そ…そうだ。嫉妬で気が散って試合どころではなくなってしまうだろう…だから、頼む」


「じゃあいい子で待ってるから、早く勝ってね」


 はああああ、おっさん可愛い…!真っ赤だよ!ああん、ぎゅーしてチューがしたい!試合、早く終わらないかなぁ?おっさんはフラフラしつつ整列場所に戻った。


 あ、なんか近衛に文句を言われてるっぽいな。私は席を立つと、おっさんの腰にしがみついてウルウルしてみせた。コラ、おっさん喜ぶな。尻尾が振りまくられて私に当たってるじゃないか。もふっちゃうぞ?


「試合を中断してごめんなさい…」


「…うちの姫様を泣かすとか、死んどく?焼け死ぬ?感電死?いや、苦しんでのたうち回るような『お気になさらず!異界の姫様は悪くありませんから!!』


 私の頼もしい精霊さんにより、近衛騎士団は説得(脅迫でも可)されました。ピエトロ君たら沸点低いんだからぁ!でも誉めちゃう!





 そして、試合は開始された。初戦は変態対近衛騎士。変態は強いから、アッサリ相手に魔法を使う暇を与えずに勝った。

 変態はフットワークが軽く中距離で投げナイフ、近距離で双剣を扱っていた。


「よくやった、変態!」


 私はおっさんの膝上である。椅子がないから仕方なくでなのである。私から乗ったのではなく、おっさんが乗っけたのである。観戦しつつ、さりげないおっさんのモフサービスを堪能している。持ってた櫛で毛づくろいしたので、素晴らしいモフ心地だ。


「イエーイ」


 変態とハイタッチする。


「次、団長だよぉ。色ボケし過ぎて負けないでねぇ」


「ぬかせ」


 ニヤリと笑ったその表情はワイルドイケメンでした。うああああ、カッコいい…!


「姫様、行ってきます」


「行ってらっしゃい。怪我しないでね」


「そんなヘマはしませんよ」



 瞬殺でした。



 審判が両者、構え!試合開始!と叫んだ。


 おっさんが消えた。


 おっさんが現れた。


 相手が倒れた。


「え?」


 マジで目にも留まらぬ速さでしたよ!?何が起きた!?とオロオロする私と審判。


「団長、珍しくマジだねぇ」


「そうなの?」


「うん。ちょっとでもヒメサマと居たいからじゃね?」


「マジか。本当にそうならときめくな」


 そんな会話をしていたら、おっさんが戻ってきた。


「戻りました」


「お帰りなさい」


「た……ただいま」


 はう…おっさん可愛い。しかもお帰りなさいとか新婚みたいじゃない?しかし、おっさんがちゃんと戦ってるのを初めて見たけど、すごくどころか人外レベルだったということをしりました。それを見てもおっさんが可愛い私は、危機察知能力がないんですかね?


「くぅん?」


 首をかしげんな!ふああああ、可愛い!でかくてゴツいけど、全体的にかわゆぅぅい!!


「おっさぁぁぁん!」


「きゃいん!?くーん…」


 そして抱き合う私達。


「あのな、ヒメサマ。今試合中な?ちゃんと見ようぜ。団長も試合してるガウディサマがかわいそうだから応援な?」


 既に試合が始まってて、狼の獣人さんが頑張って戦ってました。

 可愛げのある変態から大変まともなお叱りをうけました。


「「ごめんなさい」」


 私達は素直に謝罪した。後でガウディさんとやらにも謝罪しました。


「お気になさらず。いつも辛い思いをされていた団長が、こんなに幸せそうなんです…むしろもっとなさってください!団長、姫様を放してはいけませんよ!こんないい嫁、今後絶対出てきませんからね!!姫様を逃したら、アンタ一生独身童貞ですよ!!」


「ふぬあ!??」


「返事!」


「わわわわわわわかった…し、しししかし俺は姫様によよ邪な思いは…」


「連れてきた男から奪って、誰にも盗られないように膝から下ろさないぐらい溺愛してるくせに、カワイコぶらないでくださいよ!そしてキスをねだる時点ですでに邪です!」


 ガウディさん、厳しい。でもおっさんはその可愛さがいいんだよ。


「ぐっ……」


「あはは…まあ、たまにはおっさんにご褒美をってことで。私は嫌じゃないし」


 むしろしたいし。すると、ガウディさんが泣いた。


「団長を…団長を末長くよろしくお願いします!この人がこんなに幸せそうな表情をしたのを初めて見ました!!この人を幸せにしてあげてください…こんな見た目で子供には泣かれ、女性からは虐げられていましたが、孤児を率先して引き取ったり行き場のない奴を騎士団で働かせてやったり…いい男なんです、見た目以外は!!」


「はい…頑張ります!」


「びみょーにガウディサマ、団長落としてねぇ?」


「なんだか複雑だ…」


 ちなみにガウディさんは副団長だったらしい。ちなみに可愛げがある変態がガウディサマと呼ぶのはもう一人副団長がいるからなんだそうな。後に私は、彼を騎士団のオカン的存在と呼ぶようになる。

 この時点ですでにオカンのようだと思ったのは内緒である。

 長くなったので切りましたが、それでも長い不思議。


 試合はまだまだ続きますよ。

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