うちのプリンセスなんだよ
深雪を出産してから、一週間が経った。深雪のベッドには常に誰かがいる。今の当番はカイン君。深雪が泣くとおたおたするものの、手際は悪くない。
「可愛いなぁ…」
「すげーもちもち」
「あっ笑った!」
『可愛いなぁぁぁぁ…』
なんか、少年達に大人気の深雪。みんな初めて見る人族の赤ちゃんに興味津々だ。
「あかちゃんってかわいいわよね…」
雪那はシロウ君が深雪にとられないか不安で仕方ないらしい。
「ちょっと来い」
シロウ君がふてくされた顔で雪那を抱っこした。
「…セツ姉、セツナ借りてく」
そして、別室に連れていった。気になったのでちょいちょいっと使えるようになった風魔法で盗み聞きしてみる。
「…セツナが一番可愛い」
「きゅうん!?」
「俺のセツナが世界一可愛い。可愛くて可愛くて仕方ない」
「………くぅん…」
あ、甘ぁぁぁい!!ちょ、シロウ君!イケメン過ぎですよぅぉぉ!!
悶えていたら、深雪が泣き出した。全員トト□みたいにビビビビーンと尻尾や毛を逆立たせる。
「あ、あわわわわ!ミユキ様!?よ、よちよち~」
カイン君が抱き上げた!
「………う、ぎゃあああああん!」
少し効果があったが、また泣いた!
「べ、べろべろば~!」
牛獣人の少年、ギュスター君がべろべろば~をした!
「ぎゃあああああん!うぎゃあああああ!!」
深雪はさらに激しく泣き出した!!
「みゅ~、おなかちゅいたの~?」
「ミルクか!?ひ、姫様!頼む!」
「はいはい」
深雪におっぱいをあげると、うとうとと寝てしまった。授乳用ケープで胸を隠す。服も授乳用だから、すぐおっぱいをあげられるようになっている。これは売れる!と商人さん達が喜んでたよ。
「深雪が泣いていたようだが、ミルクか?」
ケビンはミルクの間隔を把握しているらしく、冷凍ミルクを持ってきていた。
「もう大丈夫だよ。ケビンパパには、深雪の相手よりお願いしたいことがあるんだけど」
「ワオン?なんだ?」
「頑張って妹の面倒を見てくれている優しい雪斗お兄ちゃんと遊んでほしいの」
「わかった」
雪斗は深雪の側で、ここ数日頑張って面倒をみている。泣けばペロペロして慰めたり、おむつの時は率先して持ってきたり、ミルクの時は私を呼びに来たり。
今まで一番小さかったのは雪斗と雪那だった。皆から可愛がられていた。しかし、深雪が産まれてからは皆の目が深雪にいってしまった。そこで深雪に怒ったりしないのが偉い。
雪那はシロウ君がとられることを不安がっているが、彼女なりに深雪を可愛がっている。
そんなおりこうさんな雪斗だからこそ、パパに遊んであげてほしいのだ。
「雪斗、パパと遊ぶか?」
「わん!」
雪斗はボールを持ってきた。お気に入りの、鈴入りボールだ。
「ボール遊びか」
「わん!」
そして、庭でひたすらに投げるケビン。キャッチしたりボールを追いかける雪斗。興奮しすぎて顔が残念なことになっているが、これはこれで可愛い。
走り回ったり転げたり、うちの雪斗は元気いっぱいだね。お、ナイスキャッチ!ケビンが投げたボールを空中でキャッチした。
「雪斗、上手!かっこいい!」
「わん!わんわんわん!」
大興奮でぐるぐると駆け回る雪斗。か、可愛い!ちょっとドヤってる!
しかし、このボール遊びはいつまで続くのだろうか。ケビンは我慢強いのでひたすらに付き合っている。
「あれ?ユキト、ボール遊びか?」
「なあなあ団長、俺らも混ぜて!」
ちょっとおやつを作っていたら、人数が増えていた。ルールも変更したのか、ボールをかごに入れて、かごから大量のボールを投げるというか、ふりまく感じ?そのボールをかごに戻す子供達。
もふもふ達がボールを追いかけて走り回る姿は、もふ可愛い。
「めずらちいわね。ぱぱがゆきととあちょぶなんて」
シロウ君に抱っこされた雪那が戻ってきた。
「いや、最近深雪にかまってばっかりだったから、雪斗にご褒美だよ」
「なゆほど」
「というわけで、ママは全力で雪那にかまおうと思います」
「………え?」
シロウ君から雪那をもらい、ぎゅーっとしてスリスリしまくってやる。
「きゅん!?きゅふふ!?」
「ああああああああ、可愛い!うちの雪那、超可愛い!」
そしてモフモフな耳も甘噛みしてやる。獣人の愛情表現なんだって。
「きゅふふ、くちゅぐったいわ。ママ、くちゅぐったいったら!」
「わはははは!可愛がってやるわああああ!!」
嫌がるふりをしながらも、尻尾がご機嫌にフリフリしてるから喜んでるのはバレバレなんだからああああ!!うちの子可愛いったらありゃしない!!
「きゅふふ!きゅうん!」
大人びていたって、まだ子供。なでなでスリスリ攻撃で、ご機嫌な雪那。親子のスキンシップって大事だよね!
深雪にばっかりかまってたから、ここぞとばかりに雪那をかまいたおしたのだった。