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万全のサポート体制なんだよ

 ようやく末っ子ののんびり屋が産まれ、一日入院してから我が家に戻りました。雪斗と雪那の出産はこう…楽だったんで今回は本当にしんどかった!二人は異世界基準なのかすぐに自力で動けるぐらい育ったけど、のんびり屋は私の常識と同じ赤ちゃんだ。まだ目も開いてない。


「雪花、俺が抱くか?」


「首がすわってないから気をつけてね?ほら、パパでちゅよ~」


「……くび?」


「先生も言ってたけど、まだ支えてあげないと折れ……ケビン?」


 ケビンがガクブルしている。抱きかたを教えてあげた。人間の赤ちゃんなんて、遠目でしか見たことがないらしい。おっかなびっくり抱っこするケビンに笑ってしまった。






 ちょっと意外だったが、屋敷でもそれは同じだった。皆獣人の赤ちゃんしか見たことすらないらしい。


「うわあ!ちっちぇえ…」


「わ!おれの指握った!こ、これどーすんだ!?」


 皆赤ちゃんに興味津々だ。獣人の赤ちゃんとは違うもんなぁ…。


「まさか人族の赤子がこんなにもか弱き存在だとは思わなかった。獣人は赤子がある程度動けなければ死ぬからなぁ…」


「シビアだね…」


 だが、納得した。獣人は過酷な生活をしていたからこそ、産婦も赤子も動けないと生きられなかったのだろう。その結果出産も軽く、子供も動けるようにならざるをえなかった。

 しかし、育児初心者だけだと不安だなあと思ったら、カダルさんが…輝いていた。


「ふっ、育児ならばお任せを!」


「メルも大丈夫だよ!」


「えっと……少しなら…」


 カダルさんはもはやプロ。いや、ある意味プロなのかな?抱き方も上手い。メル君も意外に手際がいい。カイン君はややおっかなびっくりだが、多少世話をしたことがあるそうだ。


「う?」

「ゆきらよ~」

「やっとでてきたわね」


 雪斗と雪那もご挨拶している。さて、名前をつけてあげなきゃね。もう名前は決めてあるんだ。


深雪(みゆき)、これからよろしくね」


「あっだ~!」


「笑った!」

「かわいい!」


 皆して深雪にメロメロです。うおお、マジで可愛い!流石は赤ちゃん。可愛さだけで生きている存在だ。






 そして、深雪との生活が始まったのですが…日本(むこう)の先輩のお言葉を思い出した。


「いや~、子供ってさぁ妊娠してる間はいいけど出産してからがマジ大変なんだよ。寝れねぇの!」


 生後間もない赤ちゃんは、3時間おきぐらいに起きて授乳しなきゃいけない。つまり、眠れない…のだ。うとうとしていたら、深雪の泣き声が………止まった。


「はいはい、姫様が起きちゃいますからね~。ケビン様、そちらを温めてください。温度は人肌ですよ」


「うむ!任せろ!」


「声が大きいですよ。姫様を寝かせてあげたいのでしょう?」


「ぬ!?あ、ああ。すまないな…」


「かまいませんよ。姫様は起きなかったようですから」


「いや、それだけではない。こんな深夜にも我が子の面倒を見てくれて…感謝する」


「我々は姫様が快適に過ごせるようにするのが務め…つまり仕事の範疇ですから、お気になさらず。うん、適温です。たまにはケビン様が飲ませてあげてください」


「…ああ。赤子とは、本当に愛らしいものだな…。獣人の赤子とはまた違う愛らしさがある」


「…同感です」


 二人が穏やかに笑っている気配がした。ここ数日、ろくに寝れていなくてぼんやりしている。眠すぎて動けない。世の中には眠らせない拷問があると聞いたことがあるが、眠れないってマジきつい。

 ケビンは今日から育児休暇を取ってくれて、私の負担を大幅に軽減してくれた。夜間は交代制でカダルさん達もサポートしてくれており、彼らのおかげで私の負担は日本のお母さん達より軽いはずだ。だから…頑張らなきゃ……と思うが、体が動かず寝てしまった。


 ちなみに母乳は搾って冷凍した奴を解凍して飲ませている。こっちに女性が少ないので、男性が子守りをするための知恵らしい。哺乳瓶もあるし、粉ミルク的な栄養補助剤もある。

 こっちでは基本複数いる夫が交代制で仕事を休んで育児に当たるのが常識だ。裕福な家はベビーシッターを雇う場合もあるらしい。日本よりもこの世界では育メンが普及している。






「んん…」


 深雪の泣き声で目が覚めた。眠たいがフラフラしながら声のする方へ移動する。


「ぎゃああああ!うああああん!」


「きゅうん?」

「メユたん、おむつらって」


 深雪の側には雪斗と雪那がいて、雪斗は泣き止ませたいのか深雪をペロペロしている。


「はいは~い。きれいにしようね~。セツナ様がいるとなんで泣いてるかすぐわかるから助かるよ~」


 起きたら、すでにメル君が深雪のオムツを換えてくれていた。


「あ、おはよ~姫様。今は僕が当番だから、もう少し寝ててい~よ。出産も初産てキツいらしいし、疲れてんだよ。旦那様~、姫様寝かしつけてくださ~い」


「わかった」


「ひゃ!?」


 ケビンに抱っこされてトントンされてしまう。ぬああああ、この温もりと匂い…!強烈な眠気に抗えない。


「ママ、むいちちゅぎよ。がんばいちゅぎはよくないわ。パパ、ママをねかちぇてきてね。みゆきはワタチたちがみてゆかや、だいじょうぶよ」


「わん!」


「そうですよ~。むしろ、一緒に寝てきてください。皆ミユキ様の面倒を見たがってますし、姫様のクマがすごいです。独りで頑張りすぎる悪癖があるようですから、力ずくでも休ませてくださいね!今の時間はメルもちゃあんとミユキ様を見てますから、お任せを」


 メル君が可愛くウインクした。なんと頼もしいんだ、メル君!


「みんな……お願いします……」


 その言葉を最後に、私は寝落ちした。

 ちなみにこの世界では、女性は育児をしません。産んだら次を妊娠するために通常生活に戻ります。

 夫が複数なのはローテーションで仕事→育児→子作り→休みを回すためでもあります。育児休暇取得が普通だったりします。明らかに外見が自分の子供でなくとも、可愛がるのが普通です。

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