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頑張りすぎなくていいんだよ

 皆が落ち着いてから、改めてお礼を告げた。どの話も獣人や赤へのイメージアップを目的とした内容だったからだ。


「お姉様!頭を下げないでくださいませ!私はやりたくてやったのですわ!」


「ラトビアちゃん…」


「私、お姉様に恩返しがしたいのです。お姉様のおかげで、私はつまらないワガママ令嬢から『私』になれたのですから!それに、騎士団長様とお話しする機会があったのですが…あの方こそお姉様に相応しい素晴らしい殿方でしたわ!私は私の意思で、お姉様と騎士団長様を応援いたします!」


「ラトビアちゃん……」


 出会った頃とは全く違う。凛として、真っ直ぐに私を見ている。これがきっと、本来のラトビアちゃんなんだろう。ラトビアちゃんのまとう光が消えて、ラトビアちゃんは首をかしげたが私に向き直った。


「と、とにかく!私は自分の望みのままに動いているのですわ!私、自分の書いたものを誰かが喜んでくれて嬉しかった。女性には学はいらないと言われておりましたが、認められたような気がしましたの」


 他の人たちも頷いた。そうか…男性は獣人や貧民ばかり。そして女性。内容は全て小難しい実用書ではなく物語だった。


「…うん、どれも素敵なお話でした。またいつか、選ばなかった方達のお話も読ませていただきたいと思います」


 皆満足した顔で退室してくれた。また読んでほしいと声をかけてくれる人もいた。


「さて、ここからは我々の仕事ですな」


 穏やかに微笑むショーンさんが現れた。え?どういうこと??いつからいたの??


「お姉様、なんでもかんでも独りで背負い込まないでよいのです」


 私の手を、ラトビアちゃんが優しく握った。真っ直ぐに私を見つめる瞳は、強い輝きを放っている。


「本による獣人や赤い色のイメージアップは私とショーン様、それからマーロ様に任せてくださいまし!立派に勤めあげてみせますわ!お姉様には別の仕事があるのでしょう?お姉様、私に任せてくださいませんか?」


「………そっか」


 日本にいた頃からの悪い癖。数少ない友人にも言われてた。自分でなんでもかんでも抱え込むな、ちゃんと頼れって。

 あ、やば。なんか泣けてきた。年下のラトビアちゃんにまで心配されるとか情けない。でも、嬉しい。私の友人が頼もしくて優しい。


「お姉様!?」

「おやおや」


 ラトビアちゃんがオロオロしている。ショーンさんは涙の理由がわかるらしく、のんびりした様子だ。


「ラトビアちゃん…ありがとう。ラトビアちゃんに…ラトビアちゃん達にお任せするね」


「はい!」


 ラトビアちゃんはこの日一番の笑顔を見せてくれた。私は上手く笑えていたかな?ラトビアちゃんと会えて、本当によかったと思う。


「さあ、今日はお姉様はお休みですの。私とゆっくりお茶をしましょう。ショーン様もいかが?」


「おや、よろしいのですか?ではお言葉に甘えてご一緒させていただきましょう」


 以前も思ったけど、ショーンさんは話上手だ。雑談と商談を混ぜ、関係ない相手(わたし)も退屈させないとかすごすぎる。本人にそう言ったら、苦笑しながら話してくれた。


「私としましては、話術は商人の必須技能と思っております。まず商いは、話を聞いていただかなくては始まりませんし、信用がなければ長続きしませんからねぇ。正直、同じ値段なら話しやすい方を選びますでしょう?誰だってどうせならきちんと説明をしてくれる、信頼できる相手と取引したいですよね?」


「「確かに」」


 とても説得力があった。ショーンさんは商談をやめて雑談をし始めた。


「それにしても、姫様のご息女は実に聡明ですなぁ」


「はい?」


「おや、ご存知ありませんでしたか…失言でしたな」


 苦笑するショーンさん。雪那が聡明?すぐに閃いた。


「まさか、うちの子がラトビアちゃんとショーンさんに頼んだのですか!?」


「んんん…困りましたねぇ」


 ショーンさんの反応に、それが正解なのだと理解した。


「ショーン様の一言でそこまで理解されるなんて、流石はお姉様ですわ」


「いやいや、そもそもショーンさんとラトビアちゃんが直接やり取りしてるのが不自然だったし、もっと早く気がつくべきだったよ」


「セツナ様を褒めてあげてくださいましね。お姉様の体調を心配して、私に頭を下げましたのよ。ご子息も一緒に。可愛らしかったのでどちらも抱きしめてしまいましたわ」


「………うん」


「私にもお二人で頼みに来られましたよ。いやはや、将来が楽しみですなぁ」


 心がぽかぽかする。私、本当に幸せだなぁって思った。それから私のお手製スイーツとお茶を楽しんだのだった。

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