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崇められたよ

 チョコレートファウンテンを楽しんでいたら、他の方達も来て大人気になった。皆幸せそうでいいことだ。


「セッカ!わたくしも来たわよ!あら、これは?」


 チョコレートファウンテンに興味津々なシフォンちゃん。説明すると楽しげに全制覇するわ!とはりきった。とても可愛いです。


「あら…ケビン殿もごきげんよう」


「ああ、妻と仲良くしていただき、ありがたい」


「どういたしまして。ふふふ、なんなら我が国に移住してきてもよくってよ」


 ケビンは苦笑した。


「気持ちだけ、いただいておこう。俺はこの国に大切なものがたくさんある」


「……やはり、わたくしの美しさに反応しないのね。いい旦那さまね」


 優しげに微笑むシフォンちゃんに同意した。すっごく嬉しい!


「そうなんです!浮気も目移りもしないし、超絶可愛いんですよ!しかも包容力があって、私のワガママも受け入れてくれて…デロンデロンに甘やかしてくれるんです!さらにさらに!頼りになるんですよ!私が妊娠して魔法を使えなくなった上にばば…化け物に襲われた時、私は『ケビンが絶対助けてくれる』って信じてました!実際、物語の騎士様みたいに颯爽と助けに来てくれたんですよ!!すっごくカッコいいんです、うちの旦那様!!」


「キャー、素敵!!それはときめくわね!!」


 シフォンちゃんと仲良くキャッキャしていたら、シフォンちゃんが後ろを見た。


「で、いつまで隠れているつもりですの?」


 しばらく待ったが反応がないので、背後のテーブルクロスをめくった。テーブルクロスの下には、可愛らしいお嬢さんがいた。


「無理!無理無理無理無理!無理だから!!超無理だから!!」


「ショコラ!チャンスだって言ってたじゃない!わたくしはともかく、貴女はめったに来れないのよ!?」


 のそり、とショコラちゃんとやらはテーブルクロス下から出てきた。


「………シフォン」


「なんですの?」


「シフォンは神に普通に挨拶できるの!?あんな素晴らしい話を書ける天才だよ!??緊張して喋れるわけがない!!あわよくば御言葉をいただければとは思ったよ!ああ思ったさ!!でも、普通にトークするとかいきなり難度高すぎだから!引きこもりと人見知りをこじらせまくった私をなめんなよ!!」


 最後、逆ギレしていたよ。シフォンちゃんは隣国の王女様なんだが、いいのか?

 シフォンちゃん本人は怒ってないようだが、呆れているようだ。


「……彼女はショコラ。一応わたくしの従姉よ。見ての通り、対人能力が致命的なまでに低い引きこもりよ」


 本人を前にしてるのに、容赦ないシフォンちゃん。言われた本人は、机の影でチラッチラこっちを見ている。昔のケビンみたいだ。


「ええと、ショコラさん?こんにちは」


 ご挨拶してみたら、えらい勢いで逃げられた。え?私嫌われてる??





「御言葉を賜り、ありがたき、しあわすえぇぇぇ!!ヤバイよ、シフォン!!私、神にご挨拶されたああああああ!!」


「わたくしなんて、セッカの友達ですのよ。挨拶など当たり前ですわ!」


 シフォンちゃんがオーッホッホッホと高笑いする、リアル高笑いなんて初めて見たよ。

 そして、私と友人だなんて別に自慢できる事じゃないと思うよ?


「ぐふっ!」


 何故かダメージを受けるショコラちゃん。シフォンちゃんに友達がいたのがショックだったとか?


「憎憎憎憎…羨ましいぃぃ!!シフォンみたいな見た目はよくてもワガママ意地悪娘の友達ができるなんて、正に神!!!」


「んん??別にシフォンちゃんはワガママでも意地悪でもなくて、素直で可愛いよ?」


「セッカ、大好き!」


「わ」


 シフォンちゃんからハグされた。美少女からのハグ…普通に嬉しい。


「か、神に抱きつくとは…シフォン、羨ましい!!間違えた!神…じゃなかったセッカ様に失礼でしょう!!」


「お前が言うの?セッカは嫌がってないわよねぇ」


「正直、普通に嬉しいですが…」


 私は背後で悲しげに鳴く夫を指さした。


「うちの旦那様が友人ができたから祝福すべきなのは理解しているけど、自分以外が抱きつくのは嫌で複雑な想いをこめて鳴くから困ってはいる」

「的確に人の心を読まないでくれえええ!!」


 いや、心なんか読めないよ。今までの経験から来る予測だよ。ケビンは叫ぶと逃亡した。そんなシャイなとこも大好きだよ。シャイなマイダーリンの背中を眺めていたら、いつの間にかショコラちゃんが近くに来ていた。


「………セッカ様………」


「はい?」


「ファンでしゅ!!シャインくだしゃあああああぃ!!」


「んん?」


 シャイン??え?私は発光体ではないよ??よく見たら、ショコラちゃんは私が書いた絵本を差し出している。あ、サイン!ご丁寧に羽ペンとインクまで!


「サインでいいのかな?」


 めっちゃ頷かれた。首が疲れないかしら。本にこっちの字で『セッカ=カルディア』と書いてあげた。


「ありがたきしあわすえぇぇぇ!!家宝にいたしましゅうううう!!祭壇に飾って、毎日拝みますうううう!!」


「いや、普通に読んで欲しいな…」


 なんか新興宗教みたいでヤダ。拝んでも、特にご利益ないからね!というか、予想外すぎて祭壇についてつっこめなかったよ!!


「大丈夫ですうううう!!保存用、読書用、布教用がありますからあああああ!!」


「…布教用とは?」


 宗教っぽいからやめてほしい。布教て。


「はい!知り合いに貸したりして、着々とセッカ様のファンを増やしております!!」


「…………おかげで、ショコラの引きこもりが多少改善されたわ。ありがとう、セッカ」


「どういたしまして??」


 私が混乱していると、何やらパーティ参加者達が列を作っているのに気がついた。皆、そわそわしつつ私の絵本達を持っている。


 ケビンが逃亡していたせいもあり、普段より話しかけやすかったのだろう。パーティがサイン会になってしまったのだった。私の右腕が筋肉痛になったのは言うまでもない。

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