意外なカップルだったよ
マーロさんとカマータさんのせいで精神的に疲れたが、挨拶とかやることはたくさんあるんだから、ちゃんとしなきゃ!気合いを入れると、妖艶な美女から話しかけられた。
「ごきげんよう。素敵なお茶会ですね。そのドレスもよく似合っていますわ」
妖艶な美女…ローゼンシアちゃんである。青いプリンセスラインのドレスは清楚なはずなのに、妖艶だと思ってしまう。
「ローゼンシアちゃんにこそ似合いそうだけどねぇ」
「あら、そう?」
「深紅のセクシーなドレスとか、すごく似合いそう!深いスリットが入ったやつ!白くて綺麗な肌と深紅のドレス…絶対綺麗!!足出しがダメなら、マーメイドライン!絶対似合う!!」
「ふふ…ありがとう」
うーむ、この色香よ…。女の私でもドキッとしてしまう。
ハッ!ケビンは!?
「…友人を誉める雪花も可愛いな…いや、どうせなら俺に微笑んでくれないだろうか……」
ケビンさんは相変わらず甘々砂糖と蜂蜜たっぷり山盛り星人だった。
こんな妖艶美女より私みたいなチンチクリンがいいなんて、目がおかしい。眼科受診をおすすめするよ。
「…雪花?」
「はっ!」
ついひっついてしまった!完全に無意識だった!!
「う、嬉しくなんかないんだからね!!」
「???あ、ああ。だが、どうせならもう少しくっついていてほしかったな」
くっ!そんな…耳と尻尾をしんなりさせるなんて卑怯だ!
「ちょっとだけだからね!」
腕にギュッと抱きついた。ケビンは嬉しそうに尻尾をパタパタしている。
「微笑ましいわ…うちの愚弟が馬鹿な会を作るのも、うなずけるわね……」
ローゼンシアちゃんを忘れてた!!慌ててケビンの腕を放そうとしたが、ケビンに抱き寄せられて動けない。嬉しいが恥ずかしい。
「羨ましいわ……姫様、お願いがあるの」
「なんでしょう?」
「スノウを私にちょうだい」
「スノウは私の所有物じゃないからあげられません」
瞬時に返答してしまった。スノウが欲しい??何故に??
「言い方が悪かったわ。スノウを私のお婿さんにちょうだい」
「ああ、お婿さんに……えええええええ!??」
驚愕する私に対し、ケビンは冷静だった。
「ほう、見る目があるな。スノウは俺の弟のようなものだ。何故、スノウを婿に欲しいと?」
「…それは…」
ローゼンシアちゃんはうっとりしながらスノウとの出会いを語った。ローゼンシアちゃんに言い寄る男は多い。なにせ、クリオ公爵の娘な上に美女なのだ。そりゃあモテるに決まっている。
うるさい男達から逃げていた時にスノウに会った。スノウはローゼンシアちゃんを捕まえると、優しく笑って静かにしてくださいねと言った。
ローゼンシアちゃんはその綺麗な笑顔にノックアウトされたらしい。
そーいや、かなりの美形だったよね、うちのスノウ。ガリガリだからわかんなかったけど、うちに来てたらふく食べてるから筋肉もついたらしい。
「姫様、姫様!こんな重たい水桶も魔法なして運べるようになりました!」
私にほめてほしかったらしいスノウの笑顔を思い出す。実年齢はさておき、スノウの内面は幼い。精神年齢はシロウ君の方が上な気がする。
そして、ローゼンシアちゃんはスノウに一目惚れしてから果敢にアタックした。スノウは助けたことを当然と考えているらしく、ローゼンシアちゃんに何も求めなかった。その謙虚さもいいし、子供と戯れる姿にもキュンキュンしたそうだ。
「…ああ、私の世界では最近4低が人気らしいです。全部当てはまりますね」
「よんてい?」
「低姿勢、低燃費、低リスク、低依存だそうです」
なるほど、と頷いたローゼンシアちゃん。とにかくスノウが好きだが、実家からも反対されているらしい。
「…じゃ、次はスノウにしよっか」
「え?」
「もともと次を出す予定があるから、本人に確認してスノウの生い立ちとローゼンシアちゃんの恋物語で」
「是非!お願いいたしますわ!もう、姫様大好き!!」
「あっ!?」
「ワオン!?」
美女にチューをいただいちゃった…が、ケビンが妬いたのか、ほっぺをめっちゃ拭いている。
ローゼンシアちゃんはご機嫌でパーティに戻っていきました。
「さて、スノウはどう思ってるのかな?」
さっき声を出したのは私ではなくスノウ。驚いて制御が乱れたみたいだねぇ。のんびり屋が珍しく起きていて、教えてくれたのだよ。
「身分違いです。私は罪人ですよ?あんな可愛いひとを娶れるわけがないでしょう!!」
「なるほど。まんざらでもない、と」
「!??ち、ちが……」
スノウもついに思春期かぁ。よかったね、スノウ。本人はめっちゃ慌てている。
「確かに可愛くて綺麗で賢いよね~」
「ぐうっ!?」
「すまんが色恋には疎くて…スノウは結婚できないと言っているようだが?」
首をかしげるケビン、可愛い。今日もうちの旦那様はモフ可愛い。
「以前のケビンと同じ。マイナス要素は瞳と罪」
「…なるほど」
ケビンもあっさり納得した。さて、問題はスノウかな。本人が嫌がってたら無理にとは言えないけど、どうもローゼンシアちゃんが好ましいようだ。なら、背中を押してやろう。
「今のクリオ家は多分、これ以上権力が集中するとまずいんで、スノウで丁度いいかも」
「………は?」
「だってケイ様を養女にしてるし。ローゼンシアちゃんが他の公爵家と結婚したら、パワーバランス崩れて内乱になるかも」
「…可能性はあるな。特に、ローゼンシア嬢にヘルマータの兄がしつこく言い寄っているらしい」
「…なんで知っているの?」
「ヘルマータから相談されてな…昔の自分を見ているようで辛いを越えて痛いんだそうだ。クリオからも正式な陳情書が来ている」
なるほど、なるほど。ケビンの表情から、かなり迷惑なのだとわかる。
「どんな人なの?」
「顔はかなりいい。ヘルマータをもう少し成長させた感じだ。性格は…悪知恵を覚えた以前のヘルマータだ」
「ナニソレ、最悪」
「奴には言葉が通じない上に悪賢い。そういえば、今日もパーティにきていたな」
「ぼ、ぼく、ローゼンシア様を守ってきます!!」
スノウは真っ青になって走り去った。地がでてしまうほどに慌てていたようだ。
「ケビン、ナイス」
「??そうか?」
あ、わざと煽ったんじゃないのね。流石はマイダーリン。とても癒された。しかし、悪賢いヘルマータね…まあ、うちのスノウなら大丈夫でしょ。
ローゼンシアちゃんとスノウがうまくいくといいなぁ。そんなことを考えつつ、パーティを楽しむのだった。