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吟遊詩人さん達と紙芝居

 紙芝居、本日からスタートです。それぞれ人通りの多い場所でやるらしいのでチラシを作って配布してみました。


 見に行きたかったけど、今日はお仕事だから我慢。3日後にケビンと吟遊詩人さん達にナイショで見に行く予定なのです。


 そして仕事が終わって帰宅すると、本日はお寝坊さんだったからお留守番をしていた我が家の天使達にお出迎えされました。


「ママ、パパ、おかえいなちゃい」

「わんわん!」


 わんこ雪斗に乗る雪那。最近のお気に入りスタイルなのです。


「ただいま」

「ただいま」


 ケビンに二人とも抱っこされてごきげんですね。


「ぬあっ!?」


 廊下の影でしくしく泣くじいを見つけてビックリした。気配がなかったよ!


「ん?じいか。ただいま」


「おがえりなざいまぜ…ぼっちゃまが幸せぞうでじいは嬉じゅうございまずぅ…」


 雪斗がケビンの腕からジャンプし、獣人姿になってじいの膝を撫でてあげた。


「いた~のいた~の、な~いない」


「ユキトぼっちゃまあああああ!!なんとお優しい!じいは、じいは嬉しゅうございますぅぅ!!」


 泣いている=どこか痛いと判断した雪斗がじいにおまじないをしてあげた。


「じいはいたいわけじゃないわ。パパがちあわちぇでうれちいからないたのよ」


「きゅうん?うれちいからないたの?」


「そうですぞ。そして、ユキトぼっちゃまがじいに優しいのも嬉しくて、じいはまた泣いてしまったのです」


「じいがいたいなくてよかった~」


「雪斗可愛い!」

「いい子だな」

「ユキトぼっちゃまああああ!!」


 うちの子可愛い!とナデナデしていたら、冷静な娘からひとこと。


「で、いつまでおきゃくちゃまをまたちぇとくの?」


「お客様?」







 お客様とはライトさん達だった。そして顔を合わせるなり頭を下げた。


「すまん…!しかし、俺達もプロだ!何も言わずに人を貸してくれ!!」


「うん?」


 ライトさん達から話を聞いたところ、紙芝居は大盛況だった。大盛況過ぎた。

 多分チラシもいけなかった。異世界のお菓子目当てで貴族やお付きなんかも大勢来ていた。






 大勢過ぎて、さばききれなかったらしい。アメが一回で完売したそうな。うん?完売した??私、一人に500個は持たせましたよ??




 まさかの初日から予想外の大盛況である。





「でも、人員が居てもお客さんが多すぎたら見えないわよね…せっかく並んでくれても雨が降ったら出来ないし」


「…それについても提案させてくれ。酒場に頼んで場所を貸りることにしたい」


 彼らはそれぞれのツテを頼り、無償で日中酒場を借りる約束をしたそうだ。これなら雨でもできる。


「姫様のお望みは~、字を読めない庶民にもお話を知ってもらうことです~。酒場なら、貴族は入りにくいです~。子供も下働きなんかで来ますから~、ご希望に沿えると思います~」


 のんびりとして上品なジャスミンさんが説明してくれた。私よりも女性らしいが彼である。そして恋愛対象はがたいのいい男性なんだそうだ。リアルベーコンレタスにびっくりなんかしてないんだから!ちなみに、攻めなんだそうだ。ケビンに秋波を送るのはやめましょう。ケビンの尻も尻尾も私のですからね!幸い本人は気がついてないからいいけどね!


「じゃあ、酒場の座席数と立ち見も合わせて人数をあらかじめ算出しておかないとね」


「抜かりはない。これが人数リストだ。客の入れ換えも考え、時間も設定してみた。酒場の仕込みや営業時間も考慮した結果だ」


 美しいバリトンボイス。3人目の吟遊詩人?ルフナさん。神経質そうで眉間のシワが癖になっている。なんかこの人が歌うの、想像がつかん。


「おお…完璧!ところでルフナさんて、本当に吟遊詩人さんなんです?」


「いや?俺は冒険者…元冒険者だ。いい声だと仲間から言われていたが…歌ったことはない。利き手の怪我で戦えなくなり、金に困って志願した。幸い学はあるから字は読める。この仕事はわりがいいが…なくともなんとかなる」


 ルフナさんが左手を見せた。かなり深く抉られた傷。痛々しい。

 我が家の天使達が寄ってきた。


「ママ、なおちゅ?」

「じかんがかかいちょうね。すぐちょちをちないかやよ」


「…治せそう?」


 雪那が頷く。ルフナさんは信じられないものを見る目だった。雪斗はよくわかってないらしくニコニコしている。


「いた~のいた~の、な~いない」


 雪斗の魔法では変化なし。首をかしげる雪斗。


「ゆきと、そえじゃだめ。こーよ」


 雪那の魔法により、左手の肉が少しずつ戻る…が、雪那がため息をついた。


「わたちだとじかんがかかゆわ。そえでもいい?」


「……ありがたい。姫、俺に報酬は不要だ。腕の治療費を報酬としてくれ」


 よほど嬉しいのだろう。だが、それでは生活費が稼げない。彼は実直で真面目だ。


「いいえ、報酬は報酬。治療費には労働を要求します」


「かまわんが…何をすれば?片手ならば肉体労働も問題ない」


「うちの子達に読み書きを教えてください」

「無理だ」


「……やってみないで拒否するなら、治療の話は白紙撤回ですね」


「……やってはみるが……俺は子供と相性が悪い」


「きゅうん?」


 しかし雪斗はなついているので説得力がない。


「わやわないかやよ。あと、おにーさんがにがていちきがあゆかやでちょ」


「…努力はする」


 カダルさんはあくまで貴族寄りだから、庶民寄りの先生が欲しかったんだよね。雪那の見立てでは短くて完治まで半年らしい。


「よろしくお願いしますね~」






 そして、翌日。気になったので休みの日を変更してもらい紙芝居を見に行ったのだが………やはりこういうのは色々想定外の事が起きるのだなぁと思った。

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