幸せ家族なんだよ
まだまだ宴は続くのですが、赤ちゃん達がいるので早めに引き上げました。雪斗はすでに熟睡。サズドマを力の限り追いかけ回し、体力を使い果たしたご様子。
「すぴ~…ぷしゅるるる……きゅふふ…」
寝ながら入浴してるけど、全く起きません。面白い。寝ながら笑ってて、間抜け可愛い。
洗って流したら、浴室の外にいるケビンにバトンタッチ。それにしても、今子犬…じゃなかった子狼姿の雪斗はだら~んと狼としてはヤバいぐらいに無防備な姿。間抜け可愛い。
「じゃ、後はよろしくね」
「ああ任され…アオン!?そそそそんな姿で…!」
いや、そんなも何もお風呂に入ってるんだから服を着ている方がおかしいからね?とはいえ、ケビンの明らかに意識してる反応は、正直悪い気がしない。
「…後で、ね?」
「アフゥゥン!」
気をよくして冗談半分にウインクをしたらケビンには効果バツグンだったみたい。
浴室に戻ると、ベビーバスでまったり湯につかる雪那と目があった。
「そういえば、雪那と雪斗で明らかに身体能力差があるのはなんで?」
「…ああ。ユキトはもともとちんたいのうよくとっかなのよ。ワタチはまよくとっかだかや、うんどうはにがてなの。なええばもっとうごけゆようになゆわ」
「そっか。しゃべり方が舌足らずなのも、体に馴染めば普通になるのかな?」
「ええ、たぶんね」
雪那は水を興味深そうにいじっている。
「もうひとつ聞いていい?」
「いいわよ」
「出産直後は目が黒かった気がするんだけど?」
「ああ、あのばばあにくやちがらせゆためよ。あかいひとみはマイナチュようちょだかやね。げんかくまほうでかくちただけよ」
「…なるほど」
誰かに教わらなくても『赤い瞳はマイナス要素だ』と理解している雪那。これも彼女の天啓なのだろうか。
「雪那、お願いがあるんだけど」
「なぁに?」
「実は…」
雪那はキョトンとしてから笑いだした。
「かまわないわよ。ワタチたちのためだもの。ちょれにちてもママのはっちょうはちゅごいわ」
「そう。それはよかったわ。もうひとつお願いがあるんだけど。理屈屋な貴女に、非合理的なお願いよ」
「なぁに?」
「…急いで大人にならないでほしいの」
「…え?」
端的すぎて賢い雪那にも解らなかったらしい。
「きっと雪那はシロウ君に追いつくために早く大人になろうとすると思う」
「…うん」
特に高魔力保持者にその傾向があり、成長が早いと聞いた。ケビンやスノウがそうだ。彼らの場合は成長を早めなければ生きられなかったからなのだろうが。
雪那はそこに当てはまらない。私達が全力で守るからだ。
「上手く言えないけど、雪那はゆっくり素敵な大人になってほしい。子供時代を楽しんで、焦らないで大人になってほしいの」
「ママ…」
困ったように笑う雪那。少し考えてから返事をくれた。
「…きっと、あちぇゆときがあゆとおもうわ。ちょのときは、いまみたくゆって」
「…うん。これからきっと、たくさんたくさん楽しいことがあるからね。ママもママ一年生だから、一緒に成長していこうね!」
「ママいちねんちぇい?」
「うん!新米ママ!」
「ちょれ、いいわね。ママ、ワタチはママのむちゅめでちあわちぇよ」
そっと私に甘えてくる温もりに、言い様のない幸せを感じた。
「ママも雪那に会えて幸せよ。ママの所に産まれてくれてありがとう。さぁ、風邪ひいちゃうからそろそろでないとね」
綺麗に洗ってケビンに拭き役をお願いする。流石の雪那も眠いらしくウトウトしていた。
私がお風呂から出ると雪那も眠っていた。安らかな寝顔はとても愛らしい。
「ケビンも入ってきなよ」
「ああ」
雪那と雪斗は一緒に寝かせようかと思ったが、雪斗の寝相がかなり悪いのでしきりをつけることになった。
「ふふ、可愛い」
三つ子だからか、二人とも同じ横向きで寝ている。この世界に動画記録魔具はあるが高価で一回使い捨てだ。しかし、私には異世界製の特別なカメラ&ビデオカメラがある!!
「可愛い…」
揃って寝返りをうつプリティーベイビーズをパッチリ録画するのだった。
「雪花、起きていたのか。疲れているだろうから寝ていると思ったが…」
「いや、実はケビンに話があってね。あ、眠気覚ましに子供達を撮ってみたんだ。見て見て~」
「……可愛いな」
子供達のシンクロ寝返りを見て、ケビンの頬がゆるむ。穏やかな笑顔だった。
「それで、話とはなんだ?」
「あのね……」
ケビンも快諾してくれた。さて、これから忙しくなる。やりたいことは気が遠くなるぐらい時間がかかるから、先に今回許可された件をやろう。この件は『次』にも続いている。一石二鳥って奴なのだ。
「頑張るぞ~!」
「俺も可能な限り助力する。本当に俺の妻は最高だな」
「そうやってサポートしてくれる包容力満点な旦那様も最高ですよ」
当然ながら、夜はそれはもう盛り上がったのでした。私の旦那様は最高です。