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無自覚で追い詰めたよ

 完全に多勢に無勢なシロウ君。しかも口では私達に勝てないので、硬直したケビンに意見を求めた。


「団長!団長だって俺なんかに可愛いセツナを任せらんないよな!?」


「アオン?ええと…」


 ケビンはまだ頭が働かないらしい。アワアワしながらも話は聞いていたらしく暫くブツブツ言っていた。




「そもそも、シロウは雪那が好きなのか?」





 そして、どストレートな爆弾を投下した。


「はあ!?そんっ…そもそも選べる立場にねぇし!」


「いや、そこは関係ないだろう。雪那の願いは叶えてやりたいが、シロウも大事だから聞いておきたい」


 ケビンは真顔で、からかっているつもりもないのだろう。真面目だから。


「……そりゃ、モテねぇから…好きって言われて嬉しいよ。それ以上はまだ会ったばっかだしわからない。赤ん坊なのに物知りで、一緒に会話するのは楽しい。好きか嫌いかなら、好きだ」


「…ふむ。つまり雪那に好かれて悪い気はしていない。これから互いを知っていく予定なのだな。つまり、雪那が我が子だから遠慮して嫌なのに婚約を承諾したわけではない、と」


 シロウ君は真っ赤になって頷いた。ケビン、確認なんだろうけど…シロウ君すごく照れてるよ?


「ちょうよ。ワタチのキモチはかわやないから、がんばってチロウおにちゃをくどきおとちゅわ」


 シロウ君が動揺したらしく、耳と尻尾が出てプルプルしている。しかし雪那を下ろしたりする気はないらしく抱っこしたままだ。


「雪那はシロウのどこが好きなんだ?」


「みためはもちよん、ワタチのめをまっちゅぐみゆかやよ。ちょれに、ちゅこちはなちただけでもちぇいじつだってわかゆわ。ほかにもこまかいとこはたくちゃんあゆけど、おおきなりゆうはちょこよ。ちょえに、のんびりやにとやえないようにちないと」


「のんびり屋?」


 ケビンが首をかしげた。


「今お腹にいる子よ」


「何故、のんびり屋にシロウが取られると?」


「あのこは、もてりゅわ。ワタチとちがってちゅなおないいこよ。きっと…みんなあのこをちゅきになゆわ……」


 雪那は悲しげだった。まだ産まれてもいない末っ子なので、モテるも何もない気がするんだけど…雪那の中では決定事項のようだ。もしかしたら、私が知らない要素があるのかもしれない。


「…シロウの言う通り、婚約してお互いを知りなさい。俺は二人の幸せを願っている。娘である雪那はもちろん、シロウ…お前も俺の家族だからだ」


「パパ…」

「団長…」


 ケビンは穏やかに笑った。うちの旦那様、超素敵!!


「それから『身分』や『金がない』のが気になるなら、いい加減覚悟を決めて騎士団の学舎に入ったらどうだ?」


「それは…」


「お前には剣の才がある。頭も悪くない。いずれは俺の側近に…とも思っている。今はかなり騎士団への風当りがマシになった。俺も安心して誘える」


「……………でも、金…かかるし…」


 シロウ君は迷っているみたいだった。以前からこの話はあったが、彼はずっと断っていたそうだ。ケビンも騎士団があの有り様だったので、どちらかというと普通の学校をすすめていたらしい。


「学費が気になるなら、働いて少しずつ返してくれればいいよ」


「!!」


 彼がハッとした様子で私を見た。いいのか?と問われた気がするので頷く。


「娘を支えてくれるのだろう?それを望むなら、もっと強くならねばならない」


「………!お願い、します」


 シロウ君は決断したらしい。深々と頭を下げた。


「姫様、これってつまり…団長殿(ちちおや)公認でセツナ様に相応しくなるためにってことですよね?」

「ですよね?いやあ、我が娘ながら見る目あるわぁ」


 マーロさんとコソコソニマニマ話していたのが聞こえてしまったらしい。シロウ君に叱られた。


「セツ姉!コソコソ何を言ってるんだよ!!」


「アオン?別にコソコソしてないだろう。雪那の為に努力するなんて、うちの娘は見る目があるとシロウを誉めているだけだろう?俺もシロウならば安心だ」


「!??いや、その…アリガトウゴザイマス?」


 どストレートなケビンの賛辞に対し、真っ赤になってアワアワするシロウ君。ニマニマする私達に気がつき、雪那を抱っこしたまま逃亡したのだった。


「ちっくしょぉぉ!!ウオオオーン!!」


 そして、珍しくシロウ君が鳴いた。


「何故シロウは逃げたんだ?」


「私にイチャイチャされたケビンと同じ」


「照れたのか?事実を言っただけなのに??」


 ケビンは本気でわからない様子。流石は男性限定の天然人たらしである。わかりやすーく教えてあげた。


「ケビンって、よく人を見てるよね」


「そうか?」


「メル君とかシロウ君とか、人の努力や良いところをよく見てる」


「…そうか?」


 首をかしげるケビン。


「私、ケビンのそーゆーとこがすごく好き」


「そそそそうか!」


「うん。『仕事だからやって当たり前』って態度で接しないとこ、とっても素敵」


「アフゥゥン…そ、そうか」


 照れてクネクネするケビン。かわゆす。しかし、まだまだ攻めるよ!


「それから、いつも真面目にトレーニングしていて、いざって時は守ってくれる。戦ってる時のケビンって凛々しくてカッコいい」


「ワオン!?そんなに誉められると…キュウウウン!」


 走り出されて酔っ払いの群れに放置されては困るので、ケビンの手を取る。


「…シロウ君の気持ち、わかった?誉められると照れ臭いのよ」


「わ、わかった…しかし、理解させるためとはいえこんな男にカッコいいとか凛々しいなんて嘘を言わないでくれ。勘違いしそうになる」


「は?」


「キャイン!?なんで怒ってるんだ!??」


 尻尾を握られて涙目のケビン。なんでって?


「…私、嘘ついてない。心からそう思って言った。私、嘘ついてないもん」


 ふてくされてケビンの尻尾を腹いせに弄ぶ。


「キュウウウン…雪花が可愛すぎて裂ける!弾ける!!」


「で、わかりました?ストレートに誉められると恥ずかしくなっちゃうんですよ」


「わかった……キュウン…」


 ケビンは尻尾がちぎれるんじゃないかと心配するほど尻尾を振りまくった。




「いや、これは本当に楽しくなりそうだなぁ」


 本気で楽しげな声が聞こえてチラッと見てみたら、マーロさんがめっちゃイイ笑顔をしていた。



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