準備ができたみたいだよ
次の仕事についてはまだビジョンが明確になってないし、ババアへの嫌がらせという大仕事が残っているので後日お話しする事になった。
ベビーグッズや玩具は自宅に運んでもらえることになり、騎士団に戻って残りの仕事をして帰宅する時間になった。
「ケビン、今日は寄り道していい?」
「かまわんが…どこへ?」
「教会」
騎士団から最寄りの教会へ行くことに。最寄りの教会は私達が結婚式をあげた所だった。
神父様に先日は本当にすいませんでしたと謝罪した。
「ちょっと祈ってくる」
雪斗を抱っこしたまま祭壇に祈りを捧げる…というか、呼びかけた。ミスティア、ちょっと話があるから、そのうち夢に来てくれる?できたらあの子もセットでよろしく!
『おっけ~!』
本当にこの女神は軽い。しかし、フットワークが軽いのは正直助かる。
「ありがとう」
「もういいのか?祭壇から光が溢れていたから、女神と何か話していたのだろう?」
「………うん、帰ろう」
まさかのシャイニング私。気がつかなかった。輝かないと交信ができないのか、女神よ。内緒話とか不可能じゃないか。
ケビンと手を繋いで家に帰る。そして普段通りにタップリイチャイチャして眠った。
そして、あの狭いながらも慣れた我が家…の夢の中で我が家に不似合いなゴージャス美女達に囲まれていた。
「こんばんは~」
「早速か!」
「時間的に向こうも夜でちょうど良かったのよ。ご要望通りロザリンドにも来てもらったわよ」
そう、女神ミスティアとロザリンドちゃん…どちらも完璧なプロポーションと美貌を持つ、ゴージャスな美女達だ。
「で、相談って?」
ミスティアースの現状と、これからしたいことを話した。
「そうなんだ、そっちは大変そうだねぇ。こっちはまぁ…落ち着いてるから相談に乗るのは構わないよ。こっちもなかなか、それについては進まなくてさぁ…」
「そっちも大変だね。聞いてくれてありがとう」
いやいや、と苦笑するロザリンドちゃん。こうして真面目な話をしてるととてもじゃないが鳩マスクと女神を吊るすような狂気的行動をするとは思えない。
「いくつか私が父に出した企画案を送るよ。結果が出てるものは結果付きで。使えるもの、あるかもしんないし」
「本当に助かるよ。あ、あともう1つお願いがあります」
「何?」
「そっちにカメラ…ビデオカメラと普通のカメラまたはカメラ的なものある?」
「あるよ~。なんで?」
「羨ましい!」
ロザリンドちゃんが首をかしげた。
「うち、子供が生まれたの。だから記録媒体が欲しいのよ!アルバムとか作りたいの!」
「マジで!?子供はモフモフ!?確か旦那さんはモフモフ狼獣人なんだよね!?」
激しい食いつきに、やや引き気味になる。確かロザリンドちゃんの旦那さんも獣人なんだよね?モフモフフェチまたはケモナーなのかもしれない。
「モフモフだよ」
「くはぁ…子モフモフ…!確かに、そんな至宝の姿を後世に遺せるように、カメラとビデオカメラは必須だね!」
いや、うちの子を見てもないのに至宝って…まぁ、可愛いけどな!我が子!!
「わん」
わん?おや、この馴染みあるモフモフは……
「って、雪斗?」
「あい」
「呼んじゃった」
ミスティアの仕業か。納得。雪斗は私の膝に乗っかり、遊んでアピール…いや、自分の尻尾を追いかけている。バ可愛い!!おバカなとこが可愛い!!
「きゃんわゆぅぅぅい!!」
「きゃん!?」
雪斗の凶悪なバ可愛さに興奮したロザリンドちゃん。そして興奮したロザリンドちゃんににビビる雪斗。
悪意がないのはわかるらしく唸ったりはしてないけど、明らかにハァハァしている美女ちゃんに戸惑っている。ちなみに今、雪斗は着ぐるみパジャマ(怪獣さん)を着ている。
「お、お姉ちゃんと遊ぼうか!ほぉぉら、玩具だよ!」
鼻血をたらしてハァハァする美女。なんと残念な絵面なのだろう。
「あい!」
しかし、雪斗は気にせず遊ぶことにしたらしい。ロザリンドちゃんの玩具はなかなか高度な奴で、自動で転がる玉とかふわふわ浮く飛行船だったからもあるだろう。
後で人さらいとかにあわないように、よ~く教えておかないと。
不規則にころがる尻尾つきボールを追いかけて大興奮している我が子を眺めながら思った。
「ママ」
私に触れる小さな手。私に微笑むもう一人の我が子。勝ち気な瞳には戦う意思が見えた。どうやら準備が整ったようです。