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望まないモテ期は苦痛なんだよ

 城の一室に住むよう言われ、私が通された部屋はフリフリヒラヒラの乙女ルームだった。とても可愛らしいが、私に似合わない気がする。まあ、仕方ない。

 風呂、トイレ付き。寝室は別。キッチンがあれば暮らせるね。キッチンほしいなぁ。


 毎日ドレスを着せられるのだが、誰の趣味かやたらゴテゴテ宝石がつけられまくっている。私付きの侍従さんに聞いたら、今の流行らしい。


 私の侍従さんは3人がローテーションしていて常に1人ついている。クールな少年カイン君と可愛い少年メル君と穏やかなお兄さんカダルさんだ。カダルさんはおっさんに化粧やヘアメイクを譲った人だ。

 それ以外はアラームが鳴るから全力で拒否。アラームがなくてもなんか邪な目を感じる人もいた。ロリコンは滅びろ。見るだけならまだしも、奴らは触る気マンマンだった。滅したい気持ちが伝わったらしく、ピエトロ君がガチで始末しようとしたのを慌てて止める羽目になったりもした。



 勉強の方は賢者と呼ばれるじっちゃんが基礎と魔法を担当。マナー関係はカダルさんが担当していた。

 こちらは特に問題なく、私はいくつかの魔法を扱えるようになった。特に便利なのは結界と消音魔法だ。夜中に夜這いに来るバカがいるので便利というか必須魔法だ。夜中にドアをノックされるのも怖いんで、消音も必須。


 最近では害意ある人間を自動ではじく結界を作れるようになり、超便利。



「異界の姫様、こちらの贈り物は…」


「異界の姫様、我が領地には…」


「異界の姫様、ぜひ我が家に…」



 私の思考は明後日に飛んでいた。毎日毎日飽きもせず来る面会希望にうんざりである。しかも皆さん似たようなことしか言わない。

 大概が貢ぎ物自慢から始まり、自分の身分、領地自慢、自分の所有物自慢である。なんかマニュアルでもあるんだろうか。

 おかげで私にロリコンまたは変態のレッテルを貼られなかった人は名前も覚えてない。


 高価な贈り物は受け取りたくないのだが、この世界において高価な贈り物=魅力的な女性と仲良くなりたいという好意だそうで、拒否は逆に失礼らしく、毎日贈り物がたまっていく。 


 そして、私の疲労とストレスもたまっていた。


「うー」


 ぐったりしてしまう。ドレスでお行儀が悪いが、カダルさんも咎めない。


「仕方ありませんねぇ。姫様、とびきり元気が出るお薬をあげますから、ソファに座ってください」


「えー?」


 疲れたからまだ休憩したい。


「…後悔しますよ?」

「喜んで!」


 カダルさんは穏やかそうだが言うことを聞かないやつには大変厳しい。先程の台詞も『後悔しますよ』より『させますよ』が正しい気がする。

 私は慌てて寝室を出て応接室がわりにしている部屋のソファに座った。カダルさんが髪を整えると、廊下に続くドアをあけた。


「どうぞ」


 オドオドしながら筋肉ムキムキのでかいおっさんが入ってきた。なんかちょっとやつれてないか?


「おっさん!」


「きゃうん!?」


「おっさん、会いたかった!」


 私は勢いよくおっさんに飛びつくと、おっさんの首もとに頭をグリグリ擦り付けた。


「く…くーん……姫様…きゃいん!」


 おっさんも私にスリスリして、カダルさんにしばかれた。


「触りすぎですよ、この駄犬が」


「ままままって!私からやりました!」


「…姫様がなさるのはかまいません。姫様の許しなく触ろうとした騎士団長殿が非礼なのです」


「許可します!だから叱らないで!!」


「姫様…くーん…」


 おっさん!カダルさんにまたしばかれるぞ!カダルさんを説得してからにしなさい!…と言いたいが、おっさんが可愛くスリスリしてるので言えない。癒される…!


「姫様、元気そうですね」


「いえ、姫様は先程までお辛そうでしたよ。騎士団長殿がいらしたら元気になりましたが」


「そうなの?」


 否定できない。


「だって、だって癒しがないんだもん!皆似たような顔して、似たようなこと話して、私なんか見てないじゃん!欲しいのは異界の女で『私』じゃない!そんな人達の相手を延々とすんのやだ!つーかーれーたー!!」


「…だそうです。なので息抜きになるのではないかと貴殿らをお呼びしたわけですが、やはり効果覿面でしたね」


 駄々っ子と化した私に全く動じないカダルさん。というか気を遣って言わなかったがバレバレだったらしい。


「「…………」」


 おっさんとオレンジ頭が同情してくれたらしく、撫でてくれました。ついでにおっさんの耳を触らせてもらおう…くっ相変わらずもふもふ…今日はちゃんとブラッシングしたのね?サラサラふかふかだぁ。


「ヒメサマ、元気ぃ…!?」

「姫様……!?」


 あ、変態とシャザル君だ…来てくれたんだねと思ったら、彼らは逃げてしまった。


「シャザルは相変わらず馬鹿に振り回されているようですね。私がいない方が姫様もくつろげるでしょうし、ちょっとシメてきますね」


 カダルさんはウインクして逃げた2人を追いかけた。イイ笑顔だった。


「ぎゃあああああ!?来んな悪魔ァァァァ!!」

「兄さん、怖い!来ないでぇぇ!!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」


「わははははははははは」


「「「……………」」」


 カダルさんはシャザル君のお兄さんでしたが、それより変態とシャザル君が必死に泣きながら逃げ惑う様が気になりました。何をしたらああなるんだ。知りたくないが、気になる。

 しかも笑い声がやたら平淡で無表情だ。超怖い。


 とりあえず、カダルさんを敵に回してはいけない…ということはよくわかりました。

 ちなみにカダルさんは弟もサズドマも可愛いと思ってます。歪んだ愛情表現しかしないんで、シャザル君とサズドマから恐れられています。


 サズドマはMもいけますが、好みでない相手からいたぶられても嬉しくないのでカダルさんを見たらまず逃げます。

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