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ゆっくり話してみたよ

 魔力が高い赤ちゃんは親の魔力を吸収して育つから、ベビーベットに魔石が必須なんだとか。ケビンが魔力を石にこめてくれた。すると雪斗は穏やかに眠り、先程みたい鳴くことはなかった。異世界って不思議。それにしても、腹を出して寝る我が子…間抜け可愛い。お腹ふにふに。あくびした。天使だね!


 今日はケビンに抱きしめられて眠ろう。ベビーベットをケビンの部屋に設置し、ケビンのベッドに寝転がってスタンバイ。ケビンは部屋に戻ると私に気がついて、まっすぐベッドに来た。


「雪花…今日はここで寝てくれ」


 私に懇願するケビン。いや、そもそもここで寝ようと思ってきたんだよ。


「…うん」


「雪花が姿を消したと聞いて、怖かった」


 そっと、宝物みたいに優しく扱われる。抱き寄せられたケビンの胸は、あたたかくて優しくて世界一安心安全で幸せな場所。自然と自分の腕をケビンの背中に回した。


「…うん」


「雪花がいない世界なんて考えられない。無茶はしないでくれ」


「…ごめん」


 ケビンが震えていた。あんなに強いケビンは、私が居なくなるのが怖いのだと感じた。


「怖かっただろう?もう大丈夫だ。泣いていい」


「……………」


「ここは安全だ。よく頑張ったな」


 気がつけば、泣き叫んでいた。怖かった。すごく怖かった。でも、助けなきゃと思った。ソラ君達を助けられるのは自分だけだから、一人でも戦わなきゃって。


「…ケビン」


「ん?」


 泣きじゃくる私を優しく撫でるケビンは、さっき雪斗に見せたものとは違う笑顔を見せていた。


「…こわかった、けど…」


 伝えたい。すごくすごく心細くて怖かった。だけど、それだけじゃなかった。


「でも…ケビンは絶対助けに来てくれるって信じてた」


 だから、耐えられた。暴れたくなっても、不安に押し潰されそうになっても、ケビンは絶対来てくれるって信じてたから。


「…雪花が可愛すぎる…!遅くなってすまなかった」


「…ううん。全速力で来てくれたんでしょ?ちゃんと間に合ったよ」


 虫ばばあに体当たりした時、ケビンの毛皮には石やら小枝がつきまくっていた。小さな傷もあった。他の騎士達が追いつけないぐらい、傷つくのもかまわず全力で走ってくれたんだろう。


「助けてくれて、ありがとう」


「…ああ…無事でいてくれて…俺の家族を守ってくれてありがとう」


 ケビンの温もりに包まれ、心から安心して眠りに落ちた。







「ママ」


 そこは…昔、というかちょっと前まで住んでいた場所だった。見慣れた1DK。バストイレ別、洗濯機室内。収納ありの住み慣れた我が家。

 そこにケモミミ美少女がいるとものすごく違和感がある。


「寝なくて平気なの?」


「寝ているわ。ママもワタシもね。説明がほしいんじゃないかと思って、ママの夢にお邪魔したのよ」


「そっか」


 確かに聞きたいことがたくさんあったから、ありがたい。


「どこから説明しようか。先ずユキト…頑張り屋を先に出したのは、あのままだと結界を破壊されてパパが間に合わないと判断したから」


「そうなの?」


「ワタシ達の中で、ユキトが一番身体の成長が早かった。そして、あの場で確実に時間を稼げるだけの力があったのよ」


 だから選択した、と理屈屋…私の娘は話した。


「ちなみに理屈屋(あなた)じゃ駄目だったの?」


「そもそもあの時点で産まれてこれる状態なのはユキトだけよ。仮にワタシが産まれてこれる状態だったとしても、確実に足手まといになったわよ。ワタシは魔力特化だから攻撃できても回避が難しいわ」


 なるほど。それにしても、理屈屋は私より知識がある気がする。


「理屈屋はなんでそんなに色々知ってるの?」


「それがワタシの天啓だからよ。神から与えられた力なの。簡単に言うとユキトは肉体的な力、ワタシは知識、のんびり屋は器用さね。異世界の神からの力よ。さらにワタシ達はミスティアの加護も受けているわ」


「へー、それはどんな力なの?」


「無条件でこの世界の精霊に好かれるし、魔力についての特殊能力がそれぞれにあるわ」


「へー」


 我が子達は皆とんでもないチートのであることが発覚した。きっとどこであろうと元気でいてくれるだろう。


「ちなみに、理屈屋はあとどのぐらいで産まれてこれる?」


「ん~、多分あと…1ヶ月ぐらい?のんびり屋はもっとかかるわね」


「お願いがあるんだけど…」


「なぁに?」


「あのね……」


 誰もこの夢の中では聞いていないと知りつつ、理屈屋の耳もとで話した。


「ふふふ、いいわよ。ワタシの兄弟を侮辱してくれたしね。じゃあ、しばらくワタシは休眠状態に入るわ。ユキトもいるからママの護りに問題はないだろうしね」


「あ、待って!今まで助けてくれていたのは貴女なの!?」


「…そうかもね」


「ありがとう!また会えるのを楽しみにしてるから!」


「ワタシもよ」


 理屈屋は微笑んで、溶けるように消えていった。




 目が覚めると、とんでもなくだるかった。


「うう……」


 理由が明確だったので、とりあえずケビンにどうにかしてもらい、今朝は遅刻した。

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