反応がすごかったよ
ケビンのネックレスの魔力で一気に家まで転移した。我が家の玄関に、帰ってきたんだとホッとする。
「雪斗、ここがお家だよ」
「わん」
あらら?おねむかな?ウトウトしてるね。
「ただいま」
「今帰った」
「おにゃかしゅいたの~」
「確かに。なんかほっとしたら腹へったな…マサムネなんか作ってくんねーかなぁ…」
「マサムネさんが寝てたら私が作るよ」
そんな会話をしていたら、奥からじい達が爆走してきた。
「若奥様あああああ!!よくぞご無事で!!じいは、じいは…うあああああああ!!」
「…すまん。こいつ、お頭のこともあってか落ち着かなくて………呑ませた」
お酒のせいもある、と。
「くぅん?きゅう…」
おじいちゃん、なかないで?と言っているのかな?私にしがみついて号泣するじいの涙を雪斗がペロペロと舐めとった。
「……………………………」
じいはキョトンとして雪斗を見つめ、私を見てケビンを見て私を見た。
「この、愛らしい赤ちゃんは……もしや……」
「ケビンと私の子供で、雪斗と言います。雪斗、この人はじいって言って、パパのパパ…おじいちゃんみたいな人なんだよ。あっちの人は」
「ぬああああああああ!!」
『!??』
全員がまた号泣しだしたじいに驚いた。
「じいは、じいは幸せにございまずぅぅ!!若奥様が無事で、こんなに愛らしい赤子を無事に出産なさるなんて…!!うおおおおーん!!」
「きゅうん?くぅん…」
スリスリしたり舐めたりしてじいを慰めようとする雪斗。うちの子、マジ天使!!
「チョラもよちよちすゆ!」
「泣くなよ、じいさん」
我が家のよい子達もじいを慰めようとした。しかし、盛大な腹の音が鳴った。
「ミストル、ガキ共の飯が先だ。泣き止め。ユキトぼっちゃんにも飯を食わせてやらねぇと。手伝え」
「そうだな!すぐにセッティングする!!指示をくれ」
じいは酔っていたとは思えないほど俊敏な動きで食堂に走った。
「はい、雪斗。あーん」
「はぐはぐ。わん!」
「よちよち、あーん」
「はむはむ。わん!」
食べるとちょーだい!と催促するわが子。かわゆい……。やわらかーく煮たスープを食べる雪斗。
ああああん、可愛い!しかも、私かケビンからしか食べないの!はああああん、可愛い!!
獣人の子はいくつかの出産パターンがあるらしい。今回のように、転移を応用したような生まれかたをする子は獣性が高く、成長も早い。そして丈夫なんだそうだ。
もちろん私の世界みたいに普通に生まれてくる子もいる。そちらは獣性が低く魔力も低い子供が多いらしい。育ち方も私たちの常識と同じ。
一気に産まれるときもあれば、今回みたいに一人ずつって時もあるらしい。異世界って不思議。
けぷっと雪斗が可愛くげっぷをした。
「排泄をさせた方がいいだろう。雪花、雪斗を貸してくれ」
ケビンが狼さんになって雪斗のお尻を辺りを濡らした布でフキフキしたら、おしっこが出たので拭き取る。
ついでに布を替えて足も拭いてた。いいパパだなぁ……
「まだ自力での排泄は無理のようだな」
そこは子犬と同じなんだなぁ。一応犬獣人の育児書にも書いてあった。それより気になるのは…
「ケビン、やたら手慣れてない?」
うとうとしている雪斗を抱っこしてこちらに戻ってきた。
「ああ。シロウ達も面倒見たからな」
「えふ!?」
シロウ君がむせた。トラ君は首を振っている。
「んなっ!?なっ!そんっ!」
シロウ君は必死で何かを言おうとするが、うまくいかないようだ。
「??シロウが来たときはこのぐらいだったから、仕方ないだろう。トラは来たときシロウよりでかかったから世話はしてない」
ケビンは首をかしげた。うん、そうだけどね。デリカシー大事。後で注意しておこう。
「きゅう…」
雪斗は半分夢の中。それでも私の膝まで頑張り、丸くなって眠った。
「可愛い…」
「あかちゃ、かわいいにゃ~」
「ソラ、寝てるからし~、だぞ」
「あい」
この子虎兄弟、でら可愛いんですが。抱きしめたらだめですか?いや、もうやってますがね。ふわもふ~。
「セツ姉、なにす「し~、だよ?」
「ぐっ…」
「し~、にゃの~…ふみゅん…ゴロゴロ…」
眠る雪斗を起こしたらいけないと、抵抗できずナデナデされるトラ君。素直に甘えるソラ君。安定の可愛さです。
「……ゴロゴロ」
「ふみゅん…ゴロゴロ」
そして、子虎兄弟がどちらもゴロゴロうっとりになったところで気がついた。
めっちゃ見られてる。
じい、マサムネさんをはじめ、大人達が全員私の膝でむにゃむにゃ言ってる(正確にはぷす~とかきゅ~とか、たぶん喋ってるっぽい)雪斗を見つめている。
そっとベビーベッドに雪斗を寝かせると、大人達がベッドを取り囲んだ。
「…………ぴい(スリスリ)」
「…………………(スリスリ)」
「ぴゅ(スリスリ)」
そして、囲まれる私。可愛いちびモフ達に囲まれ、モフモフしました。んもう、皆甘えん坊なんだから!もふハーレム、幸せ!!
そんな事を考えていたら、悲しげな鳴き声が聞こえてきました。
「くーん…きゅぅぅん……」
皆が一斉にケビンを見た。しかし彼はまだ食事中。でも耳が垂れてたから、後で可愛がってあげよう。
「きゅぅぅん…きゅぅぅん…」
雪斗がよちよちとベビーベッドによじ登ります。
やべぇ、可愛い。そっか、ママを呼んでいるのね!
「きゅうん…」
そして、ケビンの足元で丸まる雪斗。なんでじゃい!そりゃケビンの方が近かったけどさぁ!!
「ぬ?」
雪斗に気がついて抱き上げるケビン。膝にのせ、慈愛に満ちた笑みで雪斗を撫でる。
なんだ、この敗北感。
女子力ならぬ母力でも負けている気がしてならん!しかも、イライラする!!
「雪花?」
雪斗を抱っこして、ケビンの膝に乗りひっついてやった。
「ウォン!??」
ふふん、動揺してる。気持ちがスッとした。アワアワしているケビン、可愛い。
「はい、あーん」
「アオン!?あ、あーん?」
私が膝にいるせいで食べにくいであろうケビンにあーんをしてやる。アワアワしつつも食べるケビン。
それにしても、本当に落ち着くわ…なんというフィット感。
「雪花、どうした?さっき、その…不機嫌だったようだが…」
おずおずとケビンが聞いてきた。まぁね。不機嫌だったけどね。
「たぶん…やきもち、やいたから……」
自分でもそれはどうよと思ったが…息子にも譲れない!ケビンは私のなのだ!さ、流石に引いた?おずおずとケビンを見上げた。
「我が生涯に1片の悔いなし!!」
「ケビィィィン!?えええ!?なんでぇぇ!??」
ケビンが口と鼻から血を噴き出したので焦ったけど、鼻血だった。
「あれは仕方ないな」
「…ありえねぇぐらい可愛かったもんな…」
シロウ君とトラ君がなにやらコソコソ話していたが、大出血のケビンにびっくりして気がつかなかった。
しかし、これだけ大騒ぎしていたにもかかわらず雪斗は爆睡していた。この子はきっと大物になるわ。
わりとどうでもいい補足。
赤ちゃんは親の魔力に触れると安心します。雪斗は近かったからという理由でケビンのところに来ました。
ちなみに、ケビンと雪花が同じ距離だったら雪花の方に来ます。
この世界、女性はワガママ自分勝手がデフォなので、雪花の嫉妬はとてつもなく可愛いと思われました。
この世界において、雪花は二次元をそのまま現実にもってきたような存在です。