普段キレない人がキレるとヤバイんだよ
現在、私はもっふわぬくぬく逆ハーレムなう。
背中とお尻にケビン(膝に座ってるから)右にシロウ君。左にトラ君お膝に雪斗、ソラ君、ルル君、エド君。肩にトーワ君。
何故こうなったかというと、私がくしゃみをしたら寒いのかとケビンがオロオロ。あたためてやると抱っこした。そしたらちみっこ達もあっためてあげると集まった。普段寄ってこないシロウ君とトラ君までもふり放題…頑張った私へのご褒美に違いない!!
精霊さん達はとりあえずで私が出した菓子を食らいつくし、満足して帰っていきました。
またお菓子は大量に作って保存しておこう。
雪斗は私の指をカミカミしている。痛くないので甘噛みというやつに違いない。ナデナデしてみた。
「きゅうん?くぅん」
甘えてスリスリしてきた。首をもふると気持ちいいのか尻尾がパタパタしている。
やべぇ、でら可愛い!!うちの息子、天使じゃなかろうか!!
「…姫様…いえ、奥方様」
「なんでしょうか」
「ご子息を少しでいいから抱っこさせてください!!」
副団長様が土下座した。そんなにか。うちの息子の魅力にやられてしまったのですね?
「……雪斗、お兄ちゃんが抱っこだって」
「わん!」
元気よく私の膝から飛び降りると、副団長様の膝に片手を乗っけて首をかしげる。
「わん」
『可愛い…!!』
すっかり親バカと化した私達と、親じゃないけどメロメロな副団長様。
そして呆れるサズドマ。シャザル君とヘルマータは触りたそうにソワソワしている。
「ヒメサマ、いいからジジョー説明してくんない?」
「あ、ごめん」
というわけで、これまでの経緯を説明した。
「つまりー、悪いのはババアな」
「…概ね合ってる」
そんなユルーい会話に元近衛騎士が口を挟んできた。
「ち、違う!今回の件は私が勝手にしたことだ!姫様は何も悪くない!!」
ヘルマータがため息を吐いた。
「貴様には失望したし…同情もしている」
「は…?」
「貴様は少し前の私だ。見たいモノしか見ていない…見えていない。本当に正しいモノが何か、自分の目で確かめればいい」
「きゃあっ!?」
軽い雷撃魔法を元側妃に放つヘルマータ。流石に目が覚めたらしい。
「貴様!か弱い姫様に何をする!」
「…貴様こそ異界の姫君に何をしようとした?姫君がたまたま強かったから大事には至らなかっただけで、か弱い子供と女に手を出そうとした下衆に言われる筋合いは無い。それにこの女は罪人だ。それも我らの姫君に害を為そうとした大罪人。八つ裂きにしても足りないぐらいだ」
ヘルマータは静かに怒り、殺気を放つ。普段怒らない人がキレると超怖い。
「そうですよ。生爪全部剥がさなかったんですよ?ヘルマータは優しいですよ。這いつくばって感謝しろ、このカス。ゴミにも劣る汚物が」
シャザルきゅぅぅぅん!?
穏やかキャラはどこ行った!??カダルさんが乗り移った!??普段怒らない人がキレると超絶恐ろしい!お姉さんは普段の君が大好きよ!悪霊退散!!(雪花は混乱している)
ガチギレシャザル君は元近衛騎士を容赦なく蹴った。
「シャザル、落ち着け!ヒメサマ、シャザルを落ち着かせて!」
「うぇ!?えーと…えーと……シャザル君がキレたら、カダルさんそっくり」
「……………………」
いや、似てないと思ってたけどキレた顔はマジ似てる。明らかに、シャザル君のテンションが下がりまくった。こうかはばつぐんだ!
「ヒメサマ、それはひどすぎねぇか?」
是非彼らの中でのカダルさんの立ち位置をお伺いしたい。
「ほんの、ジョークです」
とりあえず、シャザル君は私のフォローにより回復した。どS化したシャザル君がガチでカダルさんそっくりだと思ったのは内緒にしておくことにした。
「…わ、私は…」
大騒ぎしてたら、オバハンがようやく起きた。つうか、これだけ騒いでたのに今頃かよ。雷撃で痺れてたのかもしれないけどね。
「姫様、よくぞご無事で」
「………ええ」
状況を把握しようとしているのだろう。裸であることに気がつき、慌てて身体を隠そうとする。かけられていたマントで身体を覆った。
「姫様にこれを…」
自分のマントも渡してくれと懇願する元近衛騎士。ヘルマータが頷き渡そうとしたが、手を払われた。マントが汚れていたからだろうなー多分。
私に気がついたらしく、睨みつけてくる。しかし、私は雪斗とソラ君、ルル君がじゃれているのを見るので忙しい。
だって、くっそかわゆいんだもーん!!
カメラ、キャメラが欲しいぃぃ!!誰か持ってませんか!?後でスノウに高性能なカメラとビデオカメラ作ってもらおう!そうしよう。
「わん!」
「にゃー!」
「ぴゅ!」
転げるモフモフ…可愛すぎる…!いつまでも眺めていたいよ!
「…その小汚ない犬はお前の子供?」
「さっきまで全世界の人類に忌み嫌われるエッグイ姿だったオバハンに小汚ないとか言われたくないですわぁ」
「なっ!?」
「オバハンの心って醜いんですわねぇ。死んだらあんな化け物になるなんて…私だったら耐えられませんわ」
目線もよこさずに言ってやった。私の思考を映像化し、オバハンの勇姿を見せてやった。ケビンに何度も撥ね飛ばされる、醜い虫ケラ。それがオバハンなんだと言ってやった。
「嘘よ!デタラメよ!!」
「…そうなんですか?」
目撃者であるオッサン達に話しかけた。
「いや、事実だ。精霊達が浄化したら、あんたになった」
「嘘よ!私は美しいの!世界一優れた女性なのよ!」
泣き叫ぶ側妃に呆れてしまう。めんどくさ~。
「そうだ!姫様は世界一の女性なのだ!非礼を詫びよ!」
「…貴方との約束を破ったのに?」
「……は?」
「だって、私を殺したら貴方だけの妻になる約束をしてたのに自殺したんでしょ?」
「それ、は…き、貴様らが追い詰めたからだ!」
気がつきたくないらしいが、私は容赦なく現実を突きつけてやった。可愛いうちの子達を傷つけた罪は重い。
「もし仮に、私が同じ立場だったらすぐ貴方と逃げる。あるいは、貴方だけ逃がす」
「は?」
「本当に愛があるなら、大事な人が自分のせいで傷ついたり死んだら嫌だ。こんな下らない復讐させたりしない」
元近衛騎士が青ざめた。元側妃は…すげえな、演技力。儚げに見えるわ!
「わ、私…気が動転していて……」
「後先考えずに身重の私を殺せばお前のものになると元近衛騎士を唆したあげくに約束を破って自殺したと?気が動転してたらなんでも許されるの?」
「……………」
元近衛騎士は気がついてる。自分が愛されていないことも、いいように使われたことも。
「だって、私は嵌められたのよ!女に謀ができるわけないじゃない!!私は騙された被害者なのよ!」
「それは、地下牢でよーくお聞きします。温厚で優しい我らが団長も、限界みたいですし?」
副団長様の言葉でケビンを見た。うちのケビン、大人しいなと思っていたら…
仁王像みたいになっていた。
憤怒の形相とは正しくこのことだわ……こらあかん!
「雪斗!パパにじゃれなさい!」
「くぅん?わん!」
素直に仁王にじゃれつく雪斗。
「ケビン…助けに来てくれてありがとう」
抱きついてケビンにスリスリする。雪斗もまねっこしてスリスリした。
「ぐぬっ!?」
ケビンの表情が緩んだ!こうかはばつぐんだ!
「助かります。そのまま全力で鎮静させてください。あんなに憤怒の形相をした団長は、初めて見ました。暴れださなかったのがもはや奇跡です。団長、せっかくご子息が産まれたのです。面倒な残務処理はお任せを。姫様もさぞ怖い思いをされたでしょうし、頼みましたよ」
ケビンを?私を?どちらともとれる発言をして、さっさと元近衛騎士や元側妃を捕縛する副団長様は流石だった。
子供達のこともあるし、お言葉に甘えて帰宅することにした。