初対面は全裸だったよ
普通に仕事して帰宅したら、自宅のドアの向こう側は広大な夜の森でした。貴方なら、どうする?
・とりあえず頬をつねる。
・見回す。ドア、無くなってた。
・呆然とする。
・歩いてみる。
・助けを呼んでみる。
「全部じゃああああ!!」
全部やりましたが、何も起きません。いや、どうしよう。仕事帰りだから、荷物もろくな物がない。幸いカロリー○イト、チョコ、水(飲みかけ)はあるが…正直心もとない。
状況を整理しよう。芹沢雪花、25才、独身。どこにでもいる女性会社員。仕事して、帰ってきたら…森に居た。ダメだ、わけわからん。
あてもなく森をさ迷うこと一時間。スマホが時計がわりです。当然圏外。
「…………?」
頭のなかで、急激にアラームが鳴り響いた。囲まれている。何故か解った。
アラームに後押しされるように走る。靴がヒールではなくウォーキングパンプスでよかった。スニーカーには劣るが、問題なく走れる。スーツもパンツスーツでよかった。タイトスカートだと走りにくい。
走る、走る、走る。
アラームのせいでか頭が痛い。息が苦しい。こんなところで死にたくない。
急激に視界がひらけた。眼前は崖で登れそうもない高さだ。行きどまり…!?逃げられない。
小さな穴があるが、子供でない限り通れないだろう。躊躇したせいか止まり損ねて転倒し、穴の中に入りこんだ。
はい??
あなのなかに、はいりこんだ??
穴は明らかに子供でない限り通れないサイズでしたよね??
私を追っていたのは巨大な猿みたいな化け物だった。サイズ的に穴には入れないらしく、腕を突っ込んだりしていたがそのうち居なくなった。穴は入り口が狭いが中はそれなりに広く、アラームも消えていた。怖い…が助かったのだと本能的にわかった。
荷物から鏡を取り出す。私は幼くなっていた。うん、そんな気はしていたよ。だって、服ダボダボだし…手も小さい。ズボンも脱げて、ワイシャツだけを着ている。
服が…いや、ぱんつが欲しい。他人がいないとはいえ、ノーパンは厳しい。
救世主よりもぱんつが欲しい。ギブミーパンツ。あ、または女の救世主様とか来てくんないだろうか。この格好で男には会いたくない。
仕方ないので鞄から出したソーイングセットを使ってぱんつをかろうじて履き、ワイシャツも縫って不恰好ながらシャツワンピ風にした。靴はどうにもならないが、どうしたもんか。
とりあえずチョコをひとかけ食べて水を飲んで寝た。
辺りが明るいから、朝になったのかな?
「ひめぇぇぇ!!」
「!?」
「ひめぇぇぇ!!どちらにおられるのですかぁぁ!?」
誰かが…多分男性が必死に叫んでいるようだ。助けを求めるべきだろうか。
「姫様、異界の姫様!返事をしてくださーい!」
いかいのひめさま??今度は可愛らしい声だ。女の子かな?
「いや、もう喰われたんじゃ…イテテ!じょーだんっすよ!」
今度は軽薄そうな男性の声だ。かなり近い。こっそり穴から様子を窺う。
「「…………………」」
派手なオレンジ頭のイケメンとバッチリ目があった。こっそり気づかれないように見るはずが…なんてこった。
「いたあああああ!?」
「やかましい!ライティス、貴様の声で姫様が怯えて隠れてしまわれたらどうする!!」
やべえ、筋肉ムキムキの強面に……犬耳と尻尾つきのおっさん、超怖い!!
私は隠れた。
「団長!痛いって言ったんじゃなくて、そこの穴に女の子が居たんすよ!!」
「何!?早く言え!!馬鹿野郎!!」
「いってぇぇ!!」
怖い…おっさん超怖い!迫力がありすぎる!私は穴から離れて死角に移動した。
「ちょっとぉ…団長のせいで姫様が怯えて隠れたよ。怖いって声が聞こえる。可哀想に…」
「ぬあ!?姫様、申し訳ありません!!」
「いや、ここで頭下げても姫様は隠れてんだし見えないっすよ?姫様~、アメあげるからでておいで~」
オレンジ頭よ、貴様私をなんだと思ってるんだ…しかし見た目子供だから仕方ないのかなぁ…
「こうなったら、こちらに敵意がないと示すしかないね!団長!全裸で謝罪して!」
「うむ、わかった」
「はあ!?ちょ、団長!?」
ぜんらでしゃざい??
一瞬意識が飛んだが遅れて理解した。別におっさんは悪くない。私が勝手にビビっただけじゃないか!
「待って!やめて!」
慌てて穴から出てきた私。しかし間に合わなかった。おっさんは全裸で私に土下座した。脱ぐの早すぎるよ、おっさん!!
「姫様、申し訳ありません!!」
「ふ、服を着ろぉぉぉ!!」
明るい森に、私の叫びがこだました。すまない、おっさん…むしろ謝罪したいのは私である。
しょっぱなからやらかして、すいませんでした!!