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キモオタの僕と七人の妹~許嫁はドSで無慈悲な科学のお姫様~  作者: 万卜人
第十五章 リターン・オブ・ザ・オタク
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 グリーン、レッド、イエロー、オレンジ、ヘリオトロープ、ピンクの配色のスーツを身に着けた〝妹〟たちの雄姿に、殺到する隊員たちは思わず蹈鞴を踏んだ。

 先頭に立つ赤田は、躊躇を見せる部下の態度に怒号した。

「何を恐れている! 奴ら、逃げ出すつもりだぞ! やっちまえ!」

 赤田の叱咤に、ようやく隊員たちは戦意を取り戻したようだった。各々警棒を振り上げ、足を速めて突き進んだ。

 朱美はアイリスに叫んだ。

「アイリス! お前はオタクたちを桟橋に連れて行くんだ!」

「合点承知!」

 アイリスの返事に、僕は思わず美登里を振り返って叫んだ。

「あんな返事、どこで覚えたんだ?」

 美登里は「さあね」と短く答え、突進してくる隊員たちの方へ顔を向けた。

「行くよ!」

 美登里は短く叫ぶと、素早く隊員たちに向かい合い、長い脚を飛ばして走り出した。身長百七十五センチ、長身の美登里が全力で走り出すと、大変な迫力があった。

 いや、迫力があるのは、美登里の胸が激しく揺れる姿かもしれない。こんな時にも関わらず、僕は美登里の走る姿にボケっと見とれてしまった。美登里は両腕を大きく広げ、隊員たちの真ん中に跳び込んだ。美登里の大きく広げた両腕に、隊員たちはバタバタと将棋倒しに倒れてしまった。

 桃華はまるでピンクの旋風のように、手足を一杯に伸ばし、目まぐるしく宙返りを繰り返した。桃華の回転に、隊員たちは驚いて逃げ散った。桃華は腕より、足技を使って戦いに臨んでいるようだった。背が低い桃華が隊員たちの群れに飛び込むと、こっちからはほとんど見えなくなってしまうが、隊員たちが悲鳴を上げているので、存在が判った。

 美登里と桃華が、隊員たちの大半を引き受け、朱美は赤田に向かい合った。

 真紅の戦闘服を認めた赤田は、さっと素早い動きで身構え、真剣な表情になった。

「さっきの赤い奴だな。今度は前のようにはいかないぞ!」

 早口で叫ぶと、赤田は傍らに立つ隊員に命令した。

「特製プロティンを持ってこい!」

 隊員は赤田に駆け寄ると、ドリンクタイプのプロティン飲料を差し出した。赤田は受け取ると、ぐびっ、ぐびっと喉を鳴らしてプロティン飲料を飲み干した。

「うおおおおおっ! プロティンが旨いっ!」

 大声で吠え、飲み干した瓶を放り投げると、赤田の全身が目に見えるほど膨れ上がった。

 肩から、背中から、腕、太腿、あらゆる箇所の筋肉が盛り上がり、顔つきも凶暴な表情に変化した。

 ぶちっ! ぶちっ! と音を立てて赤田の白いタンクトップが千切れ、ズボンはパンパンに膨れ上がり、ビリっと音を立てて縦に裂けてしまった。

 ほとんどその姿はモンスターだ。

 いや、超人ハルクか?

 朱美は僕に振り向き、喚いた。

「ありゃ、プロティン中毒だ! 流可男は引っ込んでいな!」

 もちろんだとも!

 あんなのに関わったら、こっちが危ない。「オタク危うきに近寄らず」という諺だってある(ないか?)。僕は大急ぎで回れ右をすると、桟橋に走り寄った。

 桟橋ではオタクたちと、来夢が待ち受けていた。僕が桟橋に到着すると、来夢が地団太を踏んで叫んでいた。

「何よお……。迎えの船なんか、どこにも見えないじゃない!」

「何だって?」

 僕は思わず聞き返し、海面をぐるりと確認してみた。

 なるほど、どこを見回してみても、船どころか、浮き輪一つ、浮かんではいない。

 どかん! どかん! という騒々しい音にそちらを見ると、二つの怪物が大立ち回りを演じているところだった。

 怪物の一方はプロティンで変身した赤田で、もう一つは、真っ赤な戦闘服を身に着けた真兼朱美だ。山のような筋肉に覆われた赤田と、小柄な朱美の対比は、まるでキングコングに立ち向かう少女、といった図だった。

「すげえ……格好いい……」

 ポツリと、オタクの一人が呟いた。

 言われてみれば、目の前の光景は、ほとんどアメコミの世界だ。ハリウッド映画の一場面を、目の前で見せられているようなもので、僕らオタクにとっては堪えられない光景だ。

 巨大な拳が朱美に突き出されるが、真っ赤な戦闘服を身に着けた朱美には通用しない。逆に朱美は赤田の突き出した拳を両手で受け止め、ぐいっ! とばかりに横に捻った。

「ぐわあおうっ!」

 腕を支点に、赤田はぐるっと旋回し、どっでえん! と地面に転がった。地面に激突した衝撃が物凄く、小石がばらばらと周囲に飛び散っている。

「流可男君! あれを!」

 仲間の一人が大声で叫び、僕の注意を惹いた。何だろうとその方向を見ると、今まで何も見えなかった海面に変化が生じていた。

 ごぼっ、ごぼっと音を立てて白い泡が上昇し、海面が凄まじい音で爆発したように逆立った。真っ白な波頭を突き破り、海中から巨大な何かが出現しつつあった。

 その正体を知って、僕らは茫然と見守っていた。

 現れたのは潜水艦だった。

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