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 僕の姿は、真兼高校男子制服姿になっていた。姿形が変化した理由は、ゲームのルールに則っているのだろう。どういうルールに則っているのか判らないが。

「藍里、ここは……」

 話し掛けようとして、僕は絶句した。

 藍里の姿がなかった。

 相変わらず、藍里は神出鬼没だ。

 もう躊躇ってはいられない。

 僕は扉のドアノブを握り、思い切り開いた。扉は手前に引く形で、僕は勢いよく内部に足を踏み込んだ。

 えっ?

 今度は見慣れた場所だった。

 目の前にずらりとパイプ椅子と、机が並んでいる。目の前の壁には黒板と教壇。

 真兼高校の、僕が通う教室だ。

 だから僕の姿形が、制服姿になったのか。

 振り向くと、扉は消えていた。

 僕はそろり、そろりと歩き出した。

 周囲は森閑として、音もない。

 教室から廊下へ出る。

 廊下を歩きながら、他の教室をひとつひとつ覗くが、どの教室にも人影はなかった。

 僕は廊下から、校庭へ続く出口を目指した。

 校庭に近づくと、わああ……という歓声が聞こえて来た。

 遂に僕は校庭に立っていた。

 校庭には真兼高校の男子生徒が集合していて、何やら大騒ぎを繰り広げている。

 ぶあん、ぶあん……という排気音がけたたましく聞こえ、校庭をバイクで乗り回しているツッパリたちが見えてきた。校庭の真ん中には、赤田が来夢を連れ去った時に使ったアメ車が停車している。アメ車には赤田と、来夢が座っていた。

 僕はアメ車目指し、駆け出していた。

 駆け寄る僕に、ツッパリたちが一斉に振り向いた。僕の姿を認め、ツッパリたちは薄笑いを浮かべ次々と悪罵を投げかけて来た。

「引っ込めキモオタ!」

「ロリコンは、小学生の女の子を追っかけていればいいんだっぺよう」

 走る僕の血液が沸騰し、怒りがカーッと湧き上がってきた。

 僕は遮二無二拳を振り回し、邪魔しようと立ち塞がるツッパリたちを当たるを幸い、薙ぎ払った。ぽんぽんと、面白いように僕は目についたツッパリたちを、次から次へと殴りつけていた。殴りつけるたびに、ツッパリたちは情けない悲鳴を上げ、頬を抑え逃げ去った。

 僕は無敵の闘士だった。

 遂に僕はアメ車に辿り着いた。

 来夢の肩をガッチリと掴んだ赤田は、ニヤニヤ笑いを浮かべて僕を待ち受けていた。

「その薄汚い手を離せ!」

 僕は叫んで、赤田の顔を殴りつけた。

 ごき! と鈍い音がして、僕の拳は赤田の頬げたを殴り飛ばしていた。赤田は僕の殴打に、きりきり舞いをして、地面にべったりとうつ伏せに倒れた。

「〝お兄様〟!」

 来夢は叫んで、僕に縋りついた。

 僕は来夢の身体を受け止め、地面に倒れ伏した赤田を睨んだ。

 赤田はゆっくりと立ち上がり、わざとらしく、ポンポンと体についた土埃を払った。

 立ち上がると、ニヤリと笑って頷き、口を開いて話し掛けた。

「おめでとう。ゲームは終了だ」

「えっ?」

 僕は虚を突かれて、聞き返した。

「流可男君、君は立派なツッパリだ」

 僕は訳が分からず、混乱していた。

 赤田は言葉を続けた。

「思い返して御覧。君の行動は、完全なツッパリと同じだ。まず俺たちを追い掛けるため、バイクに乗った。バイクの動かし方も知らないのにな」

 僕はパクパクと口を動かし、やっとのことで言葉を押し出した。

「で、でも、それはあんたがバイクに乗って追いかけろと言ったから……」

 赤田は会心の笑みを浮かべた。

「そうさ、それが第一の罠だ。次に町に着いて、突撃隊員に命令口調で話した。これもツッパリなら当たり前の行動だ。普通の君だったら、隊員に命令口調で話し掛けることなど、できもしないのにな」

 僕は底無しの穴に落ち込むような気分だった。

 なんと、僕は赤田により、次々とツッパリらしい行動を促されていたということか!

「次にこちらが用意した二つの障害を切り抜けた。どちらも本物のツッパリなら楽々突破する、障害だ。もっとも第二の障害を、君が切り抜けるとは思ってはいなかったが……。最後にこの校庭で襲いかかるツッパリたちを、次から次へ打ち負かした。どうだ、気分が良かったろう?」

 僕は腕に抱えた来夢を見詰めた。

 来夢はにっこりと笑いかけ、僕の肩に頭を乗せて来た。

「〝お兄様〟、格好良かったわ……」

「がははははは……」

 と赤田は大声で笑った。

「ほら、来夢君も完全に女のツッパリ、レディースの感性に染まったぞ! 流可男君のツッパリらしい行動に、嬉しさを隠しきれないじゃないか!」

 赤田はさっと僕に向け、敬礼をした。

「これでゲームはジ・エンドだ!」

 赤田の言葉が終わると、僕は目覚めていた。

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