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キモオタの僕と七人の妹~許嫁はドSで無慈悲な科学のお姫様~  作者: 万卜人
十二章 バック・トゥ・ザ・オタク
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 東京駅に降り立った朱美は、新山姉妹、アイリス、藍里の一行をともない、出迎えた桃華、美登里に合流した。

 朱美の心に、奇妙な感動が湧き上がってきた。それは幾つかバラバラの割れていた陶器の破片が、集まって一つになるような感覚だったが、朱美はその感情をぐっと押さえつけた。

 駅を利用する通行人たちは、朱美ら七人の姿を目にし、ほとんどがちらっ、ちらっと視線をやりながら通り過ごしていった。

 朱美を始めとして、全員、他人目{ひとめ}を惹く美少女なので、どうやら通過する人々は「どこのアイドルグループだろう?」と思っているようだった。

 七人はぞろぞろと改札を通り、ロータリーに向かうと、一台のマイクロ・バスが一行を待っていた。バスの横腹には「銀河番長ガンガガン」のキャラクターが貼られており、一目で集談館の所有するものであることが、明白になっていた。

 スライド・ドアが開くと、見るからに人の良さそうな素朴な顔つきの神山が、弾けるような笑顔で朱美らを出迎えた。

「お疲れ様です! どうぞ、どうぞ!」

 車内は広々として、すでに先客がいた。先客は四人で、萩野谷、良太、牧野に釜飯屋という顔ぶれだった。

 最年少の良太は、朱美らが車内に入ってくると、即座に顔が真っ赤に染まった。おそらく良太の生活では、一度に七人の美少女と出会うことなど皆無だろう。

 美登里とアイリスが連絡を取り合い、向こうでも「流可男救出作戦」が計画されていることを知り、朱美たちは高校が休日にはいるのを待って、上京したのだった。

 朱美は真兼町と東京で、同時に「流可男吸湿作戦」が進められていたことに、少しばかり疑問を感じていた。本当に偶然、同じ計画が進められたのか?

 もしかして藍里が関わっているのか?

 美登里は上京する朱美たち一行のため、神山を説得し、集談館所有のマイクロ・バスを用意させた。見返りに、ペンディングになっている「リーム」を主人公としたマンガの連載を始めるという条件を付けてであった。

 全員がシートに腰を下ろすと、運転手を務める神山は顔をほころばせ、口を開いた。

「いやー、皆さん、端末の写真で拝見させて頂きましたが、想像以上に美人ぞろいで驚きました」

 美登里が、神山に窘{たしな}める口調で声を掛けた。

「神山さん、そういうこと言わないの!」

「あはっ、失礼しました」

 神山は頭を掻いて、ペコリと一礼すると運転席に腰を落ち着け、ハンドルを握った。

「それでは集談館にご案内しますが、よろしいですね?」

 全員が無言で頷くと、神山はアクセルを踏み込み、マイクロ・バスを発車させた。

 朱美の隣が、真っ黒なサングラスを架けた、釜飯屋だった。釜飯屋は「〝萌え〟は我と共にあり……我は〝萌え〟と共にあり……」と小声で呟き続けていた。

 朱美は釜飯屋に近づき、尋ねかけた。

「それ、何の呪文だ?」

 釜飯屋はニヤッと笑って、くいっと朱美の方に顔をねじ向けた。

「何、ちょっとした癖ってやつだ。それより、君が真兼朱美君だな?」

「あ、ああ……」

 朱美はちょっとばかり、釜飯屋の得体のしれない態度に圧される気がした。朱美にしては珍しいことだった。

「それでそこにいる二人が、新山姉妹。何でも一卵性の双子と聞いている」

 釜飯屋は、握っている杖の先を順々に指し示して話を続けた。差された相手は、その度に頷いた。

「君がアイリス加藤君か。噂では相当の美少女らしいね? 隣に座っている崎本美登里さんも、似合いの美人だと聞いている」

 釜飯屋の杖の先が、佐々木藍里に向けてピタリと止まった。

「さて、この杖の先にいる相手が判らない。よろしければ、名乗って貰えないか?」

「佐々木藍里、と申します」

 藍里が静かに答えを返し、釜飯屋の顔に浮かんでいた笑顔が瞬時に引っ込んだ。

「あんたは何者だ?」

 藍里が口を開こうとすると、釜飯屋はさっと手を挙げ、発言を制した。

「いや! 答えなくともいい! あんたが何者でも、我々の味方ならそれでいい……」

 釜飯屋の顔は蒼白になっていた。額からどっと汗が噴き出し、顎先から滴っていた。

「あんた、どうしたんだ? 顔色が悪いぜ」

 朱美が質問すると、釜飯屋は弱々しい笑いを浮かべ、無言で首を振った。

 釜飯屋は目が不自由になったと聞いたが、視覚を失って別の感覚が鋭くなったらしい。その感覚を使って、何を感じたのだろうかと朱美は考えた。

「皆さん、到着しましたよ!」

 神山が陽気な声を上げ、車を集談館の地下駐車場へ向けた。

 全員地下駐車場から、編集部直行のエレベーターに乗り込み、神山は一同を会議室へ案内した。会議室の窓は車道側にあり、目の前に銀河番長ロボの雄姿が見て取れた。

 神山が一同のために飲み物などを用意しに会議室を出ると、美登里は朱美に話し掛けた。

「朱美さん、あれがガンガガンが乗り込むロボットでしょう? 集談館に来て、初めて見てどう感じる?」

 朱美は「がはははは!」と大笑いした。

「初めてじゃねえ! あのロボットは、オイラが設計して組み立てたんだ!」

 朱美以外の全員が「えーっ!」と一斉に声を上げた。

 アイリスが驚きのあまり、朱美に近寄り叫んだ。

「あんた、そんなことまでやってるんや?」

 朱美は胸を張って答えた。

「当たり前だろう。オイラ以外に、あのロボットに詳しい人間はいない。そこらの町工場で、安っぽいガラクタを作られちゃたまんねえからな!」

 毒気を抜かれた一同に、釜飯屋がさりげなく声を掛けた。

「さてと、肝心の明日辺流可男救出作戦だが、みんな何か考えはあるかな?」

 釜飯屋に向かい、全員否定の意味で、揃って首を左右に振った。釜飯屋はにたりと笑いを浮かべた。

「そうか。それじゃ、俺の提案を聞いてくれ。実は、モモちゃんと話した後、ちょっとばかり俺の知り合いを探して、どうやらガッツ島へ行ける方法が見つかったみたいなんだ」

 全員、驚愕の表情を浮かべた。

 釜飯屋は会心の笑みを浮かべた。

 ドアが開く音がして、両手にコンビニ袋を下げ、神山が入室してきた。コンビニ袋には清涼飲料や、アイスが一杯に詰められていた。

 全員の注目を浴び、神山はキョトンとした表情になって口を開いた。

「皆さん、どうされました?」

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