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「やあ、新入りだな」
声を掛けられ振り向くと、数人の若者が桟橋に立っていた。全員、よれよれのTシャツにジーンズ姿で、一目でオタクと判る雰囲気を発散させている。
オタクはオタクを見分け合う。どんな雑踏に居ても、百メートル先でもお互い「あそこにオタクがいる!」と感じ合うのが、僕らオタクだ。
「ど、どうも」
どう対応してよいか判らず、僕は当たり障りのない返答をしていた。
「案内しよう。この島の生活に慣れるため、色々教えることがある」
手振りで歩き出すことを促してきた。僕はゆっくりと歩き出し、最初に声を掛けてきた男とその仲間も歩き出した。
歩きながら、主に僕に向けて話し掛けてきたのは、年齢が三十代後半の、髪の毛が半分ほど禿げ上がり、やたら口が大きい小男だった。
顔の半分を占める口をニヤッと笑いの形にゆがめ、小男は話を続けた。
「ああ、そうだ。自己紹介がまだだった。俺は阿久津洋祐。ガッツ島に来て、三年目だ。ここじゃ三年も暮らせば、ほとんど長老扱いだから、何でも聞いてくれ」
僕は阿久津に向かって返事をした。
「僕は明日辺流可男です……。高校二年生です」
すると阿久津は唇をすぼめ、しきりと首を振った。
「へえ! 高校生とは珍しい。大概、高校生とか学生は、ここには連れてこられないのが普通だが。よほどの罪状があるんだろうな?」
僕は正直に答えた。
「仮想現実に、美少女のアニメとか、ゲームとか、フィギアのデータを隠していたのがバレまして……それで」
阿久津は驚きの表情を浮かべた。
「それだけでここに送られるなんて、普通あり得ないぞ。初犯なら厳重注意の上監視対象になるくらいが、せいぜいだ。判らんなあ! まてよ」
阿久津は何かに気づいたのか、足を止め、公用車の向かった先に視線をやった。
「さっきの公用車には誰が乗っていたんだ。出迎えの多さから、重要人物が乗っていたようだったが」
「赤田斗紀雄です。ほら、突撃隊の隊長をしていた……」
「何っ!」
阿久津の顔が憤怒に赤く染まった。
「あいつがここに来ているのか? どういうわけだ」
「何でもこのガッツ島の、新しい責任者になったそうです」
阿久津はパシッと、自分の禿げあがった頭を平手で叩いた。
「ガッツ島の新しい責任者が赴任するという噂は流れていたが、まさか赤田とは。それで、他に誰がいた?」
僕は目についた役者顔の男の特徴を、事細かに説明した。阿久津は何度も頷いた。
「そいつは免外礼博士だ。そうか、それで話が合う」
阿久津は陰気な目つきになった。
「あの免外礼という学者は、オタクと普通の市民を区別する方法を研究しているらしい。それでオタクの脳分析をして、ツッパリ、ヤンキーの精神状態に治癒する治療法を研究しているそうだ。俺たちを何が何でも、根性と気合いの入ったツッパリにするためにな」
僕は驚いた。
「そんなことできるんですか?」
阿久津は皮肉な笑いを浮かべ、再び歩き出した。
「少なくとも、奴らはそう考えている。そうか、その研究の成果を確かめるため、赤田が呼ばれたんだ」
僕たちは最初に目についた、三階建ての建物に行き着いた。
阿久津は建物を腕を上げて指し示した。
「ここが俺たち、ガッツ島囚人たちの住処だ。歓迎するぞ!」




